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[2016年第36週]IoTでYahoo!とソニーモバイルが連携、IIJがフルMVNOサービス
2016.09.06
Updated by Naohisa Iwamoto on September 6, 2016, 15:41 pm JST
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2016.09.06
Updated by Naohisa Iwamoto on September 6, 2016, 15:41 pm JST
IoT関連では、ヤフーがIoTプラットフォームの無償提供を発表している。他の事業者との連携による新しい取り組みが期待できる中で、ソニーモバイルコミュニケーションズがヤフーとの連携を進めていることが明らかになった。MVNOでは、インターネットイニシアティブ(IIJ)がNTTドコモとの間で加入者管理機能(HLR/HSS)連携に合意したことを発表。SIMの独自発行やきめ細かいサービスの提供などが可能な「フルMVNO」サービスの提供にメドを付けた。
IoT市場の拡大に向けたアプリ開発が世界でも急務とされるなか、ヤフーは、「Yahoo!天気」や「Yahoo!防災速報」など、40種類以上の人気WebサービスやIoT製品と連携できる事業者向けIoTプラットフォーム「myThings Developers(デベロッパーズ)ベータ版」を無償提供する。
myThingsは1年前から開発が進められており、今回ベータ版の無償公開にふみきった。事業者の間でも採用を検討する動きがあり、一例としてソニーモバイルコミュニケーションズが開発する「Xperia Projector」と連携を進めていることが、ベルリンで開催された国際家電展示会「IFA 2016」で発表された(関連記事:ヤフーが事業者向けIoTプラットフォーム「myThings Developers ベータ版」を提供開始)。
NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、企業向け車両運行管理のIoT Platformサービスのラインアップとして「Vehicle Manager」の提供を開始した。このサービスは、通信機能やGPS機能を内蔵した小型車載器を営業車両に設置し、車両ごとの運行日報や運転傾向分析することで、車両の稼働実績などをアプリケーション上で閲覧・管理できるもの。これらの機能を使うことによって、容易に車両運行状況の管理や安全運転の確保が可能になる。また、交通事故削減による事故処理費用や自動車保険料などの関連コスト削減、エコドライブによる燃料費削減にもつながるとアピールする(報道発表資料:営業車両の運行管理を手軽に、セキュアに実現するIoT Platformサービス「Vehicle Manager」の提供を開始)。
こうしたIoTの広がりを受け、端末の近くでコンピューティング処理を行う「エッジコンピューティング」の使われ方も変化をみせることになりそうだ。
IDC Japanが発表した国内のエッジコンピューティング市場の分析結果によれば、IoT時代にエッジコンピューティングは再び重要性が注目されるという。その利用の方向性としては、クラウドに集約することなく、IoTデバイスに近い場所でアナリティクス処理するためにエッジコンピューティングを利用する「アナリティクス指向」が見られるというものだ(関連記事:IoT時代の「エッジコンピューティング」はアナリティクス指向--IDC Japan)。
モバイル通信事業者に大きな動きがあった。インターネットイニシアティブ(IIJ)は2016年8月29日、NTTドコモに対し、データ通信役務に係る加入者管理機能(HLR/HSS)連携に関する申し込みを完了し、承諾書を受領したことを発表した。
今後サービス基盤およびネットワーク構築・検証等のプロセスを経て、2017年度中に国内初の「フルMVNO」として商用サービス開始を目指す。HLR/HSS連携により、従来は不可能だった独自のSIMカード調達・発行が可能になり、従来のレイヤ2接続によるMVNOと比べ、より柔軟なサービス設計が行えるようになる。これにより、IoT分野で必要とされる組み込み型SIMの提供や課金・開通管理などをコントロールするサービス開発が可能となる(関連記事:IIJがNTTドコモとHLR/HSS連携、2017年度中にフルMVNO商用サービス開始を目指す)。
