イスラエル側から見たシリアの遠景

この目で見たイスラエルの今(2)無人の国境とシリア内戦と流れ弾

2017.08.30

Updated by Hitoshi Arai on 8月 30, 2017, 10:00 am JST

前回に引き続き、この目でみたイスラエルを紹介する。今回は国境と、Mt.Harmonのスキー場を紹介することで、前回とはまた少し異なる視点でのイスラエルの実情を紹介したい。今回紹介する場所は下記地図の赤丸をつけた場所である。

イスラエルの今

国境に行ってみた

皆さんは「国境」を自分の目で見たことがあるだろうか? トランプ大統領の発言で話題になったが、私は、これまで陸地に作られた国境という「モノ」を見たことがなかった。今回、イスラエル北部にあるヨルダンやシリア、レバノンとの国境に連れて行ってもらった。写真は、ガリラヤ湖に近いヨルダンとの国境である。GoogleMapでゴラン高原を見ると分かるが、98号線というゴラン高原を走る道路沿いの一部が正に国境線になっているので、車で走りながら見える景色である。金網と鉄条網で作られた柵がイスラエル側の境であり、その先は緩衝地帯になっていて、何十メートルか何百メートルか先に同様の金網の柵がヨルダン側の境として見える。金網越しにヨルダン側の監視塔が見える。写真には写らなかったが、よく見ると監視塔に兵士と思われる人も見えた。お互いに見通せる程度の距離である。

イスラエルの今

そのフェンスには、次の写真のようなコンクリートの壁(シェルター)が数百メートルおきに一定間隔で設けられている。万が一向こうから攻撃を受けた時には、此処まで走って隠れろ、ということだそうだ。

イスラエルの今

ものものしく思われるかもしれないが、ヨルダンとの間に特に今厳しい緊張があるわけではなく、静かな雰囲気であった。イスラエル側にも監視塔はあるのだが、今は一人の兵士もいない。国境監視は監視カメラとドローンで24時間行っているようなので、人を貼り付ける必要はないのだそうだ。人もいないので、このシェルターもそれほど活躍する場面はないのかもしれない。

ここで言うドローンは、最近流行りのプロペラが4枚あって自撮りに使うようなものではなく、まさに小型の飛行機である。クーリエ・ジャポンの記事に写真があるので参照して欲しい。30時間は飛び続けることができるそうだ。偶然だが、ゴラン高原にある軍基地の近くを車で通った時に、建物の陰に、本物のドローンの尾翼が見えた。頭では分かっていたが、実物は想像以上に大きい。

「流れ弾」による挑発

この後、シリア、レバノンとの国境にも行ったのだが、多くのエリアは主に果物(ぶどうやさくらんぼ)の木が植えられた一面の畑で、その遠く先にコンクリートの壁が見えた。シリア国境では、国連軍の建物も見えた。良く知られているように、ゴラン高原は、現在イスラエルが実効支配しているが、シリアはシリア領であると主張しているエリアである。その平和維持活動のために、国連軍が駐在しており、日本の自衛隊も2013年まで駐在していた。翌朝のBBCニュースで、シリア内戦のニュースを見たのだが、友人によれば、正に我々がドライブした場所から見通せる場所で、我々が通った頃に紛争が起きていたらしい。

あまり日本では報道されることはないが、私が訪れたエリア(ゴラン高原)ではロケット弾の流れ弾がシリアから「意図的に」飛んでくるそうである。トルコのサイトで関連記事を見つけた。撃ってくるのがシリアの政府軍か反政府軍のどちらからなのか、は私の理解を超えているが、「イスラエルに参戦してほしくてある種の“誘い”をかけているため」だそうだ。イスラエル側としてはその意図がわかっているので、流れ弾が1つ来たら、律儀に1つ返すが、イスラエル側に人命等の被害さえなければそれ以上の介入はしない、敢えて他人の揉め事に介入することはしない、と友人は言っていた。

このような見方をイスラエルに組するものと感じられる方もいるかもしれない。だがパレスチナとイスラエルの関係になると、パレスチナ側からの攻撃及びイスラエル側の被害が日本のメディアで報道されたことは昔からほとんど無く、常に、イスラエルから攻撃した、という報道になる。、逆に私は、日本の報道を見ているだけでは誤りをおかすのではないか、という懸念を持つ。

日本では北方領土との間くらいしか、明確に国境を意識する場所はないだろう。無論そこに目に見えない壁はあるが、実際は海である。物理的な壁(柵)があって、ここから先には行けない、という場所に実際に立ってみるというのは、何とも形容し難い体験であった。更に、国境近辺の道路にはゲートがいくつか設置されているのも見た。通常は開いているのだが、もし侵入者が見つかった場合には、ゲートを閉じてそれより内部に入らないように防ぐための設備である。四方海に囲まれた島国日本の場合、物理的な壁を作る必要がない反面、侵入者を防ぐことも容易ではないという事実を、他国の設備をみることで再認識した次第である。

スキー場がある!

イスラエルにもスキー場がある、と知っている人はどれだけいるだろうか? 地図を調べてみたら、テルアビブの緯度は32°4′51″、熊本市 32°47′23″とほぼおなじ緯度にある。九州でも雪が降るのだから、イスラエルで雪が降ってもおかしくはないのだが、砂漠の国というイメージがあるので、正直驚いた。

場所は、Mt.Harmonというイスラエルの最北端で、正にシリア、レバノンとの国境にある高さ1,000mの山である。写真はそのスキー場の入り口で、なんと顔ハメ看板があった。熱海の商店街にある貫一・お宮の看板と同じで、世界中どこでも観光地の考えることは一緒らしい。辞書で調べたら、英語ではcomic foregroundと言うそうだ、初めて知った。確かに、backgroundの反対なので分かりやすい。

頂上に登るリフトが3基あり、うち1基は営業していたので、酔狂にも登ってみた。15分くらいリフトに乗るのでそれなりの距離と高度である。風が強く少し怖かったが、確かに頂上とふもととで5度以上の気温差があった。スキー場であると同時にやはり軍の監視拠点でもあり、隣の山頂にはアンテナが見えた。軍の拠点があるだけに、スキー場に至る道の途中にはゲートがある。一本道なので、冬のシーズンには大渋滞だそうだ。

連載初回にも述べたが、イスラエルはわずか四国程度の大きさ(面積)の国で、南北最も長いところで470Kmだが、北端ではスキーが出来、南部には砂漠がある。物事は一面で見ると間違える、ということをここでも実感した。

イスラエルの今

イスラエルの今

写真の解説
イスラエル側から見たシリアの遠景。写真の中央に木が横一列に並んでいるが、その丁度真中によく見るとうっすらと白煙が見える。これが翌朝のBBCニュースで報じられた内戦そのものであった。

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新井 均(あらい・ひとし)

NTT武蔵野電気通信研究所にて液晶デバイス関連の研究開発業務に従事後、外資系メーカー、新規参入通信事業者のマネジメントを歴任し、2007年ネクシム・コミュニケーションズ株式会社代表取締役に就任。2014年にネクシムの株式譲渡後、海外(主にイスラエル)企業の日本市場進出を支援するコンサル業務を開始。MITスローンスクール卒業。日本イスラエル親善協会ビジネス交流委員。E-mail: hitoshi.arai@alum.mit.edu