ALSOK綜合警備保障株式会社 商品サービス企画部次長 干場久仁雄氏

ALSOK綜合警備保障株式会社 商品サービス企画部次長 干場久仁雄氏(後編)現場を深く知る技術者がオープンイノベーションを実現する

ヒトとモノを巡る冒険 #004

2016.10.31

Updated by 特集:ヒトとモノを巡る冒険 on 10月 31, 2016, 09:37 am JST Sponsored by ユニアデックス株式会社

「モノ」「ヒト」「サービス」の3つの分野で先進的な取り組みをされている企業様へのインタビューを通し、IoTがもたらす未来とそこまでの道筋を描きだすことに挑戦する本特集『ヒトとモノを巡る冒険』。第4回目は警備やセキュリティサービスの分野で IoT 化の先端をはしるALSOK綜合警備保障株式会社 商品サービス企画部次長/HOME ALSOK営業部担当次長 干場久仁雄氏に、ユニアデックス株式会社 山平哲也が、お話をうかがいました。(構成:WirelessWire News編集部)

ALSOK綜合警備保障株式会社 商品サービス企画部次長 干場久仁雄氏

干場 久仁雄(ほしば・くにお)
沖電気工業、日本ルーセントテクノロジー(現:日本アルカテル・ルーセント)、インターネット総合研究所、ウィルコムにて一貫して各種通信システムの設計開発、製品企画、事業開発、コンサルティングに従事。2010年に綜合警備保障(株)に入社し、ユーザー企業の立場から情報通信技術の利活用を推進中。

AIやディープラーニングがもたらす業務支援の未来像

山平:これまでに伺ったセキュリティサービスの現場で利用されているロボットや監視カメラから定期的に上がってくるデータというのは、サービスの内容に反映されるようになっているんでしょうか、それとも貯めておいて、何かあった時には確認をする為に使われているのでしょうか。

干場:記録としては残っていますが、系統立ててビックデータ分析してAIに反映というところまではまだいってないですね。

山平:我々ユニアデックスの現在の取り組みのなかでは、センサーから得られる画像や音、振動の情報を取り込んで、例えば産業分野だと異常や故障の検知に機械学習を取り入れて実現していきましょう、という内容のコンセプトモデルを、お客さまと一緒に作らせて頂いたりしています。ALSOKさんでの現在の取り組みの状況でいうと、どのような状態ですか。

干場:現在の監視カメラは、ほとんどが録画されているだけで、即応が必要な犯罪に対してアラームを上げる機能が備わっていないんです。監視カメラで「コンピューターヴィジョン」を実現して警備員が見て不審な状況をAIに判断させたい、という事は、世界中のカメラメーカーや警備会社はみんな考えていることです。弊社も「ディープラーニング」が話題となった頃から研究開発に着手しています。

山平:そういう研究開発の過程には、現場の方々のノウハウというのは活かして研究されることになるんですか。

干場:なかなか、どうやって反映するのかが難しいんです。まず学習用のデータにタグ付けする必要がありますが、弊社の場合それはある程度、集中監視センターでできます。次はタグ付きの画像データをディープラーニングで学習させることによって、「監視の眼」がどうやったら育つか、というのを研究する必要があります。

今の機械警備の最新型は、画像センサーで撮った画像が毎日上がってきますから、それに対して今は人が見て、「これは危ない」「これは大丈夫だ」という判定をしているんですね。それが記録として残っていますので、人間が行った判定をそのままコンピューターでできるようにしようと、今、研究に取り組んでいるところです。

山平:なるほど、現場でのノウハウをコンピューター化される取り組みを進めておられるということですね。ちなみに現在現場で活躍されている熟練されている警備の方というのは、「この人怪しいな」というのは見ているだけで分かるものなんですか。

干場:常駐警備の領域になりますが、そういうことは分かるみたいですね。動き方とか目線、あとは体がこわばっているとか、そういうことが人間には分かるんですね。それによって「怪しいな」と目を離さないようにしている。

