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IVRC ブラジル落下旅行

IVRC(国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト)が連れてくる未来

IVRC, International collegiate Virtual Reality Contest, That bring the future!

2016.10.07

Updated by Masakazu Takasu on October 7, 2016, 19:02 pm JST

Wireless Wireの大規模リニューアルに伴い、この連載も終了すると聞いた。今回が最後のコラムになるので、若い人たちによる未来の話をして終わろうと思う。IVRC(国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト)の話だ。

VRとは何かを考え、インパクトのあるように実装する

IVRCは学生たち、ほとんどは大学生たちのコンテストだ。(2012年から高校生などを対象にしたユース部門が新設されている)まだバーチャルリアリティという単語が一般的でなかった、パーソナルコンピュータもインターネットも一般的でなかった1993年から毎年開催されている。

バーチャルリアリティというのは輪郭のハッキリしない言葉で、最近普及し始めたヘッドマウントディスプレイで360度の視野の中に没入できて、その空間の中で何かできることが「いわゆるバーチャルリアリティ」とされているが、過去のIVRC作品をみると、その範囲外のものも多くの有名作品を生んでいる。たとえばこの「自分で自分を抱きしめられるデバイス」だ

▼ネットニュースなどで話題を生んだ電通大の「自分で自分を抱きしめられるデバイス」

▼Sense-Roidの企画書。全文はIVRCのサイトで読める。
Sense-Roidの企画書

ほかにも、「綱渡りの感覚をバーチャルで再現する」(地面に固定されたロープを渡すが、揺れを生成する靴デバイスを履いてHMDをかける)「パラパラマンガを無限に生成する」(曲げセンサを仕込んだ本と、プロジェクションで実現)など、公式サイトの募集要項にある過去の企画書には溢れるようなアイデアと実装方法が掲載されている。いくつかは後年になって遊園地などで実装されているようなアイデアも見られる。

そう、IVRCは企画書(目的と現実的な実装方法が両方記載されている必要がある)で審査され、企画書で選考を通過したものが実際に開発され、審査委員や一般の参加者に体験される予選に望むことになる。

体験が想像でき、現実的な開発手法が記載された企画書で選考され、デモで結果が決まるのは実際の仕事にきわめて近い構造だ。IVRCの審査員はVR関係の研究者だけでなく、アーティストやキュレーター、ゲーム開発者なども含まれている。これも実社会に近い。

アイデアが炸裂したIVRC予選。決勝は10/29-30

今年の9月13-14日、筑波にてIVRCの予選が行われ、僕も見に行くことができた。30組のVR作品が展示されていて、観客の投票で決まるものもあるので、会場は遊園地みたいな楽しさに満ちている。

HTC ViveやOculus DK2および製品版といった、ヘッドトラッキングできるHMDが普及しだした最初のIVRCだけに、それらを使った作品が目立つ。

会場内で目立っていたのは、頻繁に「GO! ブラジル!」「Welcome!」等大声でコールを繰り返していた、「ブラジル落下旅行」 チーム:中南米愛好会 (早稲田大学 基幹理工学部)の作品だ。

▼ブラジル落下旅行
ブラジル落下旅行

この作品は、リオオリンピックの閉会式で安倍首相がマリオに扮して地球を抜けてリオまで急行したように、地球を抜けて裏側まで行く様子を再現している。書類選考時は閉会式の前だったので、マリオ要素は今回追加したものだろう。

マリオ帽をかぶり、HMDをつけて、アルミ製の発射台に載る。「Goブラジル!」のかけ声でこの発射台でアタマを下にして揺らされながら、HMDの中では日本から地球を抜けて裏側のブラジルに向かい、マントルなどの地下構造を抜けていく様子が表示される。アルミの発射台は、メンバーの一人が手で動かす力業だ。

抜けると、台から下ろされると同時に赤い球が渡され、メンバーが「Welcome!」等のかけ声をする。

人が揺らしてるだけあってダイナミックに揺れるし、まわりを取り囲んでかけ声をするのもすごく立体音響感があってお祭りっぽく楽しい。

HMDに触覚を組み合わせるのはここしばらくのIVRCでよく見るケースで、このTHE JUGGLINGM@STER チーム:いや、オタクではないです (慶應義塾大学 理工学部)も、メカニカルな触覚テクノロジーをHMDと組み合わせたものだ。

▼モニタを見ると何をやってるかわかる、バーチャルお手玉

HMDを使った展示はすばらしいが、機能がどうしても似てきて、体験が似てくる部分もある。途中から、HMDを使っていない作品のほうが目にとまるようになってきた。

この光茸は、音の大きさや高さに反応してうごめく光る茸だ。

▼音茸 チーム音茸 (筑波大学 システム情報工学研究科)

なんとも不思議な光景で、むしろ美大の作品のように見える。

さらにこの「りっかーたん」に至っては、真っ暗な穴に手を突っ込むと、中で指が謎の生物「りっかーたん」にペロペロ舐められるという作品で、写真でも動画でも撮影することができない。

▼りっかーたん チーム:りっかーたんにぺろぺろされ隊 (電気通信大学 情報理工学研究科)
りっかーたん チーム:りっかーたんにぺろぺろされ隊 (電気通信大学 情報理工学研究科)

写真は指をペロリとされたときの筆者である。何かの機械が中にあることはわかるが、感覚は舐められるところしかない。エサだという白い粉を指につけて中に入れると、すっかり舐め取られていた。

作り上げ、動かし、フィードバックを得ることの価値

このIVRC予選は2日間、プロジェクトを動かしつづけなければならない。しかも様々な体型の体験者が、はじめて作品を触る。

メイカーフェアなどで作品展示したことがある人ならわかると思うが、これは相当な難事である。今回の予選ではじめて多くの人が触る場所に作品が出るために、想定と違う方向に動いて作品が壊れることは多くあり、初日の審査会の時にはほとんど動いていない作品もあったようだし、僕が見た一般公開日でも機能の一部が動かない作品がいくつかあった。逆に初日の不具合を対処した作品もあった。

10月29-30日の2日間、お台場の日本科学未来館でIVRCの決勝が行われる。予選から絞られた10組+a(ユース部門や国際部門など)が展示される。この1ヶ月半の間に、さらにクオリティを上げた作品が見られるはずだ。

・グループで作る
・実際の人間たちに評価してもらえるものを作る
・反応を得てフィードバックしていく

どれも、未来を作っていく行為に直結すると思う。僕も決勝には行くつもりで、今から楽しみにしている。

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高須 正和(たかす・まさかず)

無駄に元気な、チームラボMake部の発起人。チームラボニコニコ学会βニコニコ技術部DMM.Makeなどで活動をしています。日本のDIYカルチャーを海外に伝える『ニコ技輸出プロジェクト』を行っています。日本と世界のMakerムーブメントをつなげることに関心があり、メイカーズのエコシステムという書籍に活動がまとまっています。ほか連載など:http://ch.nicovideo.jp/tks/blomaga/ar701264