WirelessWire News Technology to implement the future

by Category

Open Sesame!(開けゴマ)で開く扉

Candy House - “Sesame”

2015.04.03

Updated by Kenji Nobukuni on April 3, 2015, 10:58 am JST

ドアの鍵を外側から開けるには鍵を鍵穴に挿し込んで回転させる必要があるが、内側から開ける場合にはサムターンと呼ばれるつまみを親指と人差し指でつまんで回転させるだけで開くようになっている場合が多い。つまり、鍵は中から開く方が格段に簡単なのだ。そこでMIT卒業生のDheera Venkatraman氏はドアの内側の鍵のサムターンに被せて、遠隔操作で回転させるセサミ(Sesame)という製品を思いついた。Candy Houseという会社(カリフォルニア州Palo Alto)で製品化している。

電池(500日もつらしい)内蔵のセサミをサムターンに装着して、コンセント型Wi-Fiアクセスポイントを介してワイヤレスで繋いでおけば、スマホのアプリから鍵を開閉することができるようになる。アクセスポイントがなくても、セサミ本体とスマホのBluetoothをペアリングしてあれば使える。

アプリから開閉コマンドに当たるものを送信するわけだから、何もタップとかクリックとか、ありきたりの入力方法を使う必要はない。音声認識を使うのなら、「開けゴマ(Open Sesame)」と語りかければドアの鍵を開くことができる。デバイスもスマートフォンである必要はなく、ウォッチ型のウェアラブルならば、腕時計に向かって「開けゴマ」と言うだけでもよい。秘密のノックを設定しておけば──自宅にノックして入るのも少し変な気もするが──ノックだけでも開錠できるらしい。

電池が切れても、セサミ自体のサムターン(つまみ)をひねれば開錠できるし、外から鍵を挿し込めば普通に開く。通信は暗号化されている。3Mの両面テープを使う取り付け工事は簡単で、数分でできるという。スマートフォン利用なので、鍵を複数人で持つことも可能だ。

セサミはKickstarterの資金調達に成功しており、5月に出荷予定。Wi-Fiアクセスポイントの入ったキットは199ドル、セサミ単体は149ドル。

日本では2014年創業のフォトシンス社が同じく後付け型のスマートフォンで操作するスマートロックAkerunを最近発表している。タップするだけで施錠することができるなどの工夫がなされていて、不動産内覧ですでに試験運用を開始している。

これまでコンセントをスマートフォンから遠隔操作したり、赤外線リモコン機能を遠隔操作したりする製品がいくつも登場していて、空調や照明器具、テレビなどを家の外からでも簡単に扱えるようになってきている。音声認識の利用も一般化してきているし、デバイスも多様化してきている。セキュリティーや安全性に十分配慮する必要があるが、利用者の遊び心も刺激する面白い製品が次々に提案されてくるに違いない。

例えば、体重計の計測結果を紙と鉛筆で記録するのは面倒だし、Excelに入力するのも面倒だ。そのソリューションとしては、Wi-Fiでつないで自動的に記録がクラウドに残るようにするということになるのだろうが、それでは体重計は高機能のものに買い替える必要がある。どうせ体重計には乗るのだから、スマホのカメラで体重を写真に撮って、文字認識で読み取るアプリがあれば、今の体重計がそのまま使える。さらに、スマートウォッチのアプリに音声で記録するアプリなら、カメラを向ける必要もなくなる。

鍵の機構そのものはすでに使っている物を活かして、外側から楽しく開錠、施錠が可能になるセサミには、商品開発のヒントが詰まっているのかもしれない。

【参照情報】
Candy Houseのウェブサイト
KickstarterのSesameのページ
Sesame smart lock opens your door with a secret knock
Unlocking your door might soon be as easy as 'open sesame'
フォトシンス社のウェブサイト

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、チャットボイス、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発に当たり、現在はモバイルヘルスケア関連サービスの事業化を準備中。 訳書:「Asterisk:テレフォニーの未来