Windowsスマートフォンに久々の再参入。KDDIは、Windows 10 MobileをOSに採用したスマートフォン「HP Elite x3」を発売した。HP Elite x3は日本HP製で、ディスプレイなどを接続することでパソコンのように利用できる「Continuum」機能の搭載やKDDIのネットワークサービスとの連携などにより、法人需要にアピールする。
KDDIによるHP Elite x3の製品発表に続き、オプティムは同社がKDDIに技術提供しているモバイルデバイス管理「KDDI Smart Mobile Safety Manager」が、Windows 10 Mobileに対応したことをアナウンスした(関連記事:PCのようにも使えるWindows 10 Mobileスマホ「HP Elite x3」が9月5日発売、7万7800円から)。
通信事業者では、NTT東日本のニュースが相次いだ。NTT東日本は、インターネットを経由せずにフレッツとクラウドを接続するサービス「クラウドゲートウェイ」シリーズの提供を開始した。「クラウドゲートウェイ アプリパッケージ」は、フレッツ網とAWSを直接接続することで、フレッツ光の利用者がインターネットを経由せずAmazon Enterprise Cloud に接続する機能とアプリケーションサーバーをパッケージ化し、従量課金制で提供する。NTTコミュニケーションズのECL など、AWS以外のクラウドサービスにも順次対応予定だ(関連記事:NTT東がフレッツ閉域網からパブリッククラウドへセキュアな接続を実現する「クラウドゲートウェイ」シリーズ提供を開始)。
また、NTT東日本はクラウド型ロボットプラットフォームサービス「ロボコネクト」の提供も開始した。ロボットメーカー各社が提供するコミュニケーションロボットを活用し、コミュニケーション機能、カメラ撮影機能、遠隔対話機能などのアプリケーションをクラウド上で提供するサービスで、ユーザー管理機能と付加アプリ利用許諾機能を用いることで、事業者が独自に開発したアプリケーションサービスが利用可能となる。
第一弾の対応ロボットは、ヴィンストンのコミュニケーションロボット「Sota」。身長28センチ・体重800グラムと小型の卓上型ロボットだ(関連記事:NTT東のクラウド型ロボットプラットフォーム、初弾サービスは介護レク支援ロボットを月額1万円以下で提供)。
防災の日に関連したニュースも多かった。NTTドコモは、緊急速報「エリアメール」で各自治体から発令される「災害・避難情報」を、英語・中国語・韓国語の3カ国語に翻訳する機能を開発し、9月中旬から順次「エリアメール」アプリのバージョンアップによって提供する。気象庁が発表する「緊急地震速報」や「津波警報」については、2015年4月以降、英語・中国語・韓国語・スペイン語・ポルトガル語の5カ国語に対応していた。今回は各自治体が発令する「災害・避難情報」も、英語・中国語・韓国語の3カ国語に翻訳する機能を追加し、ドコモの携帯電話を利用する外国人に的確な情報を伝達できるようにする(報道発表資料:緊急速報「エリアメール」で各自治体発令の「災害・避難情報」に翻訳機能を追加)。
豪雨の被害が続く中、NTTドコモが提供する緊急速報「エリアメール」、KDDI、ソフトバンクが提供する「緊急速報メール」が、「洪水情報」の配信を開始した。洪水情報は、指定河川洪水予報の発表を契機として国土交通省が提供するもの。河川の増水や氾濫等に関する洪水の情報については、災害発生時に発表される指定河川洪水予報をもとに、各自治体が発令する「災害・避難情報」として「エリアメール」と「緊急速報メール」で配信されてきた。今回は、流域住民の主体的な避難を促進することを目的に、国土交通省から提供される「洪水情報」が自治体を経由せず配信され、流域住民への情報伝達手段増えることになる(報道発表資料:緊急速報「エリアメール」及び「緊急速報メール」が国土交通省が提供する「洪水情報」に対応)。
遭難者の救助に係留気球を使う試み。ソフトバンクは、総務省北海道総合通信局から「携帯・スマホ等を活用した遭難者の位置特定に関する調査検討の請負」事業を受託したと発表した。雪山など山岳での遭難事故による遭難者の迅速な救助を目的としたもので、係留気球無線中継システムを活用する。受託により、スキー場などの遭難事故があった際に、遭難者が所有する携帯電話やスマートフォンを使って、遭難場所を特定するための技術的な試験、調査を行う。その際の手段として、ソフトバンクが開発した係留気球無線中継システムなどの臨時無線中継システムの利用を検討する(関連記事:係留気球を使った雪山遭難者などの位置特定技術の検討、ソフトバンクが総務省から受託)。
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