WirelessWire News Technology to implement the future

by Category

ドコモの3.5GHz帯TDD-LTE商用化は2016年6月 ネットワーク説明会を開催

2016.03.02

Updated by Asako Itagaki on March 2, 2016, 15:32 pm JST

NTTドコモはネットワーク説明会を開催し、キャリアアグリゲーション(CA)強化によるさらなる高速化と3.5GHz帯を含むネットワーク高速化の取り組みと、災害時のネットワーク信頼性強化の取り組みについて説明した。

800MHz帯のフルLTE化と3.5GHzTDD-LTEで300Mbps超えサービスを6月に開始

2015年3月に開始したPREMIUM 4Gは、2016年3月末時点でに全国900都市以上に展開しており、うち640都市で受信時最大300Mbpsのサービスを提供している。さらなる高速化の取り組みとして、800MHz帯のフルLTE化により、2.1GHz+1.7GHz+800MHz帯の3CCAで受信時最大375Mbpsに増速する。

2016年秋の提供開始を予定した新たな周波数となる3.5GHz帯についても「想定以上に順調に準備が進んでいるため」(株式会社NTTドコモ取締役常務執行役員 大松澤清博氏)2016年6月の提供を予定する。既存のエリアの上にアドオンセルとして展開し、3.5GHz帯の20MHz幅×2波のTDD-LTE方式と既存周波数帯のFDD-LTE方式の3CCAで提供する。

TDD-LTEでは上りと下りを1つの周波数で利用する方式であるが、上りをFDD-LTEで側で提供し、TDD-LTEの帯域は下りを最大化するようにチューニングする。通信速度は1.7GHz帯と組み合わせた時で上り最大50Mbps、下り最大370Mbpsとなる。現在サービス開始に向けて3.5GHzの試験を進めており、千葉県のフィールド試験実施基地局では受信時340Mbpsを超えるデータ通信に成功している。

なお、これらのサービスは、通信トラフィックの逼迫した都心部エリアから順次導入を計画している。対応端末の種類については、「なるべく多くの種類の端末で利用いただけるよう準備中」とのことなので、夏モデルとして発表されるスマートフォンやルーター製品の一部が対応すると思われる。

大ゾーン基地局LTE化対応、中ゾーン基地局展開で信頼性をアップ

また、東日本大震災以降進めてきたネットワーク信頼性強化については、人口密集地の通信確保を目的に設置された「大ゾーン基地局」106局のLTE対応を2017年3月末までに進める。これにより周波数利用効率が向上し、通信容量が約3倍に拡大する。

さらに、地震・津波だけではなく火山災害や水害などさまざまな災害を想定し、電源喪失後24時間運用可能で、伝送路が冗長化されており、アンテナ角度を遠隔操作で変更することで緊急時にはより広いエリアがカバーできる「中ゾーン基地局」の整備を2015年度から開始している。全国1,200局以上を2018年3月末までに展開予定だ。

コアネットワークについては、複数ベンダーのEPCソフトウェアを動作可能なネットワーク仮想化技術(関連記事)により、通信サービスの信頼性を向上する。オートスケーリングにより通信混雑時でもつながりやすく、またオートスケーリングで設備故障時の影響を最小化する。2016年3月に商用環境に一部導入後、2016年度前半に検証をすすめ、「なるべく早く一気に展開していきたい」(大松澤氏)とする。

燃料確保のために石油連盟と覚書締結

電源対策としては、通信ビルの商用電源供給が停止した際に非常用発電機等自家発電用燃料を継続的に確保するために、NTTグループ各社が石油連盟との間で災害時の重要施設に係る情報共有に関する覚書を締結した。

東日本大震災の時には国を通じた緊急石油供給の要請にもとづき石油連盟による石油供給が試みられたが、施設側の貯蔵タンク注入口とタンクローリー側ホース先端の金具の型式が合致しないなどの問題で円滑な石油供給ができなかったことの反省を踏まえたものだ。

また、「津波監視システム」の運用を2016年3月4日から開始する。海への見通しが良い位置にある16箇所の基地局に監視カメラを設置する。監視するカメラは、太陽光パネルを用いた独自電源及びマイクロ波装置を備えているため、災害発生時においても監視を継続して行える。津波発生時の沖合の海面の様子を確認する他、遠隔でカメラを操作し、基地局周辺の通信設備の被災状況を確認する。

▼津波監視装置(報道発表資料より)
装置写真

その他に、JESEA(株式会社地震科学探査機構)による「リアルタイム地震予測」の確立と精度向上に向けた検証への協力として、全国16箇所の携帯電話基地局に地殻の変化を捉える装置を設置し、データをモバイル通信によりリアルタイムに提供することが発表された。

【報道発表資料】
石油連盟との災害時の重要施設に係る情報共有に関する覚書締結について
携帯電話基地局を利用した新たな災害対策の取り組み

【関連情報】
PREMIUM 4G(NTTドコモ)

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。