Achimの北朝鮮製タブレットを試す - アナログテレビも視聴可能

Achimの北朝鮮製タブレットを試す - アナログテレビも視聴可能

Try Achim tablet which is Made in DPRK - It supports analog TV

2016.06.08

Updated by Kazuteru Tamura on 6月 8, 2016, 11:43 am JST

朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)では2012年にタブレットが登場し、当時は北朝鮮のタブレットを多くのメディアが報道して話題となった。IT製品の人気が高まりつつある北朝鮮でタブレットは人気商品のひとつであり、ラインナップも増加している。筆者は訪朝時にタブレットを購入して試せたので、今回は北朝鮮のタブレットを紹介する。

タブレットの新商品が続々登場

北朝鮮のタブレットは2012年の登場当初より朝鮮語に由来した北朝鮮独自のブランド名が与えられている。2012年の時点ではラインナップが少なく、Achim Computer JV Co LtdがAchimシリーズ、Korea Computer CenterがSamjiyonシリーズ、Pyongyang Technology CompanyがArirangシリーズのタブレットを発売した。

その後、北朝鮮でタブレットを販売する企業や事業所が増加し、2016年までにRyongaksan IT Exchange CompanyがRyonghungシリーズ、Pyongje Co.がMyohyangシリーズ、Haeyang Trading CorpがHaeyangシリーズ、Phurun Hanul Electronics JV Co., LtdがPhurun Hanulシリーズ、Pyongyang Mogran Video ShopがMogranシリーズ、Pyongyang Technology CompanyはArirangシリーズに加えてUllimシリーズのタブレットを販売する。一部シリーズは新商品の投入を見送っているが、北朝鮮のタブレットは豊富なラインナップとなった。

▼北朝鮮で売られているMyohyangシリーズのタブレット。
北朝鮮で売られているMyohyangシリーズのタブレット。

北朝鮮で人気が高まる板型コンピュータ

北朝鮮では一般的にタブレットのことを板型コンピュータ(판형콤퓨터)と呼び、化粧箱には朝鮮語で板型コンピュータを意味する판형콤퓨터と記載されている場合もある。

タブレットの新商品は首都の平壌で開催される国際商品展覧会で公開し、同時に発売することが多い。国際商品展覧会は春と秋に3大革命展示館で開催しており、主催は北朝鮮の政府機関である対外経済省傘下のKorean International Exhibition Corporationである。国際商品展覧会ではタブレットを取り扱う企業や事業所のブースに若年層の男性を中心として人だかりができており、北朝鮮でタブレットが人気であることが見て取れた。

北朝鮮ではタブレットの販売チャネルも増加しており、街中の百貨店、平壌国際空港(FNJ)の売店、そしてオンライン販売の玉流でもタブレットを買える。玉流はスマートフォン向けアプリとして提供しており、人民奉仕総局が運営する。商品の選択後は朝鮮貿易銀行が発行する電子決済カードのNaraeで支払いを完了し、その後は人民奉仕総局傘下の運輸事業所が配送するため、消費者は商品が届くのを待つだけだ。玉流の利用にはイントラネット接続環境が必要であるが、いつでもどこでもタブレットを購入できるようになった。

北朝鮮では平壌を中心にスマートフォンが急増しているが、それでも2012年から北朝鮮で売られているタブレットは人気が衰えるどころか、ラインナップや販売チャネルまで多様化している。

▼国際商品展覧会の開催会場となる3大革命展示館。
国際商品展覧会の開催会場となる3大革命展示館。

▼タブレットを取り扱う平壌国際空港内の売店。
タブレットを取り扱う平壌国際空港内の売店。

北朝鮮でAchim AC-01-191を購入

筆者は国際商品展覧会でAchim Computer JV Co Ltdが販売するAchim AC-01-191を購入した。定価は90米ドルに設定されているが、中国人民元での支払いを希望したため、600中国人民元で買った。Achim AC-01-191を購入すると、無料でキーボード付きケースをもらえた。

