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一般財団法人情報法制研究所設立、学際的な専門家の集積による政策提言目指す

2016.05.16

Updated by Asako Itagaki on May 16, 2016, 11:59 am JST

複雑化するネット環境における法的課題への取り組みや解決策の提案にに資することを目的にした一般財団法人情報法制研究所(略称・JILIS)が設立される。5月14日、東京都内で設立記念シンポジウムが開催された。

設立の趣旨について、理事長の新潟大学の鈴木正朝教授は、類似の学会・研究会が多数ある中、既存学会の活動とは別に、「政策提言」が必要であることを指摘。その背景として、番号制度の導入に伴う個人情報保護委員会創設のプロセスにおいて、学会が立法についての論点を出して十分に議論が尽くせず、どちらかといえば後手にまわる研究が多かったという反省を挙げた。

これをふまえ、現在進む個人情報保護法改正における論点となる新たなネットワーク社会における消費者保護の視点、匿名加工基準とEUデータ保護指令との整合性など、技術系、数理系研究者との共同研究が必要であること、また番号法やゲノム法など、その他の法律においても、従来の縦割り方組織では十分に受け止めきれない課題が増えており、新たな組織を作ることも含め提案していく必要性を指摘し、「具体的な立法政策の提案」に積極的に取り組む意向を表明した。

10項目の運営方針

運営方針として、まずは学術研究団体として活動すること、法学に限定せず学際的な研究と政策論を含むこと、国際交流と若手研究人材の育成・支援などを挙げた。

また、重要な役割として「2年交代の役所ルールで動いているプライバシーコミッショナーの周辺に、10年選手の研究者が集積している状態を勝手連的に作る」(鈴木氏)と、個人情報保護委員会の周辺への専門人材の集積を挙げた。

また、マルチステークホルダプロセスを具体化した中立的な運営を行うことを掲げた。特に企業の抱える情報法制関連の問題については、クローズドな場として主席研究員委嘱を内々に委託中であり、企業と研究員が生情報を見て率直に議論するタスクフォースを理事会直轄で設置する。「漠然とした不安で議論がストップすることは(企業と消費者の)双方にとって良くない」と、情報法制の知見を持った消費者保護人材を育成するために、消費者団体の参加も歓迎する。

さらに、政策提言および「立法評釈」に取り組む。できあがった法律の解釈運用だけでなく、そもそも立法に瑕疵がある場合に学術的な見地から評釈を加えるための方法論についても研究し、現行法の問題点を正してより良い改正案を目指す。

▼10項目の運営方針

JILISについてはLINEが設立および運営の支援を表明しており、同社公共政策室室長の江口清貴氏が専務理事を務める。運営については「会員を募り、自主的ファンドで中立的に資金を集め、中立的な活動をしたい」(鈴木氏)と表明している。理事には立命館大学の上原哲太郎教授、産総研の高木浩光主任研究員、サイバーディフェンス研究所の名和利夫氏など、情報セキュリティ・プライバシー関連の専門家が名を連ねている。

▼JILIS役員構成。なお、顧問として名前が挙がる森田朗東京大学名誉教授と奥村裕一東京大学客員教授については、理事に選出されたことが鈴木氏によって報告された。


当日は、「情報法」の概念を提唱した堀部政男一橋大学名誉教授(個人情報保護委員会委員長)による特別講演「日本の情報法制研究の歴史・現在・未来」や、理事らによる報告が行われた。

【関連情報】
情報法春季特別連続シンポジウム2016 第一回特別シンポジウム 「一般財団法人情報法制研究所」設立記念 2016年5月14日(当日のプログラム)
【コーポレート】LINE、一般財団法人 情報法制研究所の設立を支援(LINE 報道発表資料)

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。

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