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「可能な限りエシカルなスマホ」Fairphone、新モデルにSailfish OS移植も

2015.12.18

Updated by Asako Itagaki on December 18, 2015, 15:39 pm JST

MeeGoというOSを覚えているでしょうか。NOKIAとIntelが携帯機器向けのOSとして開発していたLinuxベースのオープンソースプロジェクトです。2010年に発表された後、2011年には端末が発表されました。しかしその後ノキアはマイクロソフトと提携してWindows Phoneプラットフォームへと舵を切り、IntelはSamsungと組んでTizenに合流したことで、ひっそりと表舞台からは消えていきました。

その後MeeGoは、NOKIAが出した唯一のMeeGo端末「N9」の開発チームが中心となって設立したフィンランドのJollaにより、Sailfish OSとして開発が続けられてきました。2013年には製品発表を行い欧州市場に参入。その後2014年には香港、インド、カザフスタン、そしてロシアのVVPグループと組んでロシア市場に参入しました(関連記事:フィンランドのスマートフォン「Jolla」、ロシアに進出)。2015年には、ロシア政府が開発を目指す国産OSのベースになる可能性も報じられています(関連記事:ロシア政府、国産モバイルOS開発に意欲 外国製OS依存を危惧)

ところで最近意外なところで「Sailfish OS」の名前を聞く機会がありました。部品の材料となる鉱物調達から組み立てまでエシカル(倫理的)であることを基準に生産されている「Fairphone」の新モデル「Fairphone 2」向けに、Sailfish OSの移植が進められているというのです。

Jolla community working on Sailfish OS for the Fairphone 2

欧州を中心に6万台以上を販売したFairphone

スマートデバイスの生産において、組立作業に従事する労働者の労働環境の劣悪さや低賃金の問題は度々指摘されています。また、材料となる鉱物資源の調達においても、鉱山地域の先住民の強制排除、大量の鉱山廃棄物による環境破壊、生物多様性の破壊、児童労働や強制労働といった人権侵害にあたる問題など、さまざまな問題が発生しています(関連記事:通信業界とエシカル・メタル)。

こうした問題に対する回答として誕生したのが「Fairphone」。採掘、設計、組み立て、ライフサイクルの全てにわたって、「可能な限りエシカルであること」を基準に生産されているスマートフォンです。

▼Fairphone 2
fairphone-1

誕生のきっかけは、2009年にオランダで2人のデザイナーが始めた「紛争鉱物問題」を知らせるためのキャンペーンでした。スマートフォンをテーマとしてとりあげる議論の過程で、「FairPhone」というコンセプトが誕生しました。やがて2011年には、問題のスコープを紛争鉱物からサプライチェーンへと拡大。2013年半ばにはクラウドファンディングで700万ユーロ以上を調達し(欧州におけるクラウドファンディングの調達金額の最高記録)、初期モデルの生産に着手・出荷しました。欧州ではこれまでに6万台以上を販売しています。

そして2番めのモデルにあたる「Fairphone 2」が、2015年中に出荷されます(3日前に初期生産ロットがスウェーデンに到着したそうです)。価格は529.38ユーロとなっています。

Fairphoneは以下の5つをコンセプトとして掲げています

1.できる限りフェアな鉱物調達
2.長期利用を前提としたデザインで、自分でメンテナンス可能
3.大量生産をしない予約販売性
4.原料調達から回収までライフサイクル全体の配慮
5.部品提供元まで公開する情報の透明性

ウェブサイトでは、使用済み端末から金属を回収する様子や、実際に鉱山や組立工場を視察に行った時のレポートが公開されています。

▼ルワンダのタングステン採掘現場
fairphone-2

▼中国の組立工場
fairphone- 3

また、製品価格の内訳についても詳細なレポートが公開されています。525ユーロのうち、製造原価は340ユーロ。うち原材料費が230.3ユーロ、ロイヤリティが39.1ユーロ、組立工賃が37.2ユーロ、法人の税引き前利益が9ユーロ、など、詳細に記述されています(年間140,000台販売すると仮定して試算)。

▼フェアフォン2の価格内訳("Cost break down of the Fairphone 2" より。クリックでPDFレポートが開きます)
fairphone-cost-s

端末を長く使えるよう、ユーザーが自分で修理・保守できるよう、分解しやすい構造となっています。また、保守部品もウェブサイトで販売されています。

▼Fairphone 2展開図
fairphone-4

製品版のFairphone 2のOSはAndroidですが、「情報公開の透明性」という点で、オープンソース OSであるSailfish OSは相性が良いのでしょう。

12月20日、このFairphone北京事務所のムーラン・ムー氏が登壇するシンポジウムが開催されます。また、実際にフェアフォンを分解するイベントも併催されるそうです。

日本で発売される予定については不明ですが、イベントを主宰する「エシカルケータイキャンペーン」によれば、今回の来日ではムー氏と日本企業との意見交換も予定されているそうです。日本で利用するには技適の壁がありますが、周波数帯としてはFDD-LTEのBand3、W-CDMAのBand Iに対応しているようなので、ドコモSIMでは利用できる可能性があるのではないでしょうか。どこかのMVNOが支援して日本でもSIMフリー端末として利用できるようになればなあと思ったりしています。

【関連情報】
Fairphone
12/20(日)「シンポジウム:エシカルケータイのつくり方 -オランダ発フェアフォンの事例をもとに-」
12/20(日)フェアフォン徹底解剖
12/21(月)フェアフォン意見交換会(企業の方対象)

※写真・図版は全てFairphone(http://www.fairphone.com)より (CC-BY-SA-NC

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。