プノンペン市内に位置するSotelcoの本社にはBeeline Cambodiaの販売店が併設されていた。

再編が続くカンボジアの携帯電話業界 – Beeline Cambodiaが撤退

Continue reorganization of Cambodian Mobile industry - Beeline Cambodia withdrew

2015.05.28

Updated by Kazuteru Tamura on 5月 28, 2015, 11:00 am JST

カンボジア王国(以下、カンボジア)は人口の割に移動体通信事業者が多い。そのためか、特に2013年は移動体通信事業者の統廃合などが相次ぎ、移動体通信事業者の顔ぶれが大きく変わる年となった。2014年に入ると2013年とは打って変わって移動体通信事業者の顔ぶれに大きな変化は見られず、しばらくは落ち着いた様相を見せていたものの、その落ち着きは長くは続かず、2015年3月にまた1社が撤退することになった。

再編が終わらないカンボジアの携帯電話業界

2013年初めの時点ではViettel(Cambodia)、MobiTel、Sotelco、Cambodia Advanced Communications、GT-TELL(Cambodia)Investment Company、Hello Axiata、Latelz、Mfoneの8社がカンボジアで移動体通信サービスを提供していた。

カンボジアは2013年時点の人口が約1500万人とされている。人口が約1500万人の国に8社の移動体通信事業者はさすがに多すぎたためか、この年は第1四半期から大きく動いた。なお、Mfoneを除いた各移動体通信事業者は社名とブランド名が異なっており、Viettel(Cambodia)はMetfone、MobiTelはCellcard、SotelcoはBeeline Cambodia、Cambodia Advanced Communicationsはqb、GT-TELL(Cambodia)Investment CompanyはExcell、Hello AxiataはHello、LatelzはSmart Mobileをブランド名として展開していた。カンボジアでは一般的に社名よりブランド名が浸透しており、以下からブランド名で記載する。

2013年1月にMfoneが破産を申請し、同時に移動体通信サービスを終了した。Mfoneはカンボジア政府とタイのThaicomが合弁で設立した企業である。設立当初の社名はCambodia Shinawatraとしていたが、後に社名をMfoneに変更し、移動体通信サービスのブランド名もMfoneとして展開していた。余談ではあるが、Thaicomはラオスにおいても移動体通信事業を手掛けており、ラオス政府と合弁でLao Telecommunicationsを設立し、携帯電話サービスのブランドをM Phoneとして展開している。カンボジアのMfoneとラオスのM Phoneはロゴが酷似しており、同じ企業の資本が入っていることを知れば納得できるだろう。Mfoneは移動体通信サービスを終了する際に、Mfoneの利用者はCellcardが吸収することでCellcardと合意しており、Mfoneの利用者は無料でCellcardのSIMカードに変更することを可能とし、またMfoneの移動体通信サービスの終了から60日間はCellcardのネットワークで国内ローミングを提供していた。

Mfoneが移動体通信事業から撤退した翌月の2013年2月にはHelloとSmart Mobileの統合が発表された。統合後の社名はSmart Axiataで、ブランド名をSmartとして展開している。なお、HelloとSmart Mobileの統合によって、Smartの利用者数はカンボジアで2位となっている。

2013年は第1四半期から一気に2社も減ったが、2013年10月31日にはXinwei(Cambodia) Telecomがブランド名をCooTelとして新規参入することを発表した。この時点でカンボジアの移動体通信事業者は6社から7社に増えた。2013年は移動体通信事業者の撤退、統合、参入が相次いだが、2014年にはそのような動きはなく、しばらくは落ち着いていたものの、2015年3月にBeeline Cambodiaが撤退した。

▼プノンペン国際空港にはExcellを除いたすべての移動体通信事業者がブースを構える。もちろん、Beeline Cambodiaのブースも設置されている。
プノンペン国際空港にはExcellを除いたすべての移動体通信事業者がブースを構える。もちろん、Beeline Cambodiaのブースも設置されている。

▼Beeline CambodiaのSIMカード。Mini SIM (2FF)サイズとなっている。
Beeline CambodiaのSIMカード。Mini SIM (2FF)サイズとなっている。

▼Beeline CambodiaのSIMカードは複数のデザインが存在していた。こちらはMini SIM (2FF)サイズとMicro SIM (3FF)サイズのデュアルカットである。
Beeline CambodiaのSIMカードは複数のデザインが存在していた。こちらはMini SIM (2FF)サイズとMicro SIM (3FF)サイズのデュアルカットである。

Beeline Cambodiaが撤退

Beeline CambodiaはVimpelComグループが保有するBeelineブランドを使用して移動体通信サービスを展開していた。過去にVimpelComグループがBeeline Cambodia を運営するSotelcoに出資していたため、Beelineブランドで展開していたのである。

VimpelComグループは世界の複数の国や地域においてBeelineブランドで移動体通信サービスを提供しており、事業拡大の一環でカンボジア市場を狙っていた。2008年7月にVimpelComグループがSotelcoの株式90%を取得して、SotelcoをVimpelComグループ傘下とした。これによりVimpelComグループはカンボジア市場への参入を果たし、2009年5月よりBeelineブランドを使用してカンボジアにおける移動体通信サービスを開始した。

