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在宅勤務成功のコツは何か?(その3)

What makes remote work successful (3)

2017.03.03

Updated by Mayumi Tanimoto on 3月 3, 2017, 07:49 am JST

連載三回目です。前回はセールスフォース・ドットコムにおける在宅勤務の管理方法を中心にうかがいましたが 、今回はEmployee Success(人事部) のVPである石井早苗様に成功のコツ についてうかがいました。

- 導入に関しては日本以外の国では反発はありましたか?労働法の違いなどはどのように解決されているのでしょうか?

アメリカ本社の社風として、まずはトップが社員の働き方の方向 性を決めて、 日本側も同意するという方向ですが、これは他の国でも同じです。基本的に「社員にとって良いことをやりましょう」「社員が仕事をやりやすい環境を提供しましょう」という文化ですから、実現に向けて最大限の努力をします。

国によっては労働慣習や労働法、労働基準法が異なりますので、やはり反論はあります。 例えばフランスは労働法が日本やアメリカと異なりますので、労働時間等に関して解釈が難しいところがありますが、法律で許される範囲でイノベーティブな働き方を実施するようにしています。

-在宅勤務導入に関してもっとも重要なことは何でしょうか?

キーポイントは3つありますが、同時に進めていくことが重要です。

はじめに上層部の意識を変え、このままの働き方、柔軟性のない働き方では 良い社員は来ないという意識を持つことです。日本は少子高齢化が進んでいますので、将来的に良い人材は 奪い合いになります。優秀な人を確保するためには、会社は社員に対しては良いことはなんでもやるべきだと考え方を変える必要があります。

これは企業の戦略に関わることですから、社員の意識改革だけでは不十分で、まずはトップや上層部が変わらないとダメですね。安倍首相がいうから、国がいうから柔軟な働き方をしましょう、では十分ではありません。この会社のためには人が大事なんだ、それには、柔軟な働き方、良い環境が大事です、とトップが考え、必要なことを実行するべきです。

2つめは、テクノロジーへの投資です。固定電話だけではなく Wi-fi、オンラインツール、クラウド、ナレッジ共有ツール、チャットツール、モバイルなど 社員が働く上で一番良い結果を出せるツールの導入は必須です。お金がかかるからと躊躇すると良い結果が出ません。導入を躊躇する会社さんは多いですが、人材獲得の点からビジネスのための投資だと考えるべきではないでしょうか。

3つめは、お互いを信じて支え合う文化の醸成です。お互いを信頼すれば無駄な管理は必要なくなりますし、会社でのプレゼンティズム(物理的に出勤して、仕事していますとアピールする文化)もなくなります。

トップは導入を支持していてテクノロジーも導入したのに、成功しないということがあります。現場で「あの人は仕事してないんじゃないの?」「羨ましい」「ズルい」などといった文化が原因です。それでは気持ちよく在宅勤務できませんし、導入も進みません。前向きな文化を醸成しないと、お互いを細かい運用ルールで縛る様になってしまい、自由度が失われます。

セールスフォース・ドットコムでは、お互いを信頼し、社内外で業務をする際に、コラボレーションやコミュニケーションの効率化のために、Chatter(チャター)を活用したり、社員同士がお互いを知る機会作りとして、食べ物やお酒を楽しめる「 ハッピーアワー」というミニパーティーなどを定期的にオフィスの中で実施しています。また、社員は一人あたり年間56時間のボランアティア休暇を有給でとれることになっており、仕事の一部として認められています。他の部署の人と一緒にボランティア活動することで、部署を超えた交流を築いている社員も多くいます。 結果、お互いを信じ合うオハナ文化を醸成し、大切にしています。

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セールスフォース・ドットコムの事例を三回に分けてご紹介しましたが、保守的な日本の組織からすると、びっくりするような内容だったのではないでしょうか。本社はサンフランシスコの会社ですが、柔軟な働き方の導入に関しても自由さ、柔軟性、社員の自立性の高さが生かされていますね。

日本では在宅勤務を推進する場合に、インフラの導入が最も難しいと議論になることがありますが、この事例からわかるのは、もっとも重要なことは、インフラ面だけではなく「社員を信頼する文化」なのではないでしょうか。

人事部や総務部が数ヶ月、時には数年かけて細かい 運用規定や内規を作成する、在宅勤務の「伺い」を紙で作成してハンコを押して稟議を通す、なんてのは論外です。社員を信用していないからこそ、こういう非効率な管理文化が蔓延してしまいます。

さらに、日本では柔軟な働き方は人材戦略であるということを理解していない企業が多いのも問題でしょう。会社に物理的にいる時間や残業時間で社員を評価するところがまだまだ多いのですが(IT企業でもそういうところがありますね)、良い人材を獲得したいのなら、業績評価の部分から思い切って変える必要があるでしょう。

今までのやり方をしていたら、良い外国人は来ませんし、日本人でも優秀な人はどんどん外に出ていってしまうでしょう。そろそろ発想の転換が必要です。

 

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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