WirelessWire News Technology to implement the future

by Category

トランプ イメージ

米トランプ政権誕生がIoT関連分野にもたらす不確実性

2016.11.18

Updated by Hayashi Sakawa on November 18, 2016, 07:19 am JST

旧GigaOM時代には主に通信分野を担当し、現在はフリーランスとしてIoT分野、とくにスマートホーム関連などの話題を追い続けているステイシー・ヒギンボサム(Stacey Higginbotham)というライターがいる。そのヒギンボサムが米国の政権交代によって自分のカバーする分野にどんな影響がありそうかという点について自分の考えをまとめた記事を公開していた。今回はこの記事を手掛かりに、自動運転やスマートシティといった分野に関する注目点などを拾ってみる。

ヒギンボサムは記事の冒頭で、「トランプ自身がテクノロジー(IT)分野に関して何らかの深い考えを持っているようには見えない」「テクノロジーをいまだに社会のおまけ(add-on)とみなしている様子も感じられる」「票集めに役立ちそうだとなればどんな公約でも口にしてきた人間であり、過去の発言を鵜呑みにすることはできない」などと記している。またトランプ政権を動かすことになる具体的な人選などが決まるまでは、予想の立てようもないなどとも述べている。大統領就任前からシリコンバレーと持ちつ持たれつでやってきたバラク・オバマと比べれば、不確実な部分が非常に大きいということだろう。

貿易問題の影響

そう前置きしたうえで、まずIoT関連のハードウェアやチップなどのコストが上昇する可能性にヒギンボサムは言及している。トランプが貿易問題に対してより熱心に見える、そして輸入品にかかる関税の引き上げを選挙中に公言していたというのがその理由。ただし、あくまで可能性があるというだけで可能性の大小などには触れていない。

エネルギー関連

その次に挙げられているのは、温暖化対策にかかわるクリーンエネルギー普及策などで、オバマ政権が後押ししてきた電気自動車に関する販売助成金などの施策は停滞もしくは後退、またスマートサーモスタットを利用したピーク電力対策(電力需要平準化の手段)などにもマイナスの影響がでる可能性があるとしている。現在ではLEDランプなどネットワーク接続する家電製品も増えているが、省電力へのインセンティブが弱まれば、それだけ導入のスピードが低下する可能性も考えられる。

なお、Business Insiderでは電気自動車の購入助成金に関連して、とくにテスラ車の販売に対する影響に触れている。助成金の額が削られてテスラ車の売れ行きにマイナスの影響がでれば、その分自動運転車の普及ペースも遅くなるといった可能性が、どうなるかはわからないという但し書き付きで記されている。

スマートシティ関連

スマートシティ関連では連邦政府の取り組み、たとえば運輸省が進めている「Smart City Challenge」のような施策に対する予算確保がむずかしくなる可能性も挙げられている。ただ、たとえば老朽化した街灯を通信機能付きの新しいLEDランプに取り替えるといった仕事は自治体が主体になって進めているものも多く、エコ関連という看板を下ろせばさほど影響を受けずに済む可能性もあると述べている。また、老朽化した社会インフラ(道路、空港、港湾施設など)のつくりかえをトランプが公約の目玉として掲げている点をふまえて、これがスマートシティ関連の取り組みには追い風になる可能性も指摘している。

ただ、そのための原資について総額1兆ドル、連邦政府負担分だけでも5500億ドルという膨大な金額をどうやって捻出するかなどがまだ不明であり、トランプの公約の実現性を疑問視する声も上がっていると指摘したWSJ記事も見つかる。また前述のBusiness Insiderレポートのなかにも、この件に触れて、トランプの公約した減税策が実施された場合、連邦政府では10年間で総額9兆5000億ドルの税収減が見込まれるとし、その影響からスマートシティ関連の取り組みが停滞すると予想もある。

自動運転車関連

自動運転車関連では、民業への介入に消極的な共和党の従来からの姿勢を踏まえ、連邦政府が規制を手控えるようだと実現推進派にとってはそれだけ仕事がやりやすくなると同時に、連邦政府の指導力が不十分では州や自治体の足並みが揃わず、却って混乱が生じてしまう可能性もあると記している。

暗号化技術に関する問題

そのほか、トランプがiPhoneの暗号化技術をめぐる一件でバックドア追加を求めたFBIの要求を撥ね付けたアップルを攻撃していたことにもヒギンボサムは言及している。トランプが現時点で暗号化技術やユーザープライバシー保護の問題に対してどんな考えを持っているかはわからないなどとしながら、フィットビットやネストといった具体名を挙げて、ユーザーデータを預かる企業がその取り扱い方に大きな変更を迫られる場合もあり得るとしている。また、Amazon EchoやGoogle Homeのような製品の普及が進み始めている現状を考えると、このプライバシーに関する問題が改めて大きな注目を集める可能性も考えられる。

このヒギンボサムの記事に限らず、トランプの大統領当選で、これまでほぼ所与のものとしてきた前提が崩れたことで、IoT分野に限らず「どちらに振れるかわからない」といった見方の記事が目立つ。トランプがワシントンDC内に政治基盤を持たず、むしろ既存勢力を攻撃することで当選したという点も混乱に輪をかけているかもしれない。振れ幅の大きな政権の誕生が決まり、影響を受ける多くの人々にとってはしばらく不安な時期が続くことになりそうだ。

【参照情報】
What does Trump mean for the internet of things? - GigaStacy (Medium)
Here's what a Trump presidency means for the Internet of Things - Business Insider
Donald Trump’s Infrastructure Plan Faces Speed Bumps - WSJ

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

坂和 敏

オンラインニュース編集者。慶應義塾大学文学部卒。大手流通企業で社会人生活をスタート、その後複数のネット系ベンチャーの創業などに関わった後、現在はオンラインニュース編集者。関心の対象は、日本の社会と産業、テクノロジーと経済・社会の変化、メディア(コンテンツ)ビジネス全般。