GTC 2015(GPU国際技術カンファレンス)

ディープラーニングから火星ロケットまで広がるGPUの応用範囲〜GTC 2015(GPU国際技術カンファレンス)レポート・前編〜

GPU Technology Conference 2015

2015.04.22

Updated by Yuko Nonoshita on 4月 22, 2015, 14:54 pm JST

コンピュータの画像処理や描画に使われるGPU(Graphics Processing Unit/グラフィックスプロセッサ)は、開発技術の進化と性能の向上により、今やスパコンから自動車の自動運転技術、創薬まで、幅広いジャンルへと応用が拡がっているのをご存知だろうか。GPU開発のトップ企業のひとつであるNVIDIAが、開発者に向けて毎年開催する国際技術カンファレンス「GTC 2015」(GPU Technology Conference)では、GPUを取り巻く最先端技術をはじめ、様々な分野での活用事例や研究開発事例、製品やサービスなどが紹介された。

3月に米国カリフォルニアのサンノゼのマッケナリー・コンベンションセンターで開催されたカンファレンスでは、NVIDIAの創業者であるジェンスン・ファン(Jen-Hsun Huang)CEOや、Googleのディープラーニング開発を担当する上級フェローのジェフ・ディーン(Jeff Dean)氏、中国の検索サービス百度(バイドゥ)チーフサイエンティストを務めるアンドリュー・ヌグ(Andrew Ng)氏らによる基調講演のテーマを見てもわかるように、ディープラーニング(深層学習)が大きなテーマとなっていたのがよくわかる。ディープラーニングはここ数年で急速に注目を集めている研究開発分野であり、ニューラル・ネットワークを使ってコンピュータが自ら学んでいくプロセスを高速化するのに必要となる画像シミュレーションを、省電力で且つ計算力の高いGPUを使うことで急速に実用性が高まっている。

▼GTC2015は3月17日から4日間、のサンノゼのマッケナリー・コンベンションセンターで開催された。
GTC2015は3月17日から4日間、のサンノゼのマッケナリー・コンベンションセンターで開催された。

応用範囲はAIをはじめ、自動運転自動車技術や月面走行車まで拡がっており、そうした需要に応えるためにNVIDEAでは、新しいGPUアーキテクチャとなるPascalの研究開発に3年間で10億ドルの研究費用を費やしてきた。ファンCEOは基調講演で、来年の製品化を予定しているPascalをディープラーニングアプリケーションに採用した場合の処理速度が、現在のMaxwellプロセッサに比べて10倍になる予定だと発表している。

その基調講演にゲストとして登壇したテスラモータースのイーロン・マスク(Elon Musk)も、人工知能の研究に対しては慎重な姿勢をとりつつも、ディープラーニングの研究開発そのものには積極的に取り組んでおり「自動車の自律走行は技術的な面については数年で可能になるだろう」と発言している。また、マスク氏が創業したもう一つの会社であるSpeaceXでは、火星探索ロケットの開発を進めているが、「GPUs TO MARS」と題されたセッションでは、ごく簡単なシミュレーションにも膨大な計算力が必要であり、GPUの進化が問題解決に役立てられているとの話もあった。

▼今年のGTCの基調講演はディープラーニング(深層学習)に関する話題が多く、NVIDIAのジェンスン・ファンCEOは基調講演で、そうしたニーズに合わせて来年製品化される次世代アーキテクチャのPascalなどが紹介された。(写真提供:NVIDIA Japan)
今年のGTCの基調講演はディープラーニング(深層学習)に関する話題が多く、NVIDIAのジェンスン・ファンCEOは基調講演で、そうしたニーズに合わせて来年製品化される次世代アーキテクチャのPascalなどが紹介された。

今年のGTCでは500を越えるセッションが行なわれ、Big Data Analytics(ビッグデータ解析)やMachine Learning & Deep Learning(機械学習と深層学習)をはじめ、Automotive(自動運転技術)、Augmented & Virtual Reality(ARとVR)、Life Science(生命科学)など30近いカテゴリーがテーマとして扱われていた。内容も学術的な研究からエンターテインメント分野まで幅広く、参加者も大学や企業などの研究機関からゲーム開発者、VR制作者までと幅広い。