最近では、人の感情を可視化する画像解析技術が出てきていて、今年の春から国際的なイベント警備で使い始めています。手荷物をX線装置で検査し、金属探知機が反応したら、ハンディ型の金属探知機をさらにあてられるという、空港でやっている保安検査がありますよね。あのような場で、人の顔も同時に感情可視化装置でチェックして、この人は緊張していないか、興奮してないかというのを判定しています。これを精緻化していけば、警備の役に立ってきます。

山平:「感情」のように定量化が難しいものの判定は、誤検知が増えそうですね。この仕組みでスキャンされると、緊張していないはずなのに「あなた、緊張してますね」と言われたりしないのでしょうか。

干場:「緊張してますか」と聞かれても「緊張してます」とは言いませんよね(笑)。こういうものはフィルタリングに使います。100人イベントにいらっしゃっても、全員を細かくはチェックできない。スループットは非常に重要で、リオ五輪では開会式で人が滞留してしまったらしいんですけれども、そういう場で一次フィルタとして使います。10人に1人くらいアラートが上がれば、その方を細かく見れば良いので、警備レベルを落とさずに現場は効率的に動けます。

山平:機械やコンピューターである程度のところまで支援する仕組みを作って、最終的に判断をするのは人間ということですね。

干場:はい。いわゆる「マン・イン・ザ・ループ(制御ループ内に人間も入る形)」は、警備サービスではまだ絶対に必要ですね。

ドローンやコンピューターヴィジョンは早晩実用化される

山平:IoTやロボットや感情の可視化などの分野以外で、技術的革新で注目しているものは他にありますでしょうか。一言添えると、お話をうかがっていくにつれて「セキュリティサービス」という定義が自分の中で揺らぎつつあります(笑)。そこで、ALSOKさんの事業展開の目線において、IoT的なサービスを早い時期から提供されてきた中で、今こういう技術分野の進展を期待している、注目している、というところがあればお伺いしたいです。

干場:「コンピュータービジョン」は、段階的に5年以内には実現できていくでしょうし、AI内蔵カメラはもうハードウェア上はできているので、あとは弊社がいかに良いサービスに育てるかという段階に来ていると思います。今までの、ベテラン警備員のノウハウをいかにAIに移していくかということは、自らやらなければ、逆に当社の立ち位置が無くなっていくと危機感を持っています。

干場 久仁雄/山平 哲也

他で分かりやすいところではドローンですね。道具として面白いだけではなくて、今まで鳥しか飛んでいなかった上空100メートルの空間を、人間が使いこなせるようになったということを意味しています。新しい空間ができるということは、覗かれたり、侵入されたりする空間にもなるので、警備しなきゃいけない対象が増えるということでもあります。去年、首相官邸無人機落下事件も起こりましたし、まさに今、混乱が起きているところだと思うんです。

そこで、弊社がその空間で何をできるかを考えていかなければならない。まずは「ドローンを検知する」センサーを商品の一つに加えています。変なドローンが来たら、検知して、守る。守るといっても、撃ち落とすのは難しいので「みんな逃げろ」と警備員が言う。災害と一緒ですね。

山平:ドローンの存在をまずはリスクとして見ているということですね。一方、今後ドローンをセキュリティサービスの仕組みに使っていくということもあり得るのでしょうか。

干場:いずれは警備に使っていくことも考えますが、まだ墜落のリスクが高いので市街地の上を飛ばすわけにはいかないし、大規模施設、テーマパークの上を飛ばすのも難しい。まずは経験値を積むという意味で、今は「ALSOK空撮サービス」で使っています。メガソーラーなど人がいないところの点検に、ドローンを持って行って空撮する、ということをやって、運用ノウハウを積んでいる段階です。

山平:ドローンの現場における利用について、制度面の整備は進んでいくと思いますが、技術面ではどのくらいで使えるようになると思われていますか。

干場:実用化は早いと思います。去年はみんなであんなに危ないと大騒ぎしていたのに、今年はもう騒いでいないですよね。これだけ注目されているので、成熟化も進んで、5年後ぐらいには普通になってるんじゃないかと思います。物流はもう始まりそうですよね。その次に実用化されるのは、もしかしたら警備かもしれません。東京五輪の前後には普通に飛んでなきゃいけないなと思ってます。

音やにおいのセンサーやデバイスがセキュリティを変える

山平:ドローン以外で、他に何か注目してされているものはありますか?

