【イベント報告】自動運転車を動かすのは地図とネットワーク〜パネルディスカッション「5G×IoT×自動運転」

【イベント報告】自動運転車を動かすのは地図とネットワーク〜パネルディスカッション「5G×IoT×自動運転」

2016.05.23

Updated by WirelessWire News編集部 on 5月 23, 2016, 06:30 am JST Sponsored by NOKIA

去る3月24日、ノキアソリューションズ&ネットワークス(以下ノキア)内セミナールームにて、パネルディスカッション「5G×IoT×自動運転 〜クルマの新しいインフラとしてのネットワークと地図の役割」が開催されました。

オペレーター、地図メーカー、ネットワークベンダーそれぞれの立場から見た車と自動運転について、当日の議論の中からいくつかのトピックスをご紹介します。

谷 直樹氏 吉村 透氏 野地 真樹氏 岸田 重行氏
登壇者:※写真左から
谷 直樹氏(NTTドコモ 法人ビジネス本部 IoTビジネス部 部長)
吉村 透氏(HERE JAPANオートモーティブ事業本部 アジア太平洋地域担当マーケティング部長)
野地 真樹氏(ノキアソリューションズ&ネットワークス シニア・テクノロジー・エキスパート)
司会進行:岸田 重行氏(情報通信総合研究所 上席主任研究員)

5Gがもたらす自動運転の進化と地図のあるべき姿

1つめの論点として岸田氏から、「自動運転そのものは通信ネットワークがなくてもできるところはあるが、ネットワークがあるからこそできることがあるのではないか、それは何か」というテーマが提示されました。

スピードが信頼性になる

野地氏はネットワークベンダーの立場から、「誰が運転するのか」によってネットワークの役割は変わるという見方を示しました。

第一段階として、主に人が運転するが、自動ブレーキで補助する、現在も既に実現している段階がまずあります。さらにもう一段階進むと、車だけでなく、道路に設置されたカメラやセンサーなどを車と接続し、車から見えない範囲にある危険を知らせるためにネットワークが利用されるようになります。そのためのネットワークに例えばLTEの基地局が活用され、基地局と車が通信することで、カバレッジをいち早く広げて行くことが可能になります。

さらに進んで将来的に人が運転しない自動運転が実現した時には、車ではなくネットワーク側に「頭」があり、そこからの指令を車が受けて制御される形が想定されます。その時重要になるのが5Gの低遅延であると指摘しました。「ミッションクリティカルなアプリケーションを実行するとき、重要なのは信頼性。10msの間にコマンドを確実に送らなくてはいけない時に、ネットワークの遅延が10msではワンチャンスしかないが、遅延1msのネットワークであれば10回リトライすることができる。そういう意味で、低遅延という(つながりの)速さは信頼性を担保すると思います」(野地氏)最初はバレーパーキングのような限られた空間から、「ネットワークが車を運転する」時代が来ると予測し、またその時重要になるのが、基地局で素早く情報を処理する「エッジコンピューティング」のアーキテクチャであるとしました。

地図はリアルタイムに配信されるようになる

吉村氏は地図メーカーの立場から、自動運転用の地図はネットワークから配信されるようになると予測しました。その理由として、自動運転用の地図はナビゲーション用の地図に比べて車線情報など付加されている情報が桁違いに多くなることが想定され、現在カーナビに実装されているストレージでは収まらない可能性があること、また高精度データの処理にCPUパワーが必要になり、車の中で従来のナビ地図と同じように処理を完結させることが必ずしも最適解ではなくなるのではという議論が現在行われていることを紹介しました。

その解決策として、「例えばメッシュ単位で区切られたデータとして、クラウドからリアルタイムに配信されていくという姿があるべき形ではないか」と提案しました。また、残された課題としては、天候や周囲の車・人などの状況をいかにして取り込み、センサーが使えないような状況をどのように代替するかを挙げました。

LTEで実現できるサービスと、5Gが必要なサービスがある。

谷氏は5Gの、「高速通信」「大容量化」「低遅延化・高信頼性」「低コスト・省電力化」「超多数端末の同時接続」という5つの要求条件のうち、自動車の観点では映像データなどの大容量データを扱うための「大容量化」「高速通信」、ミッションクリティカルな通信のための「低遅延化・高信頼性」が重要になるという考えを示しました。