スピーカーにはPixarのトップクリエイターらも参加しており、「Animating Singing Volcanoes」というセミナーでは、ショートフィルム作品"Lava"の制作現場の裏側が紹介されていた。フルCGによるアニメーション作品を制作するPixarにとって、リアルタイムで仕上がりをチェックできるGPUの計算力は必要不可欠であり、数年前は1シーンの仕上がりを見るために、データを入力してから待ち時間が数時間かかったのが、今では開発システムの進化もあってほぼリアルタイムでの制作が可能になっているという。森林や火山の質感もよりリアルになり、影の付け方も実際の日照時間に合わせることができる。一方で、現実にはない、たとえば火山が歌う時の口の動かし方はどうすればいいかについてはクリエイターの創造性が求められるといい、そうした部分に時間がかけられるようになったことで作品全体のクオリティが高められているとの話もあった。

▼Pixarの制作の現場でもGPUは不可欠でありクオリティの向上にもつながっていることがショートフィルム作品を例に紹介された。
Pixarの制作の現場でもGPUは不可欠でありクオリティの向上にもつながっていることがショートフィルム作品を例に紹介された。

パソコンと並んで身近にGPUを使っているものといえばスマートフォンだろう。画面表示や動画の再生、ゲームプレイに欠かせないものになっているが、GTCではGPUを搭載したモバイルプラットフォームでどのようなことができるのかを紹介するセッションも行なわれていた。Googleが先進的なAndroid端末の開発のために立ち上げたProject Tangosにも参加している、GPU向けの画像処理システムアルゴリズムなどを研究開発しているイスラエルのSagivTech社による、ユーザーが撮影した画像を組合せて処理する技術に関する発表もその一つである。写真の位置情報を利用して、観光客が撮影した観光地の画像を再構築して様々な方向から見られるようにするという取り組みがあるが、GPUの画像処理パワーを使えば、たとえば、コンサート会場でファンがスマホで撮影した動画をクラウド上でリアルタイムに処理し、時間軸に合わせて3D化して再生させることも可能だとしている。現在、NVIDIAのモバイルプロセッサのTegra K1チップを使って研究を進めているが、モバイル用GPUの性能が上がっているので実用化もそう難しくはないということであった。

▼スマホを使って誰もが撮影できるだけでなく、GPUによって画像処理能力も大幅に高まっている。
スマホを使って誰もが撮影できるだけでなく、GPUによって画像処理能力も大幅に高まっている。

個人的に最も興味深かったセッションは、音声認識に関するもので、カーネギーメロン大学のJungsuk Kim教授の研究では、通常の再生スピードではCPUとGPUの音声認識処理速度に違いはないが、2倍速以降から大きく差が見られ、さらにGPUの場合は20倍速でも認識ができることが紹介された。英語の音声認識処理技術の解析パターンをGPUではショートカットして処理できるのがその理由で、研究ではCPUの22倍の処理速度が可能になる。さらに技術の応用先として、外部からの騒音が大きいドライブ中でも正確に音声認識できる例がビデオで紹介された。また、ネイティブ以外のアクセントでも正確に認識できるかという会場からの質問に対し、GPUは発話者のクセも高速に分析できるのでむしろ認識率は上がると回答していた。

▼CPUとGPUを使った音声認識処理の速度はCPUの22倍にできることが基調講演のビデオを例に紹介された。
CPUとGPUを使った音声認識処理の速度はCPUの22倍にできることが基調講演のビデオを例に紹介された。

GTCでは、現在、一部をのぞくセッションの資料がオンラインに無料で公開されており、基調講演の模様も見ることができる。NVIDIA ジャパンのサイトでも基調講演の解説やセッションのトピックスが日本語で紹介されているので、興味のある方はサイトにアクセスしてみるといいだろう。

後編では引き続き、GTCの展示会場で見たGPU関連製品についてご紹介する。

【参照情報】
GTC 2015
セッション資料
NVIDIAジャパン ブログ
Project Tango

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。

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