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タイで台頭してきた中国のスマホメーカーOPPO:これからのスマホメーカーにとって重要なのは「カメラ」

2016.05.13

Updated by Hitoshi Sato on May 13, 2016, 17:53 pm JST

2016年Q1の世界スマホ出荷で4位に入ってきたOPPO

IDCによると2016年第1四半期(1月~3月)の世界のスマホ出荷台数は前年比0.2%増の3億3,490万台だった。前年比伸び率0.2%というのは、IDCが調査を初めてからの最低記録だそうだ。ところが、今回のIDC調査で大きなニュースとしては4位に中国メーカーOPPOが、5位に中国メーカーvivoが入ってきたことだ。1位サムスン、2位Apple、3位Huaweiの常連は不動だが、従来のLenovo(中国)、LG(韓国)に代わって、中国の新興スマホメーカーが台頭してきた。ともに100%以上の出荷増であり、世界規模では横ばいの伸び率しかないスマホ出荷だったが、中国の新興企業2社は大きく成長してきた。

▼2016年第1四半期のメーカー別出荷数とシェア(IDC発表資料を基に作成)
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東南アジアで普及してきたOPPO:競争激しいタイ市場でも台頭

OPPOは2004年に設立され、2008年から携帯電話の生産・販売を開始してきた新しい企業だ。中国市場ではiPhone、サムスン、Huawei、Lenovoといったメーカーが強いことから2010年3月から中国国外の海外市場に進出してきた。そして現在では東南アジアやインド以外にもアメリカ市場にも進出している。特に東南アジア各国でのOPPOのプレゼンスは大きい。特にタイ、マレーシア、インドネシアではOPPOの広告宣伝やキャンペーンをよく見かける。

現在、筆者はタイのバンコクにいるのだが、ここバンコクでもOPPOを利用している人を多く見かける。OPPOは2012年3月からタイでスマホを販売しており、2014年ごろから本格的にキャンペーンや広告宣伝を見かけるようになった。日本ではOPPOの名前を知らない人がほとんどだろうが、タイでは知らない人はいないくらいのポジションを市場進出して4年程度で築いている。

タイではもう新機種のほとんど全てがスマホであり、バンコクではほぼ誰もがスマホを利用している。iPhoneの人気も非常に強く、通信事業者は積極的にiPhoneの販売をしており、サムスンも凄い勢いで広告宣伝を行い、販売力を強化している非常に競争の激しい市場である。

「カメラ」で勝負するスマホメーカー

現在OPPOが注力しているスマホは「F1」という製品で、これは「セルフィー(自撮り)」のカメラをウリにしている。8,990バーツ(約27,000円)が販売価格だが店舗によって異なる。現在、サムスンも「S7」でカメラをウリにして積極的なキャンペーンを実施している。そして日本でもiPhoneの広告は「カメラ」をウリにしており、「Shot on iPhone 6(iPhone 6で撮影)」をキャッチフレーズに全世界でキャンペーンを展開している。まさに「カメラ」が競争のスペックになっている。日本でもスマホで多くの人がカメラで撮影しているが、タイなど海外でもスマホでの撮影は大人気であり、カメラの性能が良いことは、電池の持ちに次いで重要な要素である。特にタイではカメラで撮影した写真をFacebookやInstagramなどのSNSにアップして友人・知人らに「いいね」をしてもらうことに生きがいを感じている若者も多い。またカフェや大学などあらゆるところでWi-Fiも利用可能だし、タイでは4G(LTE)も相当に普及しているのでモバイルのブロードバンドはどこでも整備されており、どこからでも簡単に写真のアップが可能な環境である。特に最近ではInstagramが大人気であり、Instagramはまさに「写真の綺麗さ」がポイントになることから、スマホにおけるカメラの重要性が伺える。

もはやスマホの機能やスペック、デザインで大きな差別化は難しくなってきていることから、カメラで綺麗な写真を撮影できることは、特に若者にとっては「スマホ購入の基準」として非常に重要である。現在、カメラ機能はタイだけでなく世界共通のスマホ選択における基準であり「スマホでどれだけいい写真が撮れるか」はメーカーの生き残りを左右する重要なファクターになっている。

▼タイのBTSの駅にあるOPPOの広告
20160513-oppo-share2

【参照情報】
Worldwide Smartphone Growth Goes Flat in the First Quarter as Chinese Vendors Churn the Top 5 Vendor List, According to IDC - prUS41216716
OPPO Mobile for Smartphones & Accessories - OPPO Global - OPPO Thailand

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。