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天気予報に合わせた蓄電池制御で停電時の稼働時間を2倍以上に、ドコモが成功

2016.03.29

Updated by Asako Itagaki on March 29, 2016, 06:10 am JST

NTTドコモは、太陽電池と蓄電池システムによって動作電力の一部をまかなう「グリーン基地局」が利用する電力を天気予報の情報に基づき自動制御する「天気予報連動型リチウムイオン電池制御」技術の実証実験に成功した。

グリーン基地局は、昼間のソーラー発電の余剰電力をリチウムイオン電池の蓄電池に貯め、夜間は蓄電池の電力を優先して使うように制御することで、環境負荷の低い電力の割合を高めると同時に、災害時に停電した場合でもソーラー発電による電力で自立運用が可能な基地局。

グリーン基地局の蓄電池(リチウムイオン電池)は、停電時の通信確保用となる「バックアップ容量」と、ソーラー発電による通常時の充放電用として使用する「サイクル容量」の2つの構成で使用している。従来は、停電時に24時間程度のバックアップ容量を確保するため、バックアップ容量の比率を80%に固定して運用していた。

今回確立した技術は、バックアップ容量とサイクル容量の比率を固定することなく、天気予報の情報を基に、「日照制御モード」と「自立・復活運転モード」の2つを切り替え、リチウムイオン電池へのバックアップ容量の比率を柔軟に変更して自動運用する。

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「日照制御モード」は、午後6時時点でバックアップ容量の比率を翌日のソーラー発電量の推計に応じて、80%の固定ではなく、40%~80%の間で柔軟に自動運用することで、サイクル容量の充放電の損失を最小化する。また、「自立・復活運転モード」は、台風や大雨などの気象に関する災害が予見される際、バックアップ容量の比率を100%に引き上げ、停電時の商用電力の喪失において、ソーラー発電と蓄電池による長時間の自立運転とソーラー発電のみの復活運転を実現する。

本技術を利用した実証実験では、これまでのグリーン基地局と比較して、「日照制御モード」では商用電力を10%削減。さらに「自立・復活運転モード」では停電時に2倍以上の約63時間の運転が可能となることを確認した。

ドコモは東日本大震災後グリーン基地局の開発に取り組み、2014年3月までにフィールド試験局を10局設置して、検証を実施していた。さらに2014年4月から商用局の設置を開始し、2015年3月末までに商用局11局を設置。2016年3月には新たに商用局33局の設置を完了し、全都道府県での運用を順次開始する。今後は2020年までに総発電電力を現在の10倍の2000kWにすることを目標に、グリーン基地局の導入を推進する。

【報道発表資料】
天気予報に基づくグリーン基地局の電力制御に成功

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。