WirelessWire News Technology to implement the future

by Category

カスペルスキーがIFAで生体認証ICチップの埋め込みデモを披露

2015.10.02

Updated by Yuko Nonoshita on October 2, 2015, 07:19 am JST

あなたの会社がセキュリティのために生体情報の登録を義務づけたとしたら、指紋登録と手に認証用のICチップを埋め込むのとどちらを選びますか?

そう近くない将来、そんな選択が迫られてもおかしくないほど、生体情報を使ったセキュリティシステムは一般にも浸透しつつある。指紋認証は最も身近な技術で、銀行やiPhoneをはじめとするスマートフォンでも採用されている。業界でも開発に力を入れていて、世界的なセキュリティ企業として知られるカスペルスキーのブログによると、UAF(Universal Authentication Framework)プロトコルを使うことで、生体認証によるパスワードを使わない認証方式の実現を目指すFIDO Allianceのような業界団体も設立されており、指紋以外に顔、音声などの生体認証を組み合わせることでセキュリティを強化できるとしている。

そして、生体認証は便利だがやはり指紋や顔情報を登録するのは不安だという声に対して、チップを埋め込むという選択肢もすでに登場している。カスペルスキーでは今年3月から社員が実際にICチップを身体に埋め込んで、どのような用途で使えるかといった実験を始めている。ベルリンで開催されたIFAのプレス向けイベントでは、同社で最初にICチップを埋め込み、#BionicManDiary のハッシュタグで近況を発信しているEvgeny Chereshnev氏を含む、4人のゲストによるトークセッションも行なわれ、ICチップを埋め込むのはピアスやタトゥーと同じぐらい手軽になり、使い方についてはプラスティックカードを使うのとそれほど変わりないものになるだろうといったコメントも出ていた。

▼IFAでカスペルスキー(Kaspersky Lab)は「CHIPPING HUMAN」をテーマにしたトークセッションをプレス向けに行った。セキュリティ分野で活躍する4人をゲストに、生体認証技術に関する専門的な解説や今後の可能性などが話題にされていた。
WWN_kaspersky01

▼一番右に座っているカスペルスキーのEvgeny Chereshnev氏は実際にICチップを手に埋め込んで様々な実証実験を行っている。
WWN_kaspersky02

さらに、ICチップの埋め込みがどれほど簡単にできるかを証明するため、会場では新たに別のスタッフにICチップを埋め込むデモが記者たちに披露された。埋め込みといっても方法は簡単で、専用の注射器を使って米粒ほどのICチップ(正式なサイズは12x2mm)を手の甲に注入するだけだ。デモでは押し寄せた記者たちがビデオを撮影するための準備に時間がかかっただけで、注入するのはインフルエンザの予防注射ぐらいあっという間だった。

▼記者たちの前でICチップを埋め込むデモが披露された。
WWN_kaspersky03
WWN_kaspersky04
WWN_kaspersky05

ちなみに注入されたチップのスペックは容量が880バイトで、4桁の暗証番号で保護されており、NFCリーダーの有効範囲は5cm以下となっている。もちろん、この仕様はまだ初期段階のもので、将来的にはもっと性能が上がりもっとセキュアになるのは間違いない。トークセッションでも課題になるのはバッテリーと処理能力だとしていて、その点がクリアされれば、運転免許やパスポートでも埋め込み型のICチップを採用される可能性が高くなるかもしれないという。

以前BBCで、社員が埋め込みチップを使えるようにした金融系企業を紹介するニュースを見た時は、取材記者が本当に使えるかどうかを自らカメラの前でチップを埋め込んだものの、認証がうまくいかず開くはずのドアが反応しなかったというオチだった。IFAでも何人かの記者がICチップを埋め込みをしていたようだが、試せる場所はまだそれほど多くはない。せっかく埋め込んだのに使えなかったとならないよう、ICチップの精度を高めると同時に、傷みの無い埋め込み方法の開発が、今後の普及の鍵になりそうだ。

【関連情報】
Kaspersky lab

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。

RELATED TAG