マカオでようやく始まった4G LTE - 2015年中に4社が提供へ
Finally 4G LTE launched in Macau - 4 operators start 4G LTE by the end of 2015
2015.11.30
Updated by Kazuteru Tamura on November 30, 2015, 22:45 pm JST
Finally 4G LTE launched in Macau - 4 operators start 4G LTE by the end of 2015
2015.11.30
Updated by Kazuteru Tamura on November 30, 2015, 22:45 pm JST
中華人民共和国(以下、中国)のマカオ特別行政区(以下、マカオ)は1999年にポルトガルから中国に返還されたことで特別行政区として成立し、マカオ返還から50年間はマカオの特別行政区政府に高度な自治権を認める一国二制度を維持することが決まっている。このように高度な自治権を持つマカオでは移動体通信も中国から完全に独立しており、まるでひとつの独立国のように中国とは異なる移動体通信事業者が展開している。マカオには公衆陸上移動体ネットワーク番号の国番号や国際電話番号も中国とは別に与えられており、それぞれ455と853が割り当てられている。なお、中国は公衆陸上移動体ネットワークの国番号が460、国際電話番号が86である。
そんなマカオでは中国から2年近く遅れてようやくLTEサービスが始まった。早速、マカオに渡航してLTEサービスに関する現状や動向を調査したので紹介する。
まず初めにマカオの移動体通信事業者を簡潔に紹介する。マカオでは澳門電訊、和記電話(澳門)、數碼通流動通訊(澳門)、中國電信(澳門)の4社が移動体通信サービスを提供している。
各社ともポルトガル語表記や英語表記の社名も有しており、澳門電訊はポルトガル語表記がCompanhia de Telecomunicacoes de Macauで、英語表記がCTM - Mcau Telecom Company、和記電話(澳門)はポルトガル語表記および英語表記がHutchison - Telefone (Macau)、數碼通流動通訊(澳門)はポルトガル語表記がSmarTone - Comunicacoes Moveisで、英語表記がSmarTone Mobile Communications (Macau)、中國電信(澳門)はポルトガル語表記および中国語表記がChina Telecom (Macau) となる。いずれも一般的に略称やブランド名で認知されており、以下から澳門電訊はCTM、和記電話(澳門)は3 Macau、數碼通流動通訊(澳門)はSmarTone Macau、中國電信(澳門)はそのままで中國電信(澳門)と表記する。
CTMには香港の中信國際電訊集團(CITIC Telecom International Holdings)とマカオの澳門郵政(Correios de Macau)が出資している。特別行政区政府は2013年6月にCable and Wireless CommunicationsとPortugal Telecomが保有するCTMの全株式を中信國際電訊集團が取得することを承認し、これにより出資比率は中信國際電訊集團が99%、澳門郵政が1%となった。3 Macauは香港の和記電訊香港控股(Hutchison Telecommunications Hong Kong Holdings)の子会社で、和記電訊香港控股の子会社が世界各地で展開する3ブランドをマカオでも繰り広げている。SmarTone Macauは香港の數碼通電訊(SmarTone Mobile Communications)の子会社、中國電信(澳門)は中国の中国電信(China Telecom)の子会社で、マカオでもそれぞれ香港や中国と同じブランドで展開している。
▼タイパ島に位置するCTMの本社。
▼CTMに出資する澳門郵政の総局。建築物の美しさなどから、観光で訪問する人々も多い。
▼3 Macauの販売店。
▼SmarTone Macauの販売店。
▼中國電信(澳門)の旗艦店と位置付けられる販売店。
マカオでは行政機関のひとつで電気通信事業などを管轄する電信管理局が2014年にLTEサービスのライセンスに関する入札手続きを実施した。LTEサービスのライセンスを発給するにあたり、ライセンスに関する複数の条件などが設定された。ライセンスの発給数は4枠で有効期間を8年と定め、ライセンスを取得すれば2015年中にLTEサービスを開始し、提供エリアは2015年中にマカオの面積の半分以上を、2016年中にマカオ全土をカバーすることを条件とした。
入札手続きは締切日を2014年11月18日として実施し、2015年11月19日には応札した企業が公示された。マカオの既存の移動体通信事業者4社に加えて新規参入を狙う宇航通訊(U Hong Comunicacoes)と中国移動香港(China Mobile Hong Kong)が応札したことが判明し、4枠のライセンスを6社が争うことになった。なお、締切日の時点で3 Macauと中國電信澳門は入札に必要な書類に不備があり、電信管理局は入札手続きを受理する条件として書類の再提出を求め、その後に書類を再提出したことで受け付けている。電信管理局は2015年3月9日にライセンスを発給する企業を公示し、既存の移動体通信事業者4社にライセンスを発給した。これにより、新規参入を狙った2社はライセンスの取得に失敗したことになる。電信管理局は新規参入を狙う企業には提供エリアなどの面で懸念事項が存在すると判断し、無難に既存の移動体通信事業者4社にライセンスを発給したものと思われる。