ところが、移動体通信事業者の再編が相次いだ2013年にVimpelComグループは保有するSotelcoの全株式を手放すことで決定した。VimpelComグループは2013年4月に出資を引き揚げ、これによってVimpelComグループとSotelcoの資本関係は解消したものの、ブランド名は継続することを認めたため、Sotelcoは引き続きBeeline Cambodiaとして移動体通信サービスを提供していた。

カンボジアにおける移動体通信事業者の再編がしばらく落ち着いたところであったが、2015年3月19日付けでBeeline Cambodiaが移動体通信事業から撤退することを正式に発表した。2015年3月23日をもってBeeline Cambodiaは加入者との契約を終了し、移動体通信サービスも終了することが明らかにされた。撤退の発表に先立ち、Beeline CambodiaとMetfoneは2015年3月11日にBeeline Cambodiaのライセンスや資産をMetfoneに譲渡することで合意しており、Beeline Cambodiaの利用者は自動的にMetfoneを利用できるようにした。

2015年3月23日まではBeeline Cambodiaのトップアップカードを用いてトップアップを可能としており、トップアップカードが無効になる前に利用するよう告知していた。2015年3月24日からはMetfoneのネットワークに自動的に切り替わり、Metfoneの契約約款が適用されることになった。Beeline Cambodiaのボーナス残高は失われるものの、利用中のSIMカード、電話番号、トップアップ済みの残高は維持されるため、Beeline Cambodiaの利用者の不利益や手間をできるだけ抑えられるよう考慮された。なお、利用者が希望した場合はMetfoneのSIMカードへの変更も受け付けている。

こうしてBeeline Cambodiaは撤退したが、2013年のVimpelComグループによる出資の引き上げはその前兆だった。この頃からすでにBeeline Cambodiaの経営はARPUの低下などで不振に陥っており、VimpelComグループは高い収益性は期待できないと判断したため出資を引き揚げたのであろう。

不振の大きな理由としては移動体通信サービスの面で劣っていたことが挙げられる。積極的に選択したいと思えるような移動体通信事業者でなかったことは事実で、Beeline Cambodiaの移動体通信サービスはGSM方式のみで提供していた。カンボジアではExcellはCDMA2000方式のみ、CooTelはMcWiLL方式のみ、qbはW-CDMA方式のみを導入し、SmartはFDD-LTE/W-CDMA/GSM方式、その他の移動体通信事業者はW-CDMA/GSM方式を導入しており、2Gと呼ばれる通信方式のみを提供する移動体通信事業者はBeeline Cambodiaのみであった。カンボジアではスマートフォンが増加しており、高速なデータ通信の需要が高まる中で、通信方式で大きなビハインドを負うBeeline Cambodiaはより厳しい立場となった。経営が苦しくなる状況で新たな通信方式の導入は困難であったと考えられる。

筆者はBeeline Cambodiaが撤退する約3ヶ月前にカンボジアの首都・プノンペンを訪問し、Beeline CambodiaのSIMカードを購入していたため、Beeline Cambodiaの撤退には驚いた。しかし、Beeline Cambodiaのネットワークを利用したことがあるだけに、撤退は仕方ないようにも感じた。

▼プノンペン市内に位置するSotelcoの本社にはBeeline Cambodiaの販売店が併設されていた。
プノンペン市内に位置するSotelcoの本社にはBeeline Cambodiaの販売店が併設されていた。

▼Beeline Cambodiaの販売店のそばにある街灯柱はBeelineのカラーに塗装されていた。
Beeline Cambodiaの販売店のそばにある街灯柱はBeelineのカラーに塗装されていた。

▼Beeline Cambodiaの販売店の前はBeeline Cambodiaのパラソルや広告が目立っていた。
Beeline Cambodiaの販売店の前はBeeline Cambodiaのパラソルや広告が目立っていた。

今後も再編が続く可能性

2014年にSouth East Asia Telecom(Cambodia)がExcellブランドを展開するGT-TELL(Cambodia)Investment Companyを買収すると発表した。South East Asia Telecom(Cambodia)はシンガポールで設立された企業で、2015年中にCDMA2000方式のExcellブランドとは別にSEATELブランドでFDD-LTE方式のみによる移動体通信サービスを提供する計画である。移動体通信事業者の数には変わりないものの、ブランドがまた一つ増えることになる。

カンボジアにおける移動体通信事業者はBeeline Cambodiaの撤退によって2015年3月末の時点で6社となったが、それでも人口が約1500万人の国で6社はまだ多い。カンボジアの携帯電話市場は市場規模が特に大きなわけではなく、また今後の市場規模の大幅な拡大は期待できないため、シェアが低い移動体通信事業者を中心に、今後も撤退や統合などが起きる可能性は十分に考えられるだろう。

▼Beeline Cambodiaの販売店のドアには銃禁止の案内が貼られていた。カンボジアでは銃器を使った犯罪が多く、日本人が巻き込まれる事件もしばしばあるため、カンボジアに滞在する場合は注意しておきたいところである。
Beeline Cambodiaの販売店のドアには銃禁止の案内が貼られていた。カンボジアでは銃器を使った犯罪が多く、日本人が巻き込まれる事件もしばしばあるため、カンボジアに滞在する場合は注意しておきたいところである。

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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。

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