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この時代を生き残るために、オンライン肉会が営業開始

2020.04.21

Updated by Ryo Shimizu on April 21, 2020, 16:31 pm JST

ここんとこいいニュースというのをぜんぜん聞かない。
ぜんぜん聞かないなかで、すこしほっこりするのは、危機的状況の飲食店が、それでもなんとかこの難局を乗り越えようとテイクアウト販売に踏み切ったり、「さきごち」などのサービスやクラウドファンディングなどで当座の資金を集めたりする活動だ。こうした行動こそが人間として病原菌に負けずに立ち向かうという決意表明であり、急激に変化してしまった時代にキャッチアップしていく活動だろうと思う。

そんな中、筆者の個人的な友人でもある株式会社門崎の千葉社長もまた頭を抱えていた。
株式会社門崎は、「格之進」グループという焼き肉を中心としたレストランを経営する企業体で、はやばやと店を閉め、オンライン販売にかじを切った。

格之進グループは焼き肉の質そのものの評価も高いが、それ以上に店主であり社長でもある千葉祐士社長が自ら解説しながら肉を焼く名調子のファンも少なくない。

もちろん、都内と一関あわせて十数店舗を経営する格之進の全てのテーブルに千葉社長が顔を出せるわけではないが、ただ肉を食べるのではなく、肉の中でどのように日が通っていくか考えながら焼き、考えながら食べるというスタイルは格之進が切り開いた新しい焼き肉の楽しみ方と言えるだろう。

店舗の営業ができなくなったことで、格之進が定期的に開催していた「肉肉学会」などのイベントもできなくなってしまった。
もちろんこの騒動で大幅な客足・売上のダウンもあって、頭を抱えていたところに彼がヒントを得たのは最近にわかに流行している「ZOOM飲み会」である。

「ZOOM飲み会」とは、その名の通り遠隔会議ツールのZOOMを利用して、外出自粛で人とのふれあいがない中、自宅同士で友人同士の顔を見ながら会話をしながらお酒を飲もうという単純といえば単純な習慣である。

これが急速に普及してきていて、一晩に何箇所も河岸(ZOOMの部屋)を変えて飲みに出かける人があとを絶たない。
しかもこれまで会うことが難しかった、遠い外国に住んでいる友人や家族と気軽にはなしができるようになり、人々は物理的な距離を分断されたことによって、むしろ精神的な結びつきや交流を強く求めるようになってきている。

筆者も眠くなるまでZOOMの飲み会に参加して、そのまま寝てしまうのが常態化してしまった。
これが実に気持ちいいのだが、酒量が増えてしまうという欠点がある。

格之進が目をつけたのはZOOM飲み会のこのような性質で、単に肉を出すだけでなく、肉の焼き方、焼かせ方にこだわる格之進だからこそ可能なのが、格之進がゴールデンウィークにスタートする「格之進オンライン肉会」だ。

実は筆者はこの「格之進オンライン肉会」のβテストに参加した。

参加者は事前に格之進のWebページで申し込みを行い、料金を支払うと予約日の前日か当日午前中までに肉と調味料、そしてトングのセットが届く。
一人前から注文でき、家族でも楽しめる。

ホットプレートとPCまたはスマートフォンを準備し、定刻になったら指定されたZOOM部屋に行くと、格之進の熟練スタッフが出迎え、他の参加者と一緒になってスタッフの指示通りに肉を焼いていく。

焼き加減についての質問や疑問などにも丁寧に答えてくれるし、ZOOMを通じて見知らぬ人ともコミュニケーションをとることができる。
各回20名限定で、応募が多い場合は順次席が追加される。

売れ行きは好調な模様だ。

この騒動がいつ落ち着くのか、残念ながらハッキリと断言できる人はどこにもいないだろう。
仮に連休明けに緊急事態宣言が解除されたとしても、それでこの騒動が収束するということにはならない。

我々にできることは、いまある困難に対して果敢に立ち向かっていくことだけなのだ。
アフターコロナ時代の新しい飲食店のかたちとして、格之進オンライン肉会がどのように発展していくのか、今から楽しみだ。

そしてこれと同じようにどんな状況でもめげずに適応し、活路を見出していく人だけが騒動後に生き残っていくことになるだろう。
経済の大転換が起きようとしている。この状況のどこかに必ずチャンスはある。

そんな取り組みに踏み出した格之進をまずは応援したい。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。1990年代よりプログラマーとしてゲーム業界、モバイル業界などで数社の立ち上げに関わる。現在も現役のプログラマーとして日夜AI開発に情熱を捧げている。

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