日本は治安が良いのでFinTechが盛り上がらない

Why FinTech is not popular in Japan

2016.09.11

Updated by Mayumi Tanimoto on 9月 11, 2016, 10:07 am JST

ここ数年、イギリスだけではなく欧州大陸のテックセクターで最も盛り上がっている分野はFinTechでありますが、日本ではちょっと認知度が高まってきたかなという印象ですね。しかし一般ユーザー向けのサービス浸透度となると、日本はまだまだという気がします。

イギリスに限ってみた場合でも、個人向けP2PローンのZopa、事業向けP2PローンのFundingCircule、外貨両替のRevolut等メジャーなスタートアップは、新聞日曜版や、中年以上が読む新聞のファイナンス欄の常連で、銀行預金や郵便預金、スーパーの両替サービスなんかと料金が比較されるのが当たり前になってます。新しいサービスだから怪しい、じゃなくて、どっちが得なのか、消費者はシビアに見てます。

ネットを使ってないお年寄りは除き、スマホを常用しているような人達にとっては、アプリ1つで両替できたり、お金を貸してもらえるサービスは便利すぎて手放せません。しかも利息が銀行の数倍、手数料はゼロに近かったりします。アカウント作るのもスマホから身分証明書送ってポイなので便利すぎます。

こういうサービスがどんどん出てくる理由の一つは、便利だからというのもあるんですが、イギリスだけではなく欧州や北米は、現金をあまり使わない社会だというのもあると思うんですね。普段から銀行や郵便局のサービスがキャッシュレスなので、FinTechアプリはその延長のような感じ。

日本と欧州と往復していると、日本はほんとに現金社会だなあというのはよく思うことです。飲み会で割り勘にする時に、スマホでお金を送り合ったりしませんし(やってる人もいると思うのですが少ない)、スーパーやコンビニも観察していると現金払いが多い。ATMでも平気で数十万円おろせちゃうのも驚きです。現金で支払うことが多いからたくさん下ろせるようになっている。欧州だと一回に200ユーロとか200ポンドぐらいしか下ろせなかったりします。でも市場や屋台、売店、バス、電車なんかでもクレジットカードやデビッドカード、FinTechアプリで支払えますので、現金なくても困りません。

キャッスレスが進んでいる理由に、お金の動きを透明化してマネーロンダリングや脱税を防止したいというのもありますが、これは規制当局側の理由なので、消費者としてはむしろ避けたい。しかしそれでもキャッシュレスを好む人が増えている。そこでもう一つの理由が重要になります。日本であまり紹介されないですが、欧州は治安が良くないということ。

イギリスだけではなくフランスやスペインは強盗やスリがものすごく多く、これ、一見治安が良さそうな北欧諸国も同じです。私が住んでたイタリアはもっと危ない。世界中からプロの犯罪者が集まってくるので、夏には家の家財を全部持って行かれた(同僚が体験)、車を買って次の日に盗まれた(別の同僚)など当たり前です。だから通勤はバイクか車、歩きにくい靴は履かない、蓋がついたカバンで自衛なんてのが当たり前です。イギリスの場合、家買うときに犯罪統計見るのが当たり前ですし、買う前に弁護士事務所に依頼する調査でもこの辺りの統計取ってくるのが標準パックです。スリや強盗だけじゃなく、スキミング被害も多いです。ですからRFIDブロックする財布やカバンは必須です。

こんな状況なので、元金大量に持って歩いてると危ないんです。これは一般の人だけじゃなく、バスとかタクシー、小規模店舗も同じで、現金扱ってるのを知ってるから襲われてしまうんです。

だからロンドンなんかバス料金を運転手さんに現金支払いできません。オイスターというプリペイドカードかデビッドカードしか受け付けません。サービスの迅速化と簡易化という理由つけがありましたが、おそらく当局の本心は運転手さんの安全の確保のためもあるでしょう。乗客に襲われた運転手に訴訟起こされるよりも、安全確保したほうがコスト的に安いんでしょう。だから運転席には分厚いプラスチックが入っていて、乗客が襲撃できないようになっていますし、監視カメラで車内撮影してます。(それがモニタで見えるように乗客にもアピール)治安の悪いところでバスに乗るとよくわかるんですが、危ないところだとナイフもった人とか、ヤク中の人が乗ってきて、運転席をバンバン叩いて攻撃したりするので怖いです。(何度か遭遇)だからバス運転手をやりたがらない人は多いです。

そういうわけで、日本が今だに現金社会で、FinTechがいまいち盛り上がらないのには、治安が良いという側面もあるわけで、それは実は良いことなんです。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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