現代のハイテク人形は、君の言葉を忘れない

現代のハイテク人形は、君の言葉を忘れない

Never forget what you said

2015.05.28

Updated by Kenji Nobukuni on 5月 28, 2015, 10:07 am JST

昭和のNHKラジオドラマ「君の名は」は毎回、冒頭で「忘却とは忘れ去ることなり。忘れえずして忘却を誓う心の悲しさよ」というナレーションが入ったそうだが、人の記憶は不確かで儚い。しかし、コンピュータというマシンはデータを消去したり、故障などでデータが消えたりしてしまわない限り、いつまでも記録を保持してくれる。ネガからプリントした写真はセピア色に褪せるが、デジカメの残すデジタルのデータは何年経っても元のままだ。

今年初め、ハイテク人形「ハロー・バービー(Hello Barbie)」が発表されると子供のプライバシーなどを懸念する声が方々から上がった。サンフランシスコのスタートアップ、ToyTalkが開発したハロー・バービーは、1959年に生まれたアメリカの着せ替え人形・バービー(マテル社)の21世紀版。マイクロフォンとスピーカーとコンピュータを内蔵し、Wi-Fiで通信する。ベルトのバックルがボタンになっていて、それを押すとバービーが目覚めて子供と会話を始める。子供の声は録音され、暗号化されてToyTalk社のサーバーに送られるそうだ。音声認識により、子供の質問に答えるなど、会話を続けることができる。

59歳のバービーにとって、ハイテク化は避けられないのかもしれない。だが、子供が何を話しても録音記録が残って、利用規約の常套句である「当社のサービスの向上」の名の下に利用されることに違和感を覚えた人が大勢いたようだ。親の知らぬ間に、新しいお菓子や玩具など子供が喜びそうなものをハロー・バービーから子供にレコメンドされないとも限らないし、両親の会話を聞いた子供が人形に話してしまうことで、家庭内の秘密をToyTalk社のサーバーに送られてしまうかもしれない。子供に口止めするのは難しい。

最近では、Googleが音声認識、視覚認識が可能なテディベア(熊のぬいぐるみ)の特許を出願したことも、子供のプライバシーに対する脅威だという議論を呼んでいる。

Elemental Path社が開発している「CogniToys」は、IBMの人工知能、ワトソンの音声認識などを活用して子供と会話し教育までしてくれる恐竜の人形だ(ちなみに色はビッグブルーではなく派手な緑色だ)。子供の成長に適合して会話の内容を進化させてくれるようだ。Kickstarterで希望額の5倍の資金調達を行っており、2015年11月の出荷を予定している。

掃除機もロボットになり、犬型や人型(に近い)ロボットが多くの家庭に入ってくる日も近そうだ。その多くにはカメラとマイクロフォンが内蔵されていて、Wi-FiかBluetoothでクラウドにつながる。カードの暗証番号を口に出すとか、誰かの悪口とか秘密にしておきたい趣味などは、クラウドにつながったロボットの近くでは避けた方が安心かもしれない。相手がロボットとクラウドでは、こちらが要望しても、忘れてもらえるかどうかも心もとない。サービス提供事業者を信頼できるかどうかがますます重要になるということだろう。

【参照情報】
ToyTalkのウェブサイト
A Wi-Fi Barbie Doll With the Soul of Siri
Google’s ‘Chucky’ teddy bear to control the home
Google patents interactive smart teddy bears
CogniToysのKickstarterのページ

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信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、チャットボイス、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発に当たり、現在はモバイルヘルスケア関連サービスの事業化を準備中。 訳書:「Asterisk:テレフォニーの未来

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