Achim Computer JV Co Ltdは平壌直轄市船橋区域に本社を置く企業で、北朝鮮の政府機関である電子工業省傘下のTaedonggang Computerと中国の熊猫電子集団(Panda Electronics Group)が合弁で設立した。設立当初の社名はAchim-Panda Computer Joint Venture Companyであったが、ブランド名「Achim」のブランド力を高めるために社名を変更した模様である。Achimは朝鮮語で「朝」を意味する「아침」に由来する。

▼Achim AC-01-191の前面と起動画面。
Achim AC-01-191の前面と起動画面。

▼Achim AC-01-191の背面。朝鮮語で아침とロゴが入る。
Achim AC-01-191の背面。朝鮮語で아침とロゴが入る。

▼Achim AC-01-191にキーボード付きケースを装着した状態。
Achim AC-01-191にキーボード付きケースを装着した状態。

主な仕様と同梱品を紹介

Achim AC-01-191の主要な仕様を紹介しよう。

CPUはクアッドコアで、ディスプレイは静電容量方式のタッチパネルに対応した約7.0インチの液晶を搭載し、解像度はWVGA(800×480)である。カメラは背面に約190万画素CMOSイメージセンサ、前面に約30万画素CMOSイメージセンサを搭載しており、カメラ用のフォトライトは非搭載となる。

無線通信には非対応であるため、モバイルネットワーク、Bluetooth、無線LANは利用不可だ。通信機能は有線で利用できる。北朝鮮では大学を含めた一部の教育機関などにイントラネットを利用可能なケーブルを設置しており、変換ケーブルを用いて接続することでイントラネットを使える。

アナログテレビ放送の視聴にも対応する。システムメモリの容量は1GB、内蔵ストレージの容量は8GBである。外部メモリを利用可能で、microSDカードスロットを備える。電池パックは内蔵式である。

OSは米国のGoogleが開発を主導するAndroidを採用し、Androidバージョンは4.4.2 (KitKat)である。Googleの各種サービスは使えず、プリインストールのアプリはほとんどが北朝鮮国内で開発されたものである。

Achimシリーズのタブレットは「教育用タブレット」とうたっており、辞書や教科書など学習で活用できる多くのアプリをプリインストールする。資料作成アプリもプリインストールしている。

ゲームのアプリも充実しており、ギター、ピアノなど音楽系からテトリス、ビリヤード、ボウリングのほか戦闘系やレース系などバリエーションは豊富である。教育用タブレットとうたいながらも学習関連よりゲームのアプリが多く、勉強するつもりがいつの間にかゲームで遊んでいたということもありそうだ。

ナビゲーションキーはディスプレイ上に表示し、横向きでは左からボリュームダウン、アプリ履歴、ホーム、バック、ボリュームアップの5つ、縦向きではアプリ履歴、ホーム、バックの3つを表示する。文字入力システムは朝鮮語、日本語、ロシア語、英語に対応するが、システム言語は朝鮮語のみとなる。なお、日本語の文字入力システムはオムロンソフトウェア製である。

同梱品は本体以外にACアダプタ、2種類の変換ケーブル、技術検査表、電波保証確認書となる。

▼Achim AC-01-191の端末情報。
Achim AC-01-191の端末情報。

▼本体を除いたAchim AC-01-191の同梱品。
本体を除いたAchim AC-01-191の同梱品。

MADE IN D.P.R.Kが大きな特徴

北朝鮮ではタブレットのラインナップが拡充しているため購入候補は多かったが、最終的に筆者はAchim AC-01-191を選択した。Achim AC-01-191を選んだ最大の理由は北朝鮮製であるためだ。北朝鮮の国営メディアはAchimシリーズのタブレットを北朝鮮国内の工場で組み立てるところから検品や箱詰めまでの工程を映像で報じたことがあり、北朝鮮国内の工場で組み立てていることが知られている。なお、各種部品は外国から輸入している。