干場:警備って、実は五感を使ってするものなんですよ。視覚、聴覚だけでなく嗅覚という情報も結構重要で、変なにおい、異臭で分かることがある。ただしその為のセンサーが、昔から必要だと言われているのに、なかなか無いんです。これが出てくると、もう一歩人間に近い警備ができるんですが、誰か作ってくれないかなと思っているんです(笑)。

山平:においのセンサーは難しいですね。介護業界からは、ある病気特有のにおいというのがあるというお話をうかがいますし、製造現場でも、焦げ臭いと機械に不調があるだろうと判断します。「なんとなく人間が感じる違和感みたいな香りって、デジタル化できないですかね」って言われて、我々も探しているんですが、なかなか難しいです。視覚と音は周波数で表現できますけど、においは分子の種類とか、構造とかいうふうになってくるからデジタル化も難しいですし。

ALSOK綜合警備保障株式会社 商品サービス企画部次長 干場久仁雄氏

干場:その辺りが次の発展段階ですね。まずは視覚と聴覚を極める、という研究からですね。実際の警備の現場のアラームが上がった時の状況を見ると、音って決定的な判断ができるんですね。画像だけだと「これは悪い人かな?」と判断ができなかったり、ちゃんといい具合に写ってなかったりするんですけれども、悲鳴が聞こえたり怒号が聞こえたら明らかに何か起こっている状況と分かります。

山平:たしかに悲鳴や怒号というのは情報として決定的ですね。なるほど。少し話題を変えますが、これまでお伺いしたように使える技術が変わっていくことで、モノとヒトの接点が変わっていくんだろうと思ってるんですが、UI、UXという視点では何か気になることはありますか。

干場:私はこの会社に入って5年目なんですけれども、最初に気づいたのは「ホームセキュリティって、ものすごくよく喋る」ということ。音声インターフェイスというのは非常に重要なんですね。「いってらっしゃい」とか「おかえりなさい」とホームセキュリティが喋っているのって、今で言うロボットが喋っているのと同じようなことですから、そのあたりの技術が洗練されて自然言語的な対応ができてくると、会話型の見守りなどが実現できるのでは、という期待はあるんですよね。

山平:今のホームセキュリティの仕組みは、言い方は悪いですけれどちょっと無機質なインターフェイスですよね。ボードにボタンがついているだけですから。あれがもうすこし親しみがわくインターフェイスになるといいですね。

干場:今、セキュリティは「見守り」というところにサービスを拡張しているので、会話によって見守るということに繋がっていくと思います。実際そういうニーズは多いですし、介護ロボットや見守りロボットはPepperを筆頭に沢山トライアンドエラーされていますが、それは弊社のやるべき範疇なのかなという気がしています。

ロボットやAIが人の行動をちゃんと見ていることで、警備の操作を忘れた時には「警備セットしとくね」と言ったり、おばあちゃんがしばらく見えなかったら「おばあちゃんどこいったの?」とか「薬飲んだ?」とサポートできます。そういうことは、セキュリティのサービスの範疇としてやった方が、無理がないと思いますね。急にロボットを家にポンと置かれてもユーザーさんも困ってしまうので、ホームセキュリティという運用の中でやるべきなのかなと思っています。

山平:ホームセキュリティの仕組みの中で、例えば玄関で喋らないとセキュリティをセットできないとか、両手がふさがっているときに音声での設定、解除の方が使いやすいとなると、セキュリティのために喋るということで人の行動が変わっていく可能性がありますね。

