スーパーマリオランの完成度の高さに驚く。そしてマインクラフト

Super Mario Run makes superior experience.and Minecraft

2016.12.25

Updated by Ryo Shimizu on 12月 25, 2016, 09:38 am JST

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©Nintendo

 任天堂が満を持して発表したスーパーマリオラン。

 正直、筆者もあそんでみるまでは「本当に面白いのか?」という疑問を拭えませんでした。

 しかし実際に遊んでみると、恐ろしくよく出来ています。

 まず、スーパーマリオランの何が凄いのかというと、ゲーム操作がタップしかないこと。長押しもフリックもなし。画面のどこを触っても大丈夫ということです。これはスマートフォンでのゲームデザインにおいて革命的にシンプルな操作系です。

 AAAクラスのゲームで、ここまで操作を割り切ったゲームというのはスーパーマリオランくらいではないでしょうか。

 この手のゲームは、ゲーム業界では昔から「ワンキーゲーム」と呼ばれています。つまり、一つのキーしか使わないゲームのことです。

 ワンキーゲームは、ミニゲームの王道であり、スマホ向けゲームサイト9leap.netにも沢山のワンキーゲームが投稿されています。


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 ワンキーゲームの特徴は遊びやすいこと、シンプルなこと。

 しかし、スーパーマリオランほど凝ったワンキーゲームはちょっと前例がありません。

 マリオはひたすら右へ右へと走り、タップするとジャンプする。基本はそれだけです。
 正面から来る雑魚は自動的に余計しまいますが、雑魚を避けるタイミングでタップすると雑魚を踏み潰すというマリオおなじみの光景が見られます。

 ステージも多彩で、全6ワールドx4ステージが非常にバラエティに富んでおり、遊んでいると確かにスーパーマリオをプレイしているときの快感に近い快感を味わうことが出来ます。レベルデザインも非常に秀逸です。ゲームクリエイターの端くれだった身としてはここまで完成度の高いワンキーゲームを見せられると敗北感しかありません。

 さらに、王国の建設や他のプレイヤーとの時間差対戦などもあって飽きが来ず、長く遊べます。

 その意味で1200円買い切りはかなりお買い得だと筆者は思いました。
 任天堂のAAAタイトルを遊ぶためにはもっと高価なマシンとカートリッジ(3000〜5000円)が必要だったことを考えると革命的に安いと言えます。

 ところが、これが高すぎると非難する人も少なくないらしく、なかなかこの商売の難しさを感じます。

 確かにキャンディクラッシュなどのゲームの場合、完全に無料でも遊ぶことが出来ますが、あの手のステージにランダム性があるゲームはステージを増やしやすいのです。ステージを増やしやすいからプレイヤーはずっと遊ぶことができ、ずっと遊ぶから課金する、という順番です。だいたいネットゲームに課金するまでに述べ50時間くらい遊び続ける必要があると言われます。

 対して、スーパーマリオランは20時間もあればクリアできてしまいます。
 実際そのように作られていて、そのためのレベルデザインになっています。

 これを是とするか非とするかという問題に過ぎないのですが、筆者の立場から言えば、スーパーマリオランを作る労力を考えると1200円はむしろ安いのではないかと思うのですが、Free to Playに慣れきってしまった今の一般消費者からしてみれば、「1200円も払ったのにたった6つのステージが遊べるだけ?」と思ってしまうのかもしれません。

 もうひとつ、スーパーマリオランにはゲームデザイン以外の問題があって、それは「これは果たしてマリオなのか」ということです。

 もしかすると、これがマリオのキャラクターを使っていなければ、それはそれで一線級のゲームとして成立したのかもしれません。
 しかしこれがマリオだと言われると、たしかにちょっと違うかな?と思わなくもないのです。

 スーパーマリオはたしかにマリオのエッセンスを凝縮したゲームと言えます。
 けれども、マリオというゲームのアイデンティティは、決してキャラクターだけにあるわけではありません。

 マリオというゲームが提供する快感、操作性といったものが本来は重要だったはずです。

 つまりBダッシュやしゃがみ、しゃがみジャンプや無限増殖、そしてファイアーフラワーで火を吐いたり、タヌキになったりヨッシーに乗ったりという一連の「遊び」が、マリオというゲームのアイデンティティでした。見えないところにあるブロックとか。

 ところがスーパーマリオランは潔くそうした複雑な操作系を取り払ってしまいました。スーパーマリオの快感ポイントのひとつだった、キノコをとると巨大化してブロックが壊せるようになるだとか、ファイアーフラワーで雑魚を蹴散らすだとか、そういう快感がなくなってしまったのです。

