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ハード&ソフトからコンテンツまでドローンマーケットを総合的に推進するDJIの動き

2015.09.29

Updated by Yuko Nonoshita on September 29, 2015, 08:27 am JST

ドローン業界を牽引する大手メーカーの一つとして日本でも人気が高いDJIは、ドイツのベルリンで開催された国際家電見本市「IFA 2015」で記者発表会を行い、新製品のラインナップや自動運転システムなどを発表した。

IFAのDJIブースを会場にして行われた記者会見では、DJIの企業概要なども紹介された。創設者のFRANK WANG氏は、香港科学技術大学在学中に行っていたドローンの研究を元に卒業後すぐにDJIを立ち上げ、現在もCEOとCTOを兼任している。2006年の創設時には20名だった社員は10年目を前に4000人に増え、世界へと拠点を拡大。ヨーロッパではドイツのフランクフルトを含む4拠点を展開している。

▼IFAのDJIブースで行われた記者発表会では企業情報なども紹介された。
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初級者からプロまで幅広い製品ラインナップを展開している同社では、さらに幅広いユーザーニーズに応えるため、安定した飛行撮影機能で人気の高いPHANTOM 3シリーズにおいて、初心者向けのSTANDARDとプロ向けのPROFESSIONALに加え、中間層を狙ったADOVANCEDを新たに投入した。装着するビデオカメラも2.7Kという、撮影した動画の編集に4Kほど負担がかからない、中級者のニーズに合せた規格をチョイスできるようにしており、飛行時間は最長25分となっている。

▼今回展示された製品ラインナップ。
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▼人気のPHANTOM 3を用途やユーザーレベルに合わせた3グレードで展開。ビデオもあえて2.7Kという中級者向けにしている。
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合わせて5つのインテリジェントフライトモードを新しく追加し、撮影のバリエーションを増やせるようにしている。他製品でもよく見かけるターゲットを固定して自動追尾撮影ができるFollow Me、GPSで高低差を含む飛行ルートを設定できるWay Point、特定のターゲットを様々なアングルから撮影するPoint of Interest interestという従来の撮影モードに加え、うっかり間違って操作しないよう飛ばせる角度を制限するCourse Lockや自動で帰還するHome Lockを追加し、操作中の安全性に配慮している。新しい飛行モードは新製品のPHANTOM 3やINSPIRE 1に搭載されており、今後は既存のDJI製品のファームウェアをアップグレードすることで使えるようにするとしている。

▼空中撮影のバリエーションを拡げ、安全性にも配慮した5つの自動運転モードを開発。
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▼Point of Interest interestモードは海上に浮かぶ船を周回しながら撮影するという、映画やプロモーションでよく見るアングルを手軽に実現できる。
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さらに、複雑な運転モードを実現したい場合は、公開されているSDKを使って動きのパターンを作っておくこともできる。動きだけでなく、どのポイントで撮影するかといったアクションを実行させることができ、クラウドで共有されるライブラリーから必要なツールをダウンロードしてカスタマイズすることもできる。iOSとAndroidに対応していて、DJIのサイトからデベロッパー登録するだけで使える。

▼ドローンを操作するためのSDK開発プラットフォームが提供されている。

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もう一つの動きとして、空中から撮影した芸術的な作品を集めるプラットフォームを展開するSKYPIXELとコラボレーションして、ドローンから撮影したコンテンツを紹介する「Perspectivs」というサイトを公開。世界各都市でギャラリーイベントを展開し、IFAに合わせてベルリンでもギャラリーを開催している。サイトでは作品の投稿も受け付けており、今後はコンテクストの開催も行いとするなど、アートの分野からドローンの位置づけを高めようとしているのが伝わってくる。

▼ドローンで撮影したアート作品を紹介するギャラリー「Perspecitves」をIFAの開催に合わせて実施している。
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▼クリエイターの高い要望に応える映画撮影用のSpreading Wings S900や映画制作用に手動で使えるRONIN-Mなどのハイスペックタイプの開発も強めている。
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他にも操縦方法が学べるイベントを各地で開催するなど、ドローンユーザーの拡大にも力を入れている。日本では何かとネガティブなイメージが強いドローンだが、世界での市場のニーズは確実に高まっており、メーカー側が支援を強めている欧州では、今後様々な先進的な活用事例が登場しそうだ。

▼DJIでは購入前のユーザーも対象にした操縦体験イベントを実施している。
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【参照情報】
IFA
DJI

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。