IoT専用クラウドPaaSベンダー、エイラネットワークスが日本進出

2016.05.18

Updated by Kenji Tsuda on 5月 18, 2016, 06:31 am JST

IoTシステムは、機器に取り付けたIoT端末からインターネット上のクラウドにさまざまなデータを上げ、そのデータを解析し、機器の最適な動作状態や使い勝手などを見出すことによって、次の製品作りに活かしたり、機器の予防メンテナンスに活かしたりするものだ(図1)。機器の動作状態や使われ方を、モバイルのアプリでモニタすることもできる。こうした一連のシステムを構築するためのプラットフォームとして、IoT端末からクラウド上でのデータ取り扱い、モバイルなどで見るためのアプリケーション開発ツールまでを手掛けるクラウドのPaaS(Platform as a Service)を提供するベンチャーが登場した。

▼図1 IoTシステムはセンサ端末からゲートウェイ、クラウド、ビッグデータ解析、データ可視化といった一連のループを構成する(作成:津田建二)
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米カリフォルニア州のシリコンバレーの中心地であるサンタクララ市に拠点を構える、エイラネットワークス(Ayla Networks)は、IoT専用のプラットフォームを提供するビジネスをグローバル展開している。同社はPaaSビジネスを米国、中国、欧州、台湾などで展開してきたが、このほど日本にも本格的に参入した。アマゾンやマイクロソフトなどに代表されるPaaSを提供する企業は、自社専用のクラウドでビジネスを展開している企業が多いが、エイラは信頼のあるアマゾンのクラウドを利用して、クラウド上に築いたIoTシステムのプラットフォームを提供する。

最初からグローバルに展開

エイラは、2010年サンタクララ市において4名で創業、現在世界中に150名の従業員がいる。これまで投資したキャピタルには米国や中国などのVC(ベンチャーキャピタル)がいる。最大はシスコ社だとしている。これまで2000万ドル(約22億円)を投資した。設立当初の狙いは、2010年ではインターネットが拡大中で、ネットにつながるデバイスはパソコンからもモバイルへと広がっていた。「当時はIoTという言葉はなかったが、いずれいろいろなものへもつながる」と同社CEOのDavid Friedman氏(図2)はIoTの出現を予測していた。

▼図2 エイラネットワークス社CEOのデビッド・フリードマン(David Friedman)氏
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IoTシステムはセンサ端末やソフトウエアを作ってインターネットにつなげればよいというものでは決してない。インターネットにつなげた後、自社の生産性を上げたり、店舗の売り上げを上げたりするために利用することが目的である。IoTそのものはあくまでも生産性や売り上げなどを上げる手段に過ぎない。IoT端末をインターネットにつなげるだけではビジネスにならない。

インターネットにつなげる対象を当時、エイラは白物家電とみており、食洗器や炊飯器などにセンサ端末(IoT端末)をつけ、つなげることで、家電を制御するだけでなく次の製品開発に生かせるための仕組みを考えた。家電製品をどのように使っているのか、スイッチの入れる時刻や使い勝手、頻度などのユーザーからのデータと、家電に組み込まれたモータやヒーターなど使用中の回転数や温度履歴、ファンに付着するゴミの量など製品ハードからのデータ、を集め、分析することで、メーカーは次の製品開発に生かすことができる。

これまでは消費者にアンケートを取ったり、ヒアリング調査したり、フォーカスグループのような調査をしたりして、次世代製品の要望を探ってきたが、IoTを使えばその必要はなくなる。また、ユーザーにとっては、スマートフォンを使って一つの家電だけではなく、エアコンや照明とも連携して、外出先からもオンオフ制御や確認することができる。

誰で使えるセキュアなプラットフォーム

アップルやアマゾン、グーグルなどに代表される大手企業は、クラウドとセンサやユーザーの履歴を利用して、売り上げアップにつなげようとしている。彼らは独自のセキュアなクラウドを作り、ユーザーは意識することなくクラウドを利用している。対して、一般の製造業や中小企業はクラウド利用で生産性や売り上げに貢献することが容易ではなく、自前で高信頼性・高アベイラビリティ・高セキュリティなクラウドを構築しそれを利用することは厳しい。エイラの提供するIoTプラットフォームは、、セキュアなクラウドを利用して、製造業や中小企業の生産性向上や売り上げ向上支援を狙う。

