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ロシア政府、北方領土で光ファイバー敷設:外国資本や移住者の誘致を目指して

Wait, optical fiber in Northern territories!?

2015.08.11

Updated by Hitoshi Sato on 8月 11, 2015, 09:45 am JST

2015年8月10日の時事通信に「北方領土に光ファイバー網=移住促進へ新計画-ロシア」という記事があった。それによるとロシア政府は北方領土に光ファイバーを敷設する予定で、外国資本や移住者の誘致を目指して、通信環境を整備していくとのことである。他にも多数のメディアで報じられているが、短い記事なので以下に引用しておく。

「北方領土に光ファイバー網=移住促進へ新計画-ロシア」

【モスクワ時事】インタファクス通信は10日、ロシア政府が7月に閣議決定した「クリール諸島(北方領土と千島列島)社会・経済発展計画」の次期計画(2016~25年)の一環で、北方領土に光ファイバー通信網が敷設される見通しだと伝えた。

サハリン(樺太)から海底ケーブルで択捉、国後、色丹の各島までをつなぐ計画という。通信環境をロシア本土と同水準に向上させ、外国投資による経済発展や、ロシア人の人口増の下地を整える狙いがありそうだ。

ロシア政府は10日、次期計画に関する政令を発表した。予算規模は700億ルーブル(約1,400億円)で、ガルシカ極東発展相は「住民の生活を向上させるとともに、移住希望者を支援するのが主目的だ」と説明した。(2015/08/10 20:26)

択捉島と国後島、色丹島を総延長約940キロの海底光ケーブルで結び、2019年までに高速通信を可能にする計画だそうだ。

北方領土の遊休地をロシア国民に無償で分与する計画があるとも報じられている。それによると、ロシア政府が7月下旬に発表した法案では、極東連邦管区の人口を増やすため、国民なら誰でも管区内で1ヘクタールの国有地や公有地を無料で借りることができるとしている。今回の光ファイバー敷設も、北方領土へのロシア人移住に向けた布石である。

ただし、現時点の条文によると、分与されるのは国や自治体に属する極東の遊休地で、ロシアの国民と個人事業者が対象。希望者が選定できる区画は、近隣居住区が人口5万人以上であれば最低10キロ、人口30万人以上であれば20キロ離れた場所であることが条件となると報じられている。このような地域に光ファイバーを敷設するのは相当に大変なことであり、投資したコストの回収にもかなりの時間がかかるか、回収できない可能性も高い。

光ファイバーが敷設されたからといって外国資本が進出してきたり、ロシア人が移住してくるとは限らない。だが、ブロードバンドが整備されてないところには誰もやって来ないだろう。特に冬が寒い地域では、屋内にいることが多いからブロードバンドは必須である。

ロシアとしては、北方領土の社会基盤を整備して生活水準を引き上げることでロシア人住民の定着を進めて、実効支配を強化する狙いがあるという見方が強い。

ロシアの北方領土に対するこの動向は日本としても注視しておいた方がよいだろう。

▼色丹島の中心集落 斜古丹(出典:Wikimedia CommonsCC-BY-SA-3.0 )20150811-Shikotan

 

 

【参照情報】
北方領土に光ファイバー網=移住促進へ新計画-ロシア(時事ドットコム)
ロシア:北方領土遊休地を自国民に無償分与する法案 (毎日新聞
露、北方領土の土地無償分与へ 移住促進法案 実効支配強化…領土返還交渉への悪影響必至(産経ニュース)

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。

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