5Gで2倍の通信容量を確保、スモールセル内で全二重通信を実現--富士通

2015.09.04

Updated by Naohisa Iwamoto on 9月 4, 2015, 19:17 pm JST

中国の富士通研究開発中心と、富士通研究所は2015年9月4日、5G向けの技術として1つのセル内で同一無線周波数帯を同時に利用することで通信容量を拡大する技術を開発したと発表した。技術の詳細は、9月6日から米国・ボストンで開催される国際会議「VTC2015-Fall(Vehicular Technology Conference 2015)」で発表する。

スマートフォンの普及やビデオのような大容量のコンテンツの送受信が加速度的に進み、無線の通信容量を増加するための技術開発が進められている。今回、富士通グループの両社は、通信容量を確保するために、1つのセルの中で、同じ周波数を送信と受信の両方に使う方式を開発した。一般的に、同一無線周波数帯の中では送信か受信かの一方だけを行う。FDD方式では送信と受信の周波数帯を変え、TDD方式では同じ周波数帯を利用するため時間により送信と受信を交互に切り替えることで、送受信の通信を実現している。これらは1つの周波数帯域の中では一方通行の通信をする半二重通信だが、新開発の方式では1つの周波数帯域で同時に送受信を実現する全二重通信を行う。これにより、従来方式に比べて、最大で2倍の通信容量を確保できるようになる。

しかし、送受信を同時に同じ周波数帯で行う全二重通信は、実現が難しい。受信する信号の電力は、送信電力に比べると圧倒的に少ない。このため、受信機には送信信号が漏れ込み電力として入り込み、干渉を起こすことで通信が阻害されやすい。今回、両社が開発した新方式では、1つのマクロセルの中にスモールセルを配置し、送受信をそれぞれに分離して担当させる「基地局送受信分離構成」を採用した。端末への送信はマクロセルの基地局で行い、端末からの受信はスモールセルの基地局が行う。この構成により、漏れ込み電力を低減し、効率的に通信容量を増加させられる。

▼ 基地局送受信分離型全2重通信方式(報道発表資料より)
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新方式では、基地局送受信分離構成を実現するために、複数の新開発の技術を利用している。1つが、単一のスモールセル内で、同一周波数を試用しても相互に干渉が少ない端末を選択する技術。2つ目が、同一周波数を使用している端末への干渉が少なくなる送信電力値の制御。もう1つが、少ない干渉で送受信できる端末の組み合わせと、送受信電力の最適な組み合わせを計算するスケジューリングの信号処理量の低減である。

両社による開発技術を実装したシステムレベルのシミュレーションでは、従来の半二重通信に比べて、1つのスモールセルで最大2倍の通信容量を確保できることを確認した。今後、富士通研究開発中心では、干渉による通信容量劣化を一層改善できる技術開発を進める。富士通研究所は、新方式の5G標準化にへの提案に向けた検討と研究開発を進め、2023年ころの実用化を目指すとしている。

【報道発表資料】
5G向けに、同一セル内で従来の2倍の通信容量を実現する無線通信技術を開発

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。

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