 だからこれを「マリオですよ」と言って提供されると、「違う」という気持ちになってしまうのもマリオというゲームのいちファンの気持ちとしてわかります。

 スーパーマリオランでは、操作性をシンプルにした結果、スーパーマリオというゲームのアイデンティティを喪失してしまっているのです。

 ゲームとしてよく出来ていたとしても、スーパーマリオとして見た時に、期待値をだいぶ下げないとガッカリしてしまうかもしれません。筆者の場合はワンキーゲームと聞いた時点で期待値がかなり下がっていたので、「意外と良く出来てるし面白いじゃん」という視点で見れたのですが、「わーいスーパーマリオだ!」と思って買った人には肩透かしだったかもしれません。

 強いて言えば、タイトルを「スーパーマリオラン」ではなく「マリオラン」くらいまでに抑えておけば、このギャップは発生しなかったかもしれませんが、それだと5000万ダウンロードなんか行かなかったでしょうし、ビジネス的な判断としても微妙なところです。

 ただ任天堂としては、ドル箱的スーパースターであるスーパーマリオを、今の子供達にも触れさせるチャンスが必要ということで敢えてドレスダウンした、シンプルな「スーパーマリオラン」を低価格で提供したつもりだったのかもしれません。作り方が前時代的なので、どうしてもお金のとり方も前時代的にせざるを得ない苦しい事情が見えますが、一般消費者からしてみればそんなことは知ったことではありません。

 でももしかすると、スーパーマリオランに失望するのは昔ながらのマリオに慣れ親しんでいる層だけで、実は今の子供達は初めて触れるスーパーマリオがスーパーマリオランになる可能性も高いですから、そこから任天堂SWITCHの「本物のスーパーマリオ」につなげていくという戦略的配慮の可能性もあります。どうせスーパーマリオランに失望している世代は任天堂SWITCHでスーパーマリオが出たら反射的に買ってしまうに決まってますからね。

 ただ、今の子供が遊びたがるのはマインクラフトです。
 なぜだか知りませんが圧倒的にマインクラフトです。

 マインクラフトには特定のヒーローというのが出てきません。
 いるのは自分だけです。もしかしたら友達もいるかもしれませんが。

 そして世界を開拓して、切り開いていくのです。
 

 もしかすると、我々はとっくの昔に間違っていたのかもしれません。
 スーパーマリオが提供するエンターテインメントと、マインクラフトが提供するエンターテインメントは本質的に全く別のものです。前者がプラモデルだとすれば、後者はレゴブロックです。

 プラモデルのように作り込まれ、マニュアル化され、誰が作ってもある程度は同じ造形になっていくものと、マニュアルはあれどその通りにやる必要がなく自由度の高いレゴブロックの違いです。

 スーパーマリオ的な、作り込まれた世界観に浸ってどっぷり遊ぶ、というゲームの楽しみ方はもしかしてもう廃れつつあるのかもしれません。ビックリマンチョコのような、カードの裏側に描かれた世界観の断片を紡ぎ合わせて一つの大きな物語を想像して楽しむような遊び方のほうが、むしろ特殊な遊びであって、今の遊びはどんどんレゴブロック的な創造的なものへとシフトしてきています。

 むかし、とある玩具メーカーに勤めていた人が言った台詞で印象的なものがありました。

 「子供は親と同じ遊びはしない」というものです。

 にもかからず子供はゲームが大好きです。親が遊んでいるゲームを子供も遊びたがります。
 けれども、子供が夢中になるゲームは、実は我々親世代の子供の頃とは微妙にズレつつあるのかもしれません。

 今の子供は、キン消しもビックリマンも欲しがらないじゃないですか。
 それに相当するものは、ゲームの中のレアキャラを手に入れるだとか、ガチャガチャとか、そういうものに変化しています。

 コレクションというのがリアルではなくサイバーに移行しているのは間違いありません。マインクラフトは、(資源の)コレクションに加えて、それを組み合わせて建物を作るというクラフト要素があります。

 個人的には子どもたちがクラフトに夢中になるのはとてもいい兆候ではないかと思います。
 AIが発達した時代に生きる人類に求められるのはまさしくクラフトのための能力だからです。

 クリエイティブでなければ生き残っていけない。もしかしたら今の子供達は本質的に肌でそういう危機感を感じ取っているのかもしれません。

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清水 亮(しみず・りょう)

1976年新潟県長岡市うまれ。6歳の頃からプログラミングを始め、16歳で3DCGライブラリを開発、以後、リアルタイム3DCG技術者としてのキャリアを歩むが、21歳より米MicrosoftにてDirectXの仕事に携わった後、99年、ドワンゴで携帯電話事業を立上げる。'03年より独立し、現職。'05年独立行政法人IPAより天才プログラマーとして認定される。

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