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九州大学先端ラーニング・テクノロジー研究室とアドインテは2016年7月26日に、共同で大学キャンパス内の「今の混雑状況」と「これからの混雑予測」を知らせる「K-now(ノウ):Kyushu University Now」を開発リリースした。

「K-now」では,アドインテが開発した「AIBeacon」 というセンサーを利用し、「AIBeacon」 に電波接触した無線機器(スマートフォンやノートパソコン 等)を計数することで、センサー周辺の混雑状況を推定する。また人工知能にて過去の混雑データを活用し、その後の混雑予測も行う。

ユーザーは、スマートフォンやノートパソコンから「K-now」が提供するWebページにアクセスすることで、キャンパス内の食堂やバス停、施設などの混雑状況を知ることができる。ユーザーはWebページを通して現場からの混雑レポートを返すことも可能。今後は、システムが推定している混雑レベルと、ユーザーが感じる混雑レベルのギャップを埋めるためのログ分析を通じ、混雑状況の推定精度を高め、学内の関連プロジェクトと連携して、混雑予測性能を高める工夫を行っていく。

▼K-nowの画面イメージ(参考)
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毎日大学に行っていれば、学生も職員も混雑状況はわかるのでは?

リリースによると、キャンパスで生活をする学生や教職員は、日々、食堂やバス停、施設の混雑に悩まされている。例えば、これから食堂に向かう時やバス停に向かう時に、「現在の混雑状況がわかると便利だ」という声が多く寄せられていた現状を踏まえ(2015年、2016年のアンケートに基づく)九州大学の今の混雑状況を知らせるシステム「K-now」を開発し、サービスを開始したそうだ。

九州大学の学生や職員は毎日大学に行っているのに、混雑状況がわからないのだろうか。私も大学には仕事でよく行くが、混雑している場所と時間はいつも決まっているから、人工知能やセンサーに依拠しなくても、わかる。試験前の図書館、授業期間の午後の授業、夕方の帰宅時間、昼休みの食堂、15時以降のPC室など混雑時間や時期は、毎日大学に行っている学生や職員なら、わざわざこのようなシステムに頼らなくてもわかるのではないだろうか。

例えば、昼休みの食堂はどこの大学でもとんでもなく混雑しているので、授業がない人は昼休み前か午後の授業が開始してから食堂に来ることは学生や職員なら誰でも知っていることだろう。わざわざシステムでチェックしなても、「そりゃそうだろうな、今は昼時だから混雑しているだろうな」という当然の回答しか出てこないのではないだろうか。

毎日大学を利用している学生の方が賢いから、混雑を回避するために例えば「図書館には夕方から夜に行く」とか「PC室は土曜日か早朝に行く」などいろいろな工夫をしている。そして経験的に「学校の施設は土曜日は空いている」など頭でわかっている。

最近では大学内で、学内のWi-Fiを学生は使えるが、学生が多い時はWi-Fiの速度が遅くなることが多いから、そのような時はスマホでのネット接続が遅くなる。学内Wi-Fiを使うのは、ストレスなく高速な接続を楽しみたい時なので、学生はそのような時間帯を回避するような努力も惜しまない。動画視聴をよく利用する学生はあっというまに速度制限になるので、大学に来た時は学内Wi-Fiに必ず接続して動画を楽しむのだ。なので、大学の混雑状況には敏感だ。それとも九州大学では、そのような経験に基づく混雑を予測することがなく、例えば突然、不定期的に食堂やバスが混雑するのだろうか。それならこのシステムも有用だろう。

飲食店やレジャー施設への応用には期待大

また、九州大学とアドインテでは飲食店や商業施設、レジャー施設等、混雑状況をリアルタイムに知りたいというニーズの高い場所でも広く利用できるようサービス提供を進めていく。大学のように毎日足を運んでおり、経験から「今は混んでいるだろうから行くのはやめよう」という勘が働く場所よりも、飲食店やらレジャー施設など普段行かない場所の方が確実にニーズはあるだろう。このようなところでの「現在の混雑状況」と「これからの予測」は、まさに人工知能の出番であろう。

【参照情報】
九州大学、人工知能で大学施設内の混雑状況を予測するシステム「K-now」をリリース

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。