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高井研

「ビジョンを持つ力」を鍛える方法

A man with strong vision

2015.07.03

Updated by Ken Takai on July 3, 2015, 12:58 pm JST

イノベーションや新しい価値創造が生まれた瞬間を振り返った時、そこには多くの科学の発展がありました。科学の発展を支えるため自然の摂理の中に潜む「発見」に日夜努力するサイエンティスト、そして「発明」に注力するエンジニアの言うことに耳を傾けることは、これからの未来を創るヒントを得ることにつながります。

そこで、「これまでの当たり前」を変える研究と、その研究結果が世の中をどう変えていくのかについて、今回は海洋研究開発機構(JAMSTEC) 深海・地殻内生物圏研究分野 分野長である高井研氏にお話を伺ってきました。

前回までの高井氏へのインタビュー記事はこちら
>>生命の起源を明らかにするため。微生物学者、地球外生命体を探す
>>2600年間、誰も答えられなかった問いに答えを出すための戦略


──先生は今まで数多くのプロジェクトを立ち上げ実行してこられたと思いますが、プロジェクトを成功させるための予算獲得法やノウハウは何かありますか?

高井:ノウハウは無いです。ビジョンと人間的魅力が全てかもしれません。テクニックはいろいろ持っていますが、それは使う人によって変わってきますね。そういう意味では決して一般解はないと思います。

ビジョンというのは言い換えると「こうなりたい」という誰よりも強い想いです。国を作るとき「こんな国を作りたい」という強い思いがある人が王様になれる。政治体制をどうするか、システムをどうするかを考える前に、まずは誰よりも強い想いがなければ、何も動きません。

その上で国づくりを実現できる人には2つのタイプがあります。一つは王様がスーパーマンで全部自分でできる人、曹操みたいな人ですね。もう一つは何もできないけれど魅力があって、さまざまな人を巻き込める人。どちらでもいいと思います。でもたぶん、ビジョンと人間的魅力は必要だと思います。

プロジェクトも同じことで、「エンセラドスに行きたい」という強い想いを持つ人がいるから、行くための方法を考える人、行くためのお金を出す人がいて、うまくいくのだと思います。

──とはいっても、誰もが強い想い、ビジョンを持つことができるわけではないと思います。それはなぜでしょうか。

高井:おそらく自分の身の回りにある現実だけである程度満足してしまうからでしょう。現実だけでなく、「こんなものがあったらいいな」とか「こんなことができればいいな」という想像に根ざした強い欲求は、現実にないから欲しくなるわけですよね。でもそれは無から生まれるわけではありません。

最近の脳科学の知見では、我々の脳のうち意識して使われているのは1%もなくて、残りの99%は脳が無意識に学習したり記憶したりしているそうです。視界に入っているもののうち、意識できているものはほんの一部分ですが、残りも情報として脳には記録されている。デ・ジャブのように見たこと無いはずの光景を見たことがある気がするのは、意識の中では見たことがないけれども脳が記憶しているからです。

意識と無意識の格差がさまざまな現象を引き起こします。現実にないものを「欲しい」と強く思える人は、無意識を意識化できる、言い換えると脳の無意識領域に入れる人かもしれません。ビジョンを持つ力を鍛えるには、普段から無意識に意識を近づけていくこと、例えば本を読むとか、経験を積むとか、いろいろな場所に行くとか、意識して学べることはたいして多くなくても、意識して脳にいろいろなものを入れていくことがたぶん重要なんだと思います。


今回インタビューを受けていただいた高井氏には第7回SCHOLAR.professorに登壇いただき、「なぜ微生物学者が地球外生命体を探すのか」をテーマにお話いただきます。

▽第7回「SCHOLAR.professor」概要

日時 :2015年7月13日(月) 19:30~22:00(開場19:00)
会場 :devcafe@INFOCITY(渋谷区神宮前5-52-2 青山オーバルビル16F)
受講料:5,000円(税込)

詳細はこちら:http://scholar.tokyo/

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高井 研(たかい・けん)

国立研究開発法人 海洋研究開発機構 深海・地殻内生物圏研究分野 分野長
超好熱菌の微生物学、極限環境の微生物生態学、深海・地殻内生命圏における地球微生物学を経て、現在は地球における生命の起源・初期進化における地球微生物学および太陽系内地球外生命探査にむけた宇宙生物学を探求。
著書に『生命はなぜ生まれたのかー地球生物の起源の謎に迫るー』(幻冬舎)、『NHKサイエンスZERO 深海で生命の起源を探る』(NHK出版)、『微生物ハンター 深海を行く』(イーストプレス)など。
National Geographic日本版webにて連載『青春を深海に賭けて』:
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20110518/270393/

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