大容量データを扱う場面としては、例えば地図データのリアルタイム受信や、ドライブレコーダー情報の送信があります。また、後者については、「車対車の通信を基地局を介して行うための技術などについてはLTEベースでの標準化が進んでおり、モバイルエッジコンピューティングの技術を活用する議論も進んでいるが、無線部分の遅延を根本的に解決するためには5Gを待たなくてはいけないのではないか」と、LTEでも実現できる部分と5Gが必要になる部分があるという見解を示しました。

「ネットワークが車を運転する時代」における新たなビジネスモデル

自動運転車を動かすのは地図とネットワーク〜パネルディスカッション「5G×IoT×自動運転」

次に岸田氏から提示された論点は、「ネットワークから見て車はどのような可能性を持つのか」でした。新たなビジネスモデル登場の可能性と課題について議論が展開しました。

「自動運転の責任」を明らかにするために車のセンサー機能は活用される

自動運転実用化にあたっての課題として、吉村氏は「まだ責任の所在が明らかになっていない」ことを挙げました。従って、従来の自動車保険などの枠組みは、センサーを活用して収集したデータに応じて保険料をチャージしたり、事故時の支払い対応を行うように変わるのではないかと予測しました。

また吉村氏は、「難しいのは法律を遵守しているからといって事故が起きないとは限らないこと」と、次の段階としては周囲の状況を見て判断する人間の経験知のモデリングを目指すことになるが、まだ技術的には難しいという見方を示しました。

エッジコンピューティングは新たなビジネスモデル登場の契機になる

野地氏は、コネクテッド・カーや自動運転などの自動車関連のソリューションを、IoTや5Gの有望なユースケースととらえているだけでなく、「(自動運転実現に必要な)エッジコンピューティングプラットフォームを通じて、車の中で人が利用するサービスを提供するということができるようになるので、例えば通信事業者がエッジ側のサーバーをアプリケーションプロバイダーに提供することで収益を得ることもできるかもしれない」と、新たなビジネスモデル登場の可能性に言及しました。

また、5Gの高速大容量ネットワークがあれば、車が撮影している映像をリアルタイムでネットワーク上に送信し、エッジコンピューティングパワーで地図情報とマッチングすることで最新の状況を車にフィードバックすることが可能になることを指摘し、「5Gと車の関係はとても強くなるだろう」と予測しました。

発生するさまざまな通信は、「誰にメリットがあるのか」

一方で、谷氏は通信事業者の立場から、「インフォテインメントから衝突回避のための車車間通信まで、さまざまな通信が発生するが、ビジネスモデルを考えるにあたっては誰からお金をいただくかが重要」という考え方を示しました。「それは結局、ドライバーさんなのか、車メーカーさんなのか、それとも違うプレイヤーさんなのか、誰にとってメリットがあるのかになるのでしょうが、現状はV2X の技術・スペックの議論をしているところで、事業化やビジネス化まではなかなか議論ができていない」と、もうしばらく時間がかかりそうだという見通しを述べました。

また、ディスカッションの前のプレゼンテーションでは、谷氏からはドコモのIoTと自動運転に関する取り組み、HEREの吉村氏からはナビゲーション用の地図と自動運転用の地図の違い、ノキアの野地氏からはドイツで実施したコネクテッドカー実験の紹介、モデレーターの岸田氏からはMobile World Congressでの主要プレイヤーの取り組み展示について紹介されました。自動運転といえばAIや車の制御技術から論じられることが多いですがインフラとしての地図とネットワークの重要性があらためて浮き彫りとなった議論でした。

関連情報:
LTEを介した低遅延の車車間通信、ドイツのデモに見るコネクテッドカーの近未来図

【次回イベントのご案内】
セミナー「エンタープライズネットワークを変えるSD-WANの可能性」
ノキアのIP/SDN製品事業部の責任者である鹿志村 康生氏が、エンタープライズネットワークが抱える課題、SDN技術とSD-WANの効果、グローバル市場でのSD-WANの導入事例について解説します。

日時:2016年5月30日(月) 16:00-17:30
会場:ノキア 大崎オフィス(東京都品川区大崎2-1-1 ThinkPark Tower 6F)
対象:自社でWANネットワークを活用されている企業における情報システムに関わる意思決定者もしくは構築運用にたずさわる方
参加費:無料
詳細・お申し込みはこちらから

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