スマートIoT推進フォーラム合同部会開催、社会実証は自律型モビリティとスマートシティから
2016.03.07
Updated by Asako Itagaki on March 7, 2016, 02:00 am JST
2016.03.07
Updated by Asako Itagaki on March 7, 2016, 02:00 am JST
3月4日、IoT推進コンソーシアム技術開発WG(スマートIoT推進フォーラム)の第1回部会が開催された。スマートIoT推進フォーラムには技術戦略検討部会と研究開発・社会実証プロジェクト部会が設置されており、この日の会合は両部会の合同会合となる。
森川博之技術戦略検討部会長(東京大学先端科学技術研究センター教授)からは、同部会の会員アンケート結果の概要と、それに基づく分科会の設置について報告された。設置される分科会名と活動内容のイメージは以下の通り。
国内外の動向把握(技術・利活用、標準化、グローバル連携等)、開発者のシーズと利用者のニーズのマッチング交流会開催と適用分野抽出、適用分野の技術参照モデル検討、技術・標準化戦略と普及展開戦略の検討、グローバル連携の観点からのフォーラム活用方策など。
テストベッドに関する新技術・必要な機能等に関する意見交換やテストベッド利用者による成果報告等の実施、テストベッドに対する利用者ニーズの汲み取りと利用者相互の意見交換の場としての活用。公開(全会員参加可)の形で開催する。
関心のあるIoT人材ベンダ、事業者、ユーザに参加を求め、IoTの利活用等に必要な専門知識の要件について検討を行いスキルセットを策定する。また策定したスキルセットに準拠した人材育成の取り組みを促進する。
森川氏は「IoTは市場が非常に大きいと言われているが、お金が流れるエコシステムを作らなくてはうまくいかない。IoT推進のためにはとにかくその世界に飛び込まなくてはいけないが、同時に集まる場と考える場を技術検討部会の中に作っていければと思っている。国の担当の方にも、技術開発に対してだけでなく、それ以外にも予算を回していただき、企業、業種の壁を超えて徹底的に頭を柔らかくして考える場を作っていきたい」と技術部会に対する思いを述べた。
下條真司研究開発・社会実証プロジェクト部会長(大阪大学サイバーメディアセンター教授)からは、同部会の会員アンケート結果の概要と、それに基づく2つのプロジェクト設置について報告された。
自動走行技術、自動制御技術等の「自律型モビリティシステム」の開発・実証を推進する。具体的には、電気自動車や電動車椅子等のネットワーク制御における高信頼化、緊急時自動停止や再起動時などの安全対策、衛星測位等も組み合わせた移動の高制度化を実現するための技術開発および実証実験を推進する。また、自動走行に必要不可欠な高度地図データベースの高効率なリアルタイム更新技術や各車への高効率な情報配信やリアルタイム更新等を行う技術について、通信事業者やベンダー等と連携して研究開発および実証実験を推進する。
スマートシティに関して社会実証を推進すべき分野、実証モデル及び活用すべき技術を検討する。また、社会実証を推進するための課題の整理を対応検討を行う。
なお、上記プロジェクトについては、「プロジェクトへの具体的な貢献が可能な会員により推進する」としている。当面は2つをプロジェクトとして取り上げるが、会員が主体となって形成したプロジェクトを部会長が推進することにより、連携を推進する。
下條氏は「社会制度とのコンフリクトや間尺に合わないところを明らかにすること、IoTサービスは人間との関わりが密接でプライバシーにかかわる情報を扱うことから、社会受容性の問題を研究開発しながら解決すること、この2点が使命と考える」と語った。、
両部会の分科会・プロジェクトへの参加については、後日スマートIoT推進フォーラムのウェブサイトで案内する。
技術戦略検討部会で「テストベッド分科会」が設置されることが発表されたが、同日の会合ではNICTテストベッド研究開発推進センター長でもある下條氏より、NICTが運営するテストベッドの紹介が行われた。
▼NICTが提供するテストベッドの全体像。センサーと分散サーバー基盤を提供する「JOSE」、1000台のPCサーバーを自由に組み合わせて検証環境を作れる「StarBED3」、5Gやオール光などの次世代通信技術のテストベッド「JGN-X」から構成される。
テストベッドを利用するメリットとして下條氏は「自前で構築が難しい大規模検証環境が利用できる」「実環境の模倣により実運用に近い状態で評価可能」「閉じられた実験環境なので失敗しても良い」「大量のパラメータ変更や繰り返しの検証が容易」であることを挙げた。これにより、開発期間短縮、製品化前の品質向上、実環境で発生するバグの再現と解析が可能となり、開発コストの大幅削減が可能になる。
下條氏はテストベッドの位置づけとして「さまざまなトライアルを行っていただくと同時に、多様な企業や研究機関が集まることでさまざまなやり取りが発生し、オープンイノベーションが起こることを期待したい」と期待を述べた。
テストベッドを活用した技術検証事例として、パナソニックによるテレビ会議システム開発、セキュリンクスによるMDM製品開発、東北大学などによる災害時のモビリティ支援実験の事例が紹介された。
▼東北大学等による事例紹介
また、本テストベッド活用を想定したIoTプロジェクト支援として、平成27年度補正予算にて実施される総務省の「IoTサービス創出支援事業」のアナウンスが行われた。スマートシティ、スマートホーム、農業、教育、医療等の「生活に身近なIoTサービスの重点分野」から5件程度を予定する。提案主体としては地方公共団体、民間法人、大学、NPO法人等からなるコンソーシアムとするが、データ活用主体であるユーザー企業を含むことを必須とする予定。3月中に公募を開始し、6月上旬に採択結果を公表、実証事業の実施機関は2016年7月から2018年2月となる。
▼当日は、IoT実証の取り組みとして、NTTドコモなどによるプレゼンテーションが行われた。講演はほぼ満席で、併設の展示にも多くの人が訪れ説明を受けていた。
【関連情報】
・IoT推進コンソーシアム
・スマートIoT推進フォーラム
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登録はこちらWirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。