北朝鮮独自のブランド名を冠した中国製の商品も存在する中で、Achim AC-01-191は紛れもなく北朝鮮国内で組み立てた北朝鮮製であり、それをアピールするためか化粧箱には大きくMADE IN D.P.R.Kと記載している。D.P.R.Kは北朝鮮の正式国名である朝鮮民主主義人民共和国の英字表記であるDemocratic People’s Republic of Koreaの略称で、北朝鮮では一般的に英文でD.P.R.KやDPRKが使われる。

▼化粧箱の右下にはMADE IN D.P.R.Kと記載している。イメージは旧機種が描かれている。
化粧箱の右下にはMADE IN D.P.R.Kと記載している。イメージは旧機種が描かれている。

テレビを視聴可能

Achimシリーズのタブレットにはアナログテレビ放送を視聴できる機種が用意されている。Achim AC-01-191はアナログテレビ放送に対応することも大きな特徴のひとつで、購入動機のひとつでもある。アナログテレビ放送のアンテナはホイップ式アンテナを搭載している。アナログテレビ放送であるため画質は悪いが、平壌では屋内や移動中でも概ね視聴できた。

また、平壌では筆者が持参した地上デジタルテレビ放送に対応するスマートフォンで試験放送波を検出し、北朝鮮では地上デジタルテレビ放送の試験を実施していることが分かった。将来的に北朝鮮で地上デジタルテレビ放送に対応したタブレットが登場する可能性もある。

▼平壌高麗ホテルにおいてAchim AC-01-191でテレビを視聴した。
平壌高麗ホテルにおいてAchim AC-01-191でテレビを視聴した。

▼平壌で地上デジタルテレビ放送の試験放送波を検出した。
平壌で地上デジタルテレビ放送の試験放送波を検出した。

Achim AC-01-191を実際に試す

基本的にプリインストールのアプリやイントラネットのみを利用するため、利用用途は限定されていると言って差し支えない。決して高性能が求められるわけではないが、Achim AC-01-191は安価ゆえに性能が抑えられており、動作速度やタッチパネルの感度に不満を感じることがあった。

また、アナログテレビ放送のホイップ式アンテナは緩く、組み立てが少し雑な印象も受けた。ディスプレイは視野角が狭く、カメラは必要最低限の機能のみで、静止画も動画も高画質で楽しむことは難しい。ただ、実用に耐えないほどではなく、高性能なタブレットを利用した経験がなければAchim AC-01-191でも十分に楽しめると感じた。

タブレットが1台あれば学習、ゲーム、イントラネット、カメラ、テレビなどを利用可能で、たとえ高性能でなくとも生活を豊かにするものとして人気があるのだ。

▼Achim AC-01-191にプリインストールされているアプリの一部。
Achim AC-01-191にプリインストールされているアプリの一部。

パソコンやテレビの製造も手掛けるAchim Computer

北朝鮮でタブレットを販売する企業や事業所が増える中で、Achim Computer JV Co Ltdはタブレットの老舗企業と言える。タブレットが主力商品ではあるが、ノートパソコンやデスクトップパソコン、LED液晶テレビの組み立ても手掛けており、各種商品をAchimブランドで展開する。タブレット以外の商品にも注力し、Achimブランドの商品を拡充することで収益基盤の強化を図る。

Achim Computer JV Co Ltdは宣伝も抜かりなく、北朝鮮の雑誌であるFREIGN TRADEの2016年第1号ではAchim Computer JV Co Ltdの紹介を掲載した。なお、FOREIGN TRADEは北朝鮮のForeign Trade Publishing Houseが四半期ごとに発行する。FOREIGN TRADEではタブレットのみならずパソコンやテレビにも言及しており、積極的にAchimブランドの商品をアピールする姿勢が見て取れる。事業拡大を狙うAchim Computer JV Co Ltdの動向は今後も要注目であり、これから登場する新商品にも期待したいところである。

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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。