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知らないことは武器になる

2021.05.22

Updated by Ryo Shimizu on May 22, 2021, 07:30 am JST

「私は最近これに興味があるのに、それについて何も知らない」

という気持ちになった時、それはチャンスである。

僕は昔から繰り返しおもってる事があって、それは「通」になってしまったらおしまいだということだ。

「通(つう)」というのは、要はある趣味の分野(道)があるとして、それに精通している人のこと。
他人から「通だね」と言われるのはいいが、自分が自分を通だと思ってしまったら、その道はそこで途絶える。

「道」はあちこちに繋がっていて、誰も辿り着いたことのない道がある。
それがあると考えている人は、どれだけ詳しくなっても、「自分はまだまだ半可通だ」と内声する事ができる。
半可通、すなわち、半端な知ったかぶりをしてるに過ぎない、ということだ。

僕は半可通であることだけが人を行動させる原動力だと思う。

新しいことに興味を持ち、それについて勉強し始めると、刺激的な発見が次々とある。新しい街に行って散歩するのと同じだ。

そうすると、人に話したくなる。自分で見つけたものを自分の言葉で整理したくなる。それが半可通だ。
もちろん、先人からすれば、そこはまさに「昔自分も通った道」であり、そこにありがちな勘違いや誤解があっても微笑ましく見る事ができる。

半可通は江戸時代には「あいつは半可通(知ったかぶりだ)」とバカにされたそうだが、このセリフを言ってる人間こそがそもそも自分を通だと考えてる、「終わった半可通」なのである。

誰かが半可通だと指摘し、暗に自分はそうではないと主張することは、すなわち道の終わりに達していることになってしまう。

しかしどのような道にも終わりはなく、むしろ道の終わりと思われるようなところにこそまだ人の足が踏み入れていない、未知の可能性を切り開く大地がある、その場所を未踏の地と言う。

本を書く作家、原稿料をもらうプロのライター、そのほか、映画でも漫画でも絵画でもメディアアートでもプログラミングでもなんでもいいんだけど、何かを創り出す仕事をする人、つまりクリエイターというのは、全ての人々が、自覚しているいないに関わらず、その道の半可通なのである。

半可通だから、新しい知識を貪欲に吸収できる。吸収した知識は吐き出したくなる。そこに自分なりの解釈が加わる。

たとえば僕はプログラミングという道を自分の中では一番長く歩んできたから、最近興味を持った小径自転車という道は全くの未熟者である。

だからこそ、これまで全く興味を持っていなかった分野の奥に広がる奥深さ、楽しさ、知識と言ったものがドドッと押し寄せてくるのが楽しい。まだ人に語れるほど知識を持っていないけど、これが一定量を超えたら、語るようになるかもしれない。

そして、小径自転車の楽しみとプログラミングをどうしてもどこかで結びつけてしまうだろう。でもそれでいいのだ。自分が過去に興味を持ったもの、今興味があるものを結びつけて、自分だけの道が出来上がっていく。それは結局、プログラミングにも戻ってくるのだ。

そうやって、人間のとしての幅を広げていくことで、他の道もさらに深いところに行ける。そこに未踏の大地がある。

だから何にでも興味を持ってみればいいし、飽きるまで熱中すればいい。
僕は恐ろしく幸運なことに、幼児の頃から、「熱中したら放置される」という環境で育った。

両親が共働きで、一人の時間が多かったから、お使いに行けとか言われることもなく、ひたすら自分の興味のあることだけに熱中できた。

まだそんなに乗ってはいないのだが、小径自転車の軽快さを感じながら、一つ思ったことは、「これが自動運転だったら実に味気ないな」ということだった。

でもこれは、都市の移動手段として自転車がかなり有効に使えるという、東京のような場所特有のもので、サンフランシスコみたいなところでは坂も多いし多分全く違う感覚だろう。

自転車を買ったのは利便性もさることながら、もともと運動不足を解消するのが目的の半分だったので、坂道とかに敢えて挑戦して登り切った時の快感というのは、電動自転車じゃ味わえない。

僕にとって、自転車の世界は知らないことだらけだ。

パーツではシマノが有名だという話は聞いてはいたが、アルテグラとかデュラエースとかいう単語は今回初めて知った。そのブランド名が変速機単体を指すのか、駆動システム全体を指すのかすら僕は今わかってない。わかってないことを認識するのが楽しいのである。プチプチビニールみたいなものだ。

最近知ったのは、変速が車でいうところのドライブバイワイヤー、つまり電子的に変速する機械があるということだ。これがあると自転車でありながらオートマ走行ができるらしい。

電子部品という、自分の専門分野に近いものがこういうときに出てくるというのはワクワクする。
こういうのも、お金をかけていっぺんに揃えてしまったら味気ない。

まずはノーマルの自転車から初めて、十分乗りこなしながら、スマートウォッチを買って心拍数を測ってみたり、ケイデンスセンサーを買ってペダルの回転数を記録したりする楽しみに繋げていく。

今僕はアルテグラのDi2という、自転車の自動変速が可能でかつ、変速パーツとしてもノーマルより高性能なものが欲しくてしょうがないのだが、そもそもここ最近、仕事の必要性以外で「欲しくてしょうがない」なんていう気持ちになる事が滅多になくて、それ自体がやっぱり楽しいのである。

この「いつか欲しいなー」という気持ちを抱いているというのは僕にとっては逆に新鮮で、なにしろ最近は、仕事に必要なものはなんでも躊躇なく買っていたから、新しいマシンを買ってもあまり感動がなかった。半可通でありながら、新しい道を探すことに半ば疲れていた時に、それまで全く興味のなかった分野、自転車に興味を持ったことで、再び半可通としての道を歩み始めることができるようになった。

カメラしかり、美食しかり、プログラミング言語しかり、新しいことに興味を持ち続けることだけが半可通の中でもさらに道を先に行くための秘訣なのではないかと思う。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。1990年代よりプログラマーとしてゲーム業界、モバイル業界などで数社の立ち上げに関わる。現在も現役のプログラマーとして日夜AI開発に情熱を捧げている。

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