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アクティブラーニング型で地域の防災リーダー育成を目指す「すごい災害訓練」が大阪で実施

2016.05.02

Updated by Yuko Nonoshita on 5月 2, 2016, 06:30 am JST

気象に関する専門家や防災関係者を交えながら、最先端の防災情報活用事例、気象情報活用事例について情報を共有するコミュニティ「天博- Tenpaku -」の第8回イベントが大阪で開催された。今回は、大阪市内にある2つの区で実施されたアクティブラーニング型の災害対応訓練と、昨年9月に茨城県常総市でおきた関東・東北豪雨災害でのボランティアセンターの運営状況について、それぞれの現場担当者から報告が行われた。

地域性と自主性を取り入れた災害訓練で防災リーダーの育成を目指す

大阪市立大学では東日本大震災後に都市防災研究プロジェクトを立ち上げ、都市における防災研究や被災地支援、防災教育を推進してきた。4年間にわたるプロジェクトの活動成果を元に設立された大阪市立大学都市防災教育研究センター[CERD](サード)は、公立大学防災センターなど国内外でさまざまな組織と連携しながら、防災教室やワークショップ、防災訓練など地域の防災リーダーの育成を行い、新しいコミュニティ防災システムの確立を目指している。

この2月には、先進的な災害訓練で注目を集める「すごい災害訓練DECO(Disaster Evacuation Coaching)」をベースにしたアクティブラーニング型の災害対応訓練を平野区瓜破西地域と住吉区において実施している。訓練を計画・運営したセンター兼任研究員の吉田大介氏は「ワンパターンの防災、減災教育は効果が無い。それぞれの地域性を活かした訓練シナリオを検討し、自治体や地域住民、学生も一緒に参加することで、よりリアルな訓練を行う必要がある」と説明する。

▼大阪市立大学都市防災教育研究センター[CERD](サード)の活動について説明するセンター兼任研究員の吉田大介氏。
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▼訓練のベースとなった「すごい災害訓練DECO」はリアルとITをつなぐ新しい形の防災教育として注目を集めている。
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通常の災害訓練との違いは、訓練の前にルールの説明や危険回避行動、負傷者の搬送方法などの実習は行うものの、当日の具体的なスケジュールは知らせず、現場での指示に合わせた臨機応変な対応が求められるという点だ。訓練の当日のタスクは、チームに1台ずつ配布されるタブレットで、本部や現地に配置されたビーコンから出される指示を受け取り、特定の場所に移動したり、近くにいるケガ人を助けたり、現地のサポーターと連携しながら目標をクリアしていく。

タブレットにはDECOで開発された訓練用のアプリが搭載されており、位置情報をマップで確認したり、移動ログも自動で保存される。また、訓練中の運営本部と参加者同士とのやりとりは、Twitterにハッシュタグを付ける形で行い、災害時の情報発信リテラシーを高めることも訓練内容に含まれている。

▼訓練内容はタブレットに出される指示に従って臨機応変に行う。
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▼Twitterを使って指示を受けるだけでなく現場からも発信を行い、適切に情報を伝えあう方法を学ぶ。
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事前準備とシナリオの作り込みで訓練の質を高める

訓練のシナリオは地域特性に合わせたものになっており、事前に地区を下見する「防災まち歩き」というイベントを行って内容を検討している。平野区は大和川の近くなので水害を想定し、さらに災害時にリーダーとして活躍してもらうため中学生を中心とし、避難先の公園にあるマンホールトイレやかまどになるベンチを実際に設置したり、ヘリで救援物資が届いた場合の対応を行った。一方、住吉区は住宅地での災害を想定し、大学生と日本語に不慣れな留学生も一緒に参加することで言葉の問題を考えながらの訓練になった。

通常、これほど実践的な災害訓練を行うのはかなり大変で、地域や行政の協力無しには実現しない。「成果を出すには事前準備からきちんと行うのが大事で、そうした活動を通じて全体の連帯感が生まれてくる」とも。いずれの区も協力的だったことから大きな問題はなかったが、ぶっつけ本番の進行で運営側が情報共有するのが難しかったり、参加者の間で訓練でやりたいことにギャップがあるなど、いろいろな課題も見えた。

使用するツールについても、当日に通信環境のトラブルがあったことから、今後はオフラインで使用できるDIG地図(災害図上訓練用地図)や、オフラインマップを活用するなどの工夫が必要となる。訓練で使われた教材やシステム、アプリはオープンライセンスで公開することが予定されており、GitHubを使った協働・開発用のプラットフォームを通じて改善を重ねていく。

こうした情報共有が大事で、災害訓練の様子もビデオで公開されている(平野区瓜破西地域)(住吉区 )。また、CERDでは今回の経験を元に訓練の運営を改善し、次は南海トラフを想定した訓練を異なる地域で実施する予定だ。また、来年度は兵庫県や岩手県で水害や地滑りなどを想定した訓練も計画されている。

▼訓練後の振り返りでさまざまな課題が見えてきた
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▼通常の訓練であれば事前訓練の内容だけでも十分に見える。
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災害ボランティアセンターでは何が行われているのか?

次に、災害時にボランティアセンターではどのような活動が行われるかについて、チーム中越の井上賢太郎氏が2015年の関東・東北豪雨で開設された常総市災害ボランティアセンターでの活動経験を元に報告を行った。

災害ボランティアセンターは基本的に社会福祉協議会が災害時に立ち上げるが、場合によっては自治体や他の組織が別のセンターを立ち上がる場合もあり、常総市では2つのセンターが立ち上がり、やや混乱した状況になったという。それでも、個人やグループでの活動は非効率なのでセンターは必要であり、何よりも情報拠点としての機能が必要とされる。

▼常総市災害ボランティアセンターの立ち上げから運営について井上賢太郎氏が当時の状況を説明した。
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主な仕事はボランティアの受付けとマッチング、活動前のガイダンスやマニュアルの配付など。常総市の場合は被災現場への送迎も行われた。常総市のセンターはスタッフの規模は100名で、近隣の社協やJC、NPOなども参加する。時系列で新たな課題が生じるため、現場に合わせた対応が求められる。

センターを運営する側としてボランティアにお願いしたいのは保険の加入と自前の食事を用意すること。移動手段もできれば自分で用意したほうがいい。そうしたノウハウはだいぶ周知されてきたが、とにかく現場によって状況が変わるので、今後はそうした情報をどう共有していくかが課題となりそうだ。

▼こうした分かりやすいマニュアルを配布し、ボランティア活動前にガイダンスを行うのもボランティアセンターの役割の一つになっている。
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▼現場の状況は時系列で刻々と変わる。
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防災情報やITを活用した支援活動を行うために

今回の天博は開催日が平成28年熊本地震からまもない4月17日だったことから、主催者のYuMake LLC 佐藤拓也氏からITと防災情報を活用して熊本地震の支援活動を行うコミュニティの動きも合わせて紹介された。一般社団法人のIT DARTをはじめ、減災インフォやITx災害コミュニティなどが活動しており、他にもFacebookのグループを使った活動も複数あるという。

こうした支援活動は初動も早く、運営ノウハウも蓄積されているが、まだ十分には周知されていない。佐藤氏は「日本各地で大規模な自然災害が増えており、防災に関する知識を日頃から高めておいてほしい」とあらためて参加者に呼びかけていた。

▼平成28年熊本地震ではITや防災情報を活用したさまざまな支援活動が行われている。
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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。

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