炭鉱 イメージ

現代の「炭坑のカナリア」はスマホとメッシュネットワークで

2017.01.16

Updated by WirelessWire News編集部 on 1月 16, 2017, 09:51 am JST

地下資源を掘り出すために炭鉱が掘られ、かつては坑夫とも呼ばれた炭鉱で働く人々が坑内で採掘などの作業をするのだが、昔も今も危険の伴う仕事である。メタンガスなどが発生したり、地下水が坑内に溢れたり、落盤や火災、爆発など、災害や事故は世界各国で後を絶たない。

そうした事故や災害で坑内に人々が取り残された場合の救出作業に、安否確認、場所の確認が欠かせない。また、状況を確認するために、ガスの濃度や気温などの計測値が必要になるため、通信手段やセンサーの設置が求められる。実際に、アメリカの鉱山安全保健管理局(MSHA)の規制などで鉱山経営者にメタンガスや一酸化炭素、酸素などの計測が求められており、出水や爆発、有毒ガスの発生などの危険を坑内の作業員に伝えることが義務付けられている。

炭坑内での現行の通信手段は3つに大別されるという。1つは、有線ケーブルを敷設する方法。同軸ケーブルや銅線、光ファイバーなどを引き回すので、平時には確実な通信経路となるが、コストがかさむ。また、落盤や爆発などで線が切れれば通信は途絶する。

2つ目は、大型のループ型アンテナを使い、低周波の信号を土や岩を通じて地上とやりとりする方法。送受可能な情報の量が少なく、せいぜいテキスト情報やセンサーの計測値などを送ることしかできない上に、装置は高額。送受信機を坑内各所に設置することは難しい。

3つ目の無線を使う方法では、コードレス電話やWi-Fiの親機を坑内随所に設置するのだが、結局のところ装置を随所に配置して有線でつなげば1つ目の方法と同じ制約事項がある。また、作業員の位置情報などを追跡するために、通話のための機器とは別に、高額なハンドヘルドの専用機器を個々に持たせたり、監視カメラの映像を使ったりすることもあるそうだ。

全体にどの方法もコストが高く、導入側はどうしても必要最小限に抑えたくなるという。コロラド州立大学工学部のSudeep Pasricha准教授らの研究は、安価なセンサーネットワーク構築とと坑内の作業員の位置情報トラッキングを両立させる方法だ。

坑内の計測は、ZigbeeやBluetoothで通信できる低消費電力で安価なセンサーで行う。その際、メッシュネットワークを構成できるよう配置することで、坑内の通信手段を確立する。作業員の位置トラッキングには市販のスマートフォンを使う。これらとスマートフォンの距離などから作業員の所在地を特定するという。スマートフォンは消費者向け製品であるため、過剰なまでに高機能でありながら価格は低い。

この組み合わせで全体として安価なシステムが構築できる可能性が高い。今後、研究チームはコロラド鉱山大学(https://www.mines.edu/)の研究用炭鉱でのフィールド試験を行う予定。この研究は、アメリカ国立科学財団(NFS)から3年間で75万ドルの研究資金援助を受けている。

【参考情報】
Deep underground, smartphones can save miners’ lives
Underground wireless system may save trapped miners with smart phones, CSU researchers say
Can you hear me now? CSU research could help miners stay safe

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