▼CTMの概念店と位置付けられる販売店。CTMの本社に併設されている
▼CTMの概念店の内部。
2015年10月20日にCTMが先陣を切ってマカオで最初にLTEサービスを開始した。CTMは4G+としてLTEサービスを展開し、LTEサービスの開始当初よりプリペイドとポストペイドの両方でLTEサービスを利用可能としている。CTMに続いて2015年11月11日にはSmarTone Macauが4GとしてLTEサービスを開始した。ただ、SmarTone MacauはLTEサービスの開始当初はポストペイドのみLTEサービスを利用可能で、近い将来にプリペイドでも利用可能とする予定である。2015年11月25日には中國電信(澳門)がLTEサービスを開始する計画である。
LTEサービスのライセンスを発給する際には2015年中にLTEサービスを開始することが条件のひとつとして設定されたため、3 Macauも2015年中にLTEサービスを開始することが確実であり、すべての移動体通信事業者が2015年中にLTEサービスを導入することになる。
▼CTMが展開する4G+のロゴタイプ。
▼CTMの販売店で展示されているSamsung Galaxy Note5。CTMのLTEネットワークに接続している。
▼3 Macauの販売店で展示されているApple iPhone 6s。LTEサービスの開始前であるが、3 MacauのLTEネットワークに接続している。
▼SmarTone Macauの販売店で展示されているSamsung Galaxy S6。SmarTone MacauのLTEネットワークに接続している。
▼中國電信(澳門)の販売店で展示されているXiaomi Redmi 2。LTEサービスの開始前であるが、中國電信(澳門)のLTEネットワークに接続している。
マカオではFDD-LTE方式とTD-LTE方式の両方を導入している。電信管理局は2.6GHz帯、2.3GHz帯、1.8GHz帯をLTE用の周波数として割り当てており、2.6GHz帯はFDD-LTE方式のBand 7に、2.3GHz帯はTD-LTE方式のBand 40に、1.8GHz帯はFDD-LTE方式のBand 3に該当する。
これらの周波数のうち、2015年11月時点で電信管理局はCTMのみに2.6GHz帯の15MHz幅×2および2.3GHz帯の10MHz幅×1を、CTMを含めたすべての移動体通信事業者に1.8GHz帯の15MHz幅×2をLTEサービスで使用することを承認した。電信管理局によるとCTMのみが2.3GHz帯の割り当て希望したため、CTMのみに2.3GHz帯を割り当てて同周波数の使用を承認したとのことである。また、2.6GHz帯はCTMのみならず、すべての移動体通信事業者に対して割り当てるが、こちらもCTMのみが先に使用を申請したためCTMのみ承認した状態にある。
LTEサービスを開始前の移動体通信事業者も店頭ではLTEサービスを試せる状態としており、2015年11月の時点ですべての移動体通信事業者がLTEネットワークの運用自体は開始している。それぞれ運用している周波数と帯域幅を確認したところ、この時点でCTMは2.6GHz帯を使用しておらず、2.3GHz帯の10MHz幅×1と1.8GHz帯の15MHz幅×2を使用、3 Macauと中國電信(澳門)は1.8GHz帯の15MHz幅×2を使用、SmarTone Macauは承認済みの15MHz幅×2のうち10MHz幅×2のみ使用している。
CTMは2.3GHz帯より1.8GHzを中心に展開しており、その他の移動体通信事業者は2.6GHz帯の使用は申請せずに、まずは1.8GHz帯のみ展開しているが、その理由はいくつかある。まず一つは、LTEサービスのライセンスを発給する際に提供エリアの条件が設定されたことにより、各社とも2.6GHz帯や2.3GHz帯より提供エリアの拡大に有利な1.8GHz帯を中心に展開している。また、2.6GHz帯は割り当て作業が1.8GHzより遅れたことも2.6GHz帯の使用が後回しとなった要因のひとつである。CTM以外は2.3GHz帯の割り当てを希望しないことからも分かるが、各移動体通信事業者は電信管理局がLTE用に確保したすべての周波数を使用しなくても容量は足りると判断している模様で、このことも新たな周波数の使用を急がずに1.8GHz帯から展開する理由のひとつと考えられる。
2015年中には全社のLTEサービスが出揃い、遠くないうちに各社とも2.6GHz帯の使用を開始する見通しで、しばらくは大きな動きが続くため、タイミングを見計らってマカオを再訪問したいところである。参考までに2015年11月の時点でマカオの移動体通信事業者が運用している通信方式および周波数の一覧を表1に記す。
▼表1
B3=FDD-LTE方式の1.8GHz帯(Band 3)
B7=FDD-LTE方式の2.6GHz帯(Band 7)
B40=TD-LTE方式の2.3GHz帯(Band 40)
I=W-CDMA方式の2.1GHz帯(Band I)
VIII=W-CDMA方式の900MHz帯(Band VIII)
BC0=CDMA2000方式の800MHz帯(Band Class 0)
900=GSM方式の900MHz帯
1800=GSM方式の1.8GHz帯
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登録はこちら滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。