干場:今はAmazonが家の中に聴き耳を立てているとか言われてますけど(笑)、こういうことは弊社も研究すべき領域だろうと思っています。家の中で喋り続けるって、別に変なことじゃなくて、人間は普段やっていることです。それを機械がチェックすることで安心安全に繋がるっていうことは、なんとなくわかりますから、変わってきそうですよね。機械に向かって喋るのには、家の中が一番、恥ずかしくないですから(笑)。

山平:たしかに僕も家の中なら音声コマンドを使うかもしれません(笑)。

深く現場を知り、共に考えることでアジャイル開発は成り立つ

山平:数多くの仕組み、サービスを提供されていますが、他社との連携という観点で、オープンイノベーションにはどういうスタンスで取り組まれているのでしょう。また、こういう業界の人達とコラボしてやっていきたいというところはありますか。

干場:これまで基本的には大手メーカーさんにお願いしてシステム構築や機器開発をしてきたんですけど、最近は新しい領域が増えて、それだけではスピード的にキャッチアップできないので、弊社もオープンイノベーションを頑張ってやっています。できるだけ新しいものを取り込むために世界中のベンチャーと話をしたり、シリコンバレーや韓国に行ってみたり。面白いベンチャーを見つけてきて、一緒にデバッグして商品化するというようなこともやっています。

山平:多くの企業の方々とオープンイノベーション的な取り組みをされていく中で、何か気付きや新たな発見はありますか?

干場:できれば、現場の警備員が何を思って働いているか、警備の先のお客さまが、何を価値として弊社のサービスをお使いいただいているか、ということを一緒に考えていただけると、アジャイル開発もやりやすいなと思っています。

何故、今、ベンチャーと一緒にやることが増えているかというと、ベンチャーって領域が狭いので、ものすごく現場のことを深掘りして、よく知っているんです。例えば一緒にやっている「画像クラウド」のベンダーは米国企業ですけれども、「監視カメラは、こうやって使っていて、お前達こういう悩みがあるだろう」と言われると、まさにその通りなんです。「だから、私はこう作ったんだ」と言われた上で「一緒に商品化しようぜ」ということになる。話が早いんですね。

新しいものを作っていく上では、結構弊社のサービスの中身の話をしなければならなくなる。その時に、警備員の研修を体験していただくとか、警備を営業に行けるくらいの知識を持ったSEの方がいると、随分違うと思います。そうすると仕様も書かなくていいので、アジャイル開発みたいなことが本当にできるんだと思うんですよね。

そこと技術を繋ぐところは我々にはできません。ですから、技術を持って、我々のところまで出てきていただけると、非常にありがたい。私も5年前にIT系からこの会社に来たのですが、入る前と後では、やはり随分、見えるものが違います。奥深いロジックと、判断基準と、信念をもって、この業界はやっておりますので、そこはやっぱり重視して欲しいですね。

山平:現場を一緒に見て、現場を深く知って、そこから未来を見据えながら新しい仕組みとかサービスを一緒に作るというところが、我々のようなITサービス企業に一番求められているところになりますね。今日はありがとうございました。

干場 久仁雄/山平 哲也

IoTの実現に向けたユニアデックスの取り組みはこちらをご覧下さい。

【聞き手】山平 哲也
ユニアデックス株式会社 エクセレントサービス創生本部 プロダクト&サービス部 IoTビジネス開発室長
企業向けシステムエンジニアとしてキャリアをスタートし、インターネット普及に伴いIPネットワーキング技術などを担当。2001年に米国シリコンバレーにおける拠点立ち上げ。2007年からICTソリューションのマーケティング企画部門を経て、現在、IoTを中心としたエコシステム構築とビジネス創造を推進している。
山平哲也氏によるインタビュー“あとがき”は、ユニアデックスのオウンドメディア「NexTalk」をご覧ください。

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