▼図3 エイラのクラウドプラットフォーム(出典:Ayla Networks)
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そのプラットフォームでは、ユーザー(製造業や中小企業)が自由に設定したりデータを解析できたりするようなツールを提供する(図3)。エイラはユーザーの製品(IoT端末付き)ごとに一つのプラットフォームで設定からデータ収集・分析までのツールを提供するため、ユーザーは自分でクラウドを構築しIoT端末との接続や認証などに手を煩わせる必要がなく、自社製品開発に集中できる。

エコシステムをまとめる

エイラがIoTビジネスを仕切るためには多くのパートナーとのエコシステムが欠かせない。エイラは、クラウドを利用したPaaSベンダーである(図4)が、IoTシステムをクラウドでサービスするために、プラットフォームの基本コンポーネントを3つ持っている。デバイスとクラウド、そしてアプリケーションである。それぞれの分野で多くのパートナーとパートナーを組んでいる。

▼図4 エイラが構築したエコシステム(出典:Ayla Networks)
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デバイスはIoT端末に必要で、基本的にはセンサとアナログ、マイコン、Wi-Fiなどの無線ネットワーク接続を提供する。重要な制御用のマイコンとしてルネサスとパートナーを組み、供給を確保している。また、Wi-Fiモジュールは村田製作所から供給を受けている。その他の部品に関しては販売代理店のマクニカと提携しており、エンジニアリングサービスとしてレブソニックと提携している。デバイスにはエイラのセキュアな暗号化のソフトウエアをマイコンに焼き付け、Wi-Fiモジュールにもセキュリティソフトを入れている。

クラウドでは、アマゾンのクラウドサービスAWSを利用しその上でAPIを提供している。IoT端末を自社製品に取り付けるメーカー(顧客)は、コーディングする必要はなく、APIのメニューから自社の製品に合う設定をするだけでよいという。しかもクラウド上のプラットフォームは安定しており、信頼性が高く、セキュリティは強固だとしている。

アプリケーションでは、IoT端末を取り付けた製品の様子をスマートフォンやタブレットで操作できるようにするためのアプリを提供する(図5)。もともとアンドロイドとiOSのライブラリを持っており、スケジュールやレジスタなどのモバイルライブラリもある。さらに独自のAMAP(Ayla Mobile Application Platform)を利用してアプリケーションを作成することもできる。これはある程度、基本構成が出来ており、顧客の好みに応じて画面上の色や大きさ、数字などを設定できるようになっている。

▼図5 モバイル上でデータを可視化するアプリ作成用のツール(出典:Ayla Networks)
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エイラのPaaSの特長は、拡張性がありながらセキュリティがしっかりしていることだとしている。IoT端末を取り付けるデバイスが何であれ、すべてこのプラットフォーム上でデータ収集・解析までできる上に、グローバルな展開も容易である。世界各地での規制や仕様の違いがあっても、すでに北米、欧州、中国、台湾で展開しているため、簡単に規制に合わすことができる。また、暗号化では2048ビットの公開/非公開鍵でデータは守られており、データ転送にはSSL/TLSのセキュリティがかかっている。もちろん、認証を通らなければならない。

富士通ゼネラルとのコラボで日本進出を決意

これまで公開している事例として、富士通ゼネラルのエアコンにWi-Fiモジュールを搭載しインターネットとつなげた製品などがあり、この製品を共同開発中で、今年の中ごろには発売されそうだ。さらには、米ハンター(Hunter)社の天井ファンにWi-Fiを設置しアップルの家電操作Homekitをサポートしている。これにより消費者は外出先からファンを制御できる。加えて、米ブリンクス(Brinks)社のドアロックWi-Fiでは、スマホを近づけなければ鍵が開かないようになっている。米ディンプレックス(Dimplex)社は温熱ヒーターをインターネットとつなげている。

日本オフィスを新横浜に開いたのは、昨年から富士通ゼネラルと一緒にIoT端末を取り付けたエアコンを開発してきており、日本の高品質・高信頼のモノづくりを見て、IoTシステムの顧客をとれると踏んだからだ。当面は、カントリーマネジャーと技術セールス担当者の2名から始める。まだ法人化していないが、カントリーマネジャーは橋本力也氏。状況によって増やしていく。エイラ全体の現在の社員数150名の内、80名が米国、45名が中国の深圳、欧州は数名だとしている。

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津田建二(つだ・けんじ)

現在、英文・和文のフリー国際技術ジャーナリスト兼セミコンポータル編集長兼newsandchips.com編集長。半導体・エレクトロニクス産業を30年以上取材。日経マグロウヒル(現日経BP社)時代からの少ない現役生き残り。Reed Business Informationでは米国の編集者らとの太いパイプを築き、欧米アジアの編集記者との付き合いは長い。著書「メガトレンド半導体 2014-2023」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」など。