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5Gへの架け橋として国内キャリアを強力にサポート--ノキアネットワークス新社長

2015.10.09

Updated by Naohisa Iwamoto on October 9, 2015, 20:38 pm JST

ノキアソリューションズ&ネットワークス(以下、ノキアネットワークス)は2015年10月9日、プライベートイベント「Experience Day 2015」を開催し、報道関係社向けに記者説明会を実施した。2020年の商用化を目指す「5G」などに対するグローバルでの取り組みや、日本市場への注力について説明した。

7月に日本法人の社長に就任したジェイ・ウォン氏は、「フィンランドのノキアは、1865年に紙の製造を始めてから今年で150周年を迎える。ゴムやタイヤ、化学製品、電子製品と製品は変化し、過去20年は携帯電話の分野で力を発揮してきた。これまでノキアは人をつなげることを推進してきたが、今後はさらに広げて世界をつなげることに貢献したい」とビジョンを語った。また、アルカテル・ルーセントの買収により、ノキアのポートフォリオと合わせて、通信のエンドツーエンドのソリューションを提供できる会社になることをアピールした。

▼ノキアソリューションズ&ネットワークス 代表取締役社長のジェイ・ウォン氏20151009_nokia001

日本でのビジネスについては、「NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3事業者の主要なサプライヤーになり、国内の無線アクセス機器の市場でトップのシェアを得ている。また川崎にR&Dセンターを設立し、300人のメンバーで研究開発に取り組んでいる。日本のマーケットに一層真剣に取り組むことの現れだ」(ウォン氏)という。さらにウォン氏は、東京のホテルから撮影したレインボーブリッジの写真を紹介しながら、「レインボーブリッジを歩いて渡ろうと思ったが、怖さも感じた。同様に、4Gから5Gへの橋も渡らないといけないが困難もあるだろう。そこでノキアは能力を総動員して、日本のモバイルブロードバンドが4Gから5Gに行くための架け橋になる」と5Gへ向かう国内キャリアを力強くサポートする意向であることをアピールした。

次に登壇したフィンランド ノキアの無線パフォーマンス特別研究員 ハリー・ホルマ氏は、2つの側面で技術動向を紹介した。1つはLTE-Advancedの進化、もう1つは5Gの新しい技術である。

LTE-Advancedの進化について、ホルマ氏はデータレートが150Mbps、遅延が10ミリ秒のLTE(Release 8)を基準にして「LTE-Advanced evolutionでは、データレート、遅延、カバレッジ、容量でそれぞれ10倍の改善が求められる。これを実現することで、LTEが現在よりも多くのユースケースを提供できるようになる」と、多くのユースケースに対してLTEがまだの進化して対応する可能性が高いことを説明する。

▼5Gでは、フェーズ1から標準化が進む公算が高いことを説明するハリー・ホルマ氏20151009_nokia002

一方で、5Gの議論も標準化団体の3GPPで始まったことを紹介しながら、「これまでモバイルネットワークは3.5GHz以下の周波数帯で導入してきた。5Gでは無線の設計上、より高い周波数を使いたい。しかし、2020年に商用化を始めることを考えると、高い周波数のうちでも6GHz未満を対象として5Gのフェーズ1とする考えで、コンセンサスが得られてきている」(ホルマ氏)と語る。その後のフェーズ2以降で、30GHzまでのセンチメートル波、さらに周波数の高いミリ波のうち90GHzまでといった周波数帯の利用を具体化することになるとの見方を紹介。ホルマ氏「2020年に日本で5Gの商用化をスタートできるように、2018年までに5Gの標準化の主要な部分を完成させる」と、ノキア技術や知見で5G標準化をリードしたい考えを示した。

▼TDDとFDDの3キャリアのキャリアアグリゲーションのデモ。壁面左がTD-LTEの20MHz幅×2、壁面右がFD-LTEの20MHz幅に対応する無線装置20151009_nokia003

Experience Day 2015では、技術や製品のデモも実施した。注目のデモは、TDDとFDDのLTEによるキャリアアグリゲーションや、無線基地局のクラウド化だった。ノキアネットワークス シニア・テクノロジー・エキスパートの野地真樹氏は「TDDの20MHz幅を2つと、FDDの20MHz幅を使って、合計60MHz幅のキャリアアグリゲーションにより、370Mbpsの信号送信ができることをデモしている。ノキアの基地局製品と、端末側にはクアルコムの商用チップセットを使っているところがポイント。日本でも3.5GHzのTDDによるLTE-Advancedサービスが始まると、この技術が活用できる」と説明する。

▼クラウドRANのデモでは、ノキアの自社開発のサーバー「AirFrame」(写真中央)を国内で初披露した20151009_nokia004

もう1つが基地局のクラウド化を進める「クラウドRAN」のデモ。今回のデモでは、ノキアが自社で開発したサーバー「AirFrame」を国内で初めて披露した。「通信には高速処理を要求される暗号化処理などがあり、モバイルに特有な処理をアクセラレーターで実行させられる」(野地氏)とメリットを説明する。通信に特化したサーバーまでも自社で提供することで、モバイルネットワークのクラウド化を推進していくことをアピールした。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。