画像はイメージです original image: © chombosan - Fotolia.com
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理化学研究所(理研)は、東芝、日本電気(以下NEC)、富士通と4月1日に革新知能統合研究センター(理研AIP)に連携センターをそれぞれ開設する。理研AIPにおける人工知能分野の先端技術の知見と、各社が保有する顧客基盤に基づく人工知能関連技術の開発経験を融合し、重要な社会課題に対応するための、基盤技術開発から社会実装までの一貫した研究に取り組むことで、社会イノベーションの創出を目指す。
理研AIPは、文部科学省が推進する「人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト」事業の研究開発拠点として2016年4月に設置された組織。次世代人工知能基盤技術の整備に加えて、人工知能技術の普及に伴って生じる倫理的・法的・社会的問題に関する研究や、人材育成も行う。
設置期間は2017年4月から2022年3月までの5年間。各センターの取り組む研究課題の概要は以下の通り。
複雑化する製造工場・社会インフラにおける「革新的生産性を実現する自律学習AI(自ら学ぶAI)」の確立に向けた研究開発。
1)プラント生産性向上
工場や発電所などシステム自動分析・最適化技術により、プラントの自動操業による生産性向上を目指す。
2)知的生産性向上
作業記録やデータからの知識抽出・発見により、ノウハウ継承と生産性向上を目指す。
3)モビリティ自動化・ロボット化
インフラ点検・物流の自動化を目指し多様な環境変化にも堅牢に自律判断・動作する技術を開発。
安全安心な社会の実現に向け、災害・事故・事件などの認識および予兆発見時の意思決定に役立つ基盤技術、複数AI間での円滑な自動交渉を支援する基盤技術の確立。
1)少量の学習データで高精度を実現する学習技術の高度化
ラベルの付いた学習データを多く集められない場合でも適用可能な学習技術を確立し、サーベイランス、防災、インフラ保全などの分野における異常発見などでの活用を可能にする。
2)未知状況での意思決定を支援する学習/AI技術の高度化
非常時の意思決定や会社経営における判断など過去データの十分な蓄積がない場合でも限られた情報から妥当な仮説を提示するための、仮説生成・仮説検証の圧倒的高速化、に関する研究。
3)複数AI間の調整に関わる強化学習の理論的解析
社会インフラや流通システムなどのAIによる自律制御に必要な、AI同士が交渉を行う(自動交渉)プロセスの理論的限界を明らかにするアルゴリズムの研究。
環境の不確実な変化に対しても的確な未来予測にもとづく人のより良い判断を支援する「想定外を想定するAI技術」の実現をテーマとする。連携センターの設置から3年目までを第1フェーズ、4年目から5年目を第2フェーズと位置づける。以下は第1フェーズで推進するプロジェクト。
1)「ロバストな機械学習」:いかなる環境でも的確に未来を予測
少量のデータや不完全なデータからも未来を予測できる機械学習技術、また予測結果の説明能力向上に向けた因果推定や因果推論の新たな原理・技術の開発に取り組む。ものづくり分野やセキュリティ分野で技術実証を行う。
2)「シミュレーション・AI融合」:未知の環境の創出
「京」をはじめとするスーパーコンピューターの経験を活かし、未知の環境やデータ取得が難しい環境のシミュレーションモデル化、AIによるシミュレーションモデルの信頼性向上や推定結果の高精度化をはかる。ものづくり分野やヘルスケア分野などを対象に、AIによって高度化されたシミュレーターの開発を目指す。
3)「大規模知識構造化」:より良い施策の立案
構造化されていない膨大な情報をAIで活用できるよう構造化し、複雑な社会的・経済的課題に対して効果的な施策の立案を可能にする。具体的には、化学・創薬・食品などの業際や、ホワイトカラーの生産性向上および働き方改革に向けて応用することを目指す。
第2フェーズではこれら3つの研究プロジェクトの研究成果を統合した基盤技術の研究開発を進め、「想定外を想定するAI」の実現を目指す。
【報道発表資料】
・「理研AIP-東芝連携センター」、「理研AIP-NEC連携センター」、および「理研AIP-富士通連携センター」を開設
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登録はこちらWirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。