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IoTと忖度の深い関係

IoT and Sontaku

2017.03.31

Updated by Mayumi Tanimoto on 3月 31, 2017, 11:02 am JST

森友学園の件で、日本では「忖度」という言葉が注目を浴びていますが、ここ数日、この件に関して考えていましたが、日本から世界的なソフトウェア企業なり、ネット企業が産まれないのには、「忖度」が蔓延しているからではないでしょうか。

「忖度」とは、すなわち、上司や幹部など、自分よりも目上の人の意向を「読んで」先回りして仕事をするという行動のことです。

別の言い方をすると「空気を読む」になりますし、「おもてなし」ということもできます。

いわれなくてもやる、上司や顧客の言うことを「こうですね」と先んじで解釈して期待以上のものをだす。

日本のお家芸といえばお家芸です。

自分の好みのアウトプットなり製品を、期待以上のレベルで提供される驚き。相手を思いやる気持ちや、かすかな表情を読み取る繊細さがなければ無理です。

しかし、日本のIT業界では「忖度」が大きな足かせになっています。

一番の問題は要件定義が甘いことです。

顧客やユーザー部門はサービス提供側に要件を「読む」ことを期待して丸投げ。

いつも丸投げですから、顧客やユーザー部門は自分の求めることを言語化する能力が身につきません。

サービス提供側は顧客やユーザー部門の求めることを「想像」して大まかな要件を定義しますが、あいまいなので、要員計画や予算計画がはっきりしません。何をやるかわかりませんのでリスク管理も適当になります。基本がはっきりしないのですから、変更ログも曖昧になり、記録管理もずさんだらけです。

そのまま設計や実装に入ってしまい、運用をはじめるので、まともな工数計算などできるわけありません。

付け焼き刃で要員を調整し、多数の無理な変更が生じ、デスマーチの連続になってチームの生産性は低下、要員は離脱、知識の喪失。知識がないので、分かる範囲でごまかしながら改修しスパゲティ化。

細かい部分だけではなく、そもそものシステムの方向性、サービスレベルなど様々なところで顧客やユーザー側との齟齬が生じ、双方がアンハッピーな製品、サービスが生まれていきます。

私が関わっていたプロジェクトでは、日本ではサプライヤー側も、ユーザー側も、こんな感じが多く、官公庁や超有名企業であっても同じでした。

プロジェクト開始前に要件をきっちり詰めようとすることは「失礼なこと」「時間の無駄」と考える人が多いようですし、リスクを提示するのは「不吉なこと」と避ける人も多いです。

英語圏に比べると、プロジェクトチャーター、リクワイヤメント、リスクレビュー、SLA、契約書、いずれもペラペラです。ペナルティも決めませんし、報奨も決めません。

国際プロジェクトの場合、日本側に情報提供を依頼しても、他国に「読む」ことを期待して、ほんの少々のアウトプットしかでてきません。他国側は、日本側はなぜ何もいわないのか、なぜアウトプットがでないのかと不安に思い、プロジェクトは頓挫します。

日本側は、そんなことに時間をかけるより、「読む」のが当たり前だろう、文句をいっていないで早く作業を進めよ、という心構えなので、話し合っても全く前に進みません。

作業が遅延したり、問題が起これば、サービス残業やちょっとした「心使い」でなんとかすれば良いと思っています。しかし他国側は、文書に書いて合意したこと以外はやりませんので、そこでお互いが不信感を抱くようになってしまいます。

私はこれまで様々な組織で国際プロジェクトに関わり、要件定義の作成、ITガバナンス体制の構築、OLAやSLAの策定に関わってきましたが、同じ事の繰り返しを何度も目撃しています。

海外、特に英語圏側は要件をみっちりと詰めるのが当たり前ですし、関係者がすべて合意した上でなければ先に進みません。しかし、日本側はこの前提を無視します。

これはIoTに絡みではもっと深い問題です。IoTの場合、つながるデバイスが増えますし、様々なソリューションが協業するようになるので、これまでよりも多数のプレーヤーが関わるようになります。

様々な関わりがなければ、IoTの真価を発揮できません。そこで重要なのは、業界も社風も異なる他社との調整や合意、技術要件の確認であり、パートナーとしての関係です。

つまり、お互いが水平という個人主義的な文化がIoTの下地です。

個人主義的な世界には上下関係はありません。したがって「忖度」も期待できないことになります。

個人主義的な世界では、自分の意見を言語化し、多数の関係者全てに正しく理解してもらい、合意を取るのが重要です。相手は自分と異なるのが当たり前だが、その関係は水平であるという前提があるからです。

従来の様に、数社の元請けに投げて、下請けに「忖度」を期待すればすんでいたころのモデルとは何もかもが変わろうとしているのです。

IoTにおいて日本が世界をリードするには、このような文化的な側面もよく考える必要があるように思います。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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