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ウイングアーク1st 執行役員 島澤 甲氏

ウイングアーク1st 執行役員 島澤 甲氏(前編):目的と手段が入れ替わりがちなIoT、BIツールで「やりたいこと」を手軽に実現

日本のIoTを変える99人【File.17】

2016.11.08

Updated by 特集:日本のIoTを変える99人 on November 8, 2016, 06:25 am JST

帳票ソリューションの「SVF」、BI(ビジネスインテリジェンス)製品の「Dr.Sum EA」「MotionBoard」などを提供し、企業の情報活用をサポートするウイングアーク1stは、2016年に大きな変化の渦中にある。IoT関連ビジネスの勢いが急加速しているのだ。同社 執行役員 BI技術本部本部長の島澤 甲氏に、BIツールとIoTの間に生まれた強い関係性について訊いた。

ウイングアーク1st 執行役員 島澤 甲氏

島澤 甲(しまざわ・こう)氏
1981年2月 東京生まれ埼玉育ち。SIerとして製造業向けシステム開発に従事。その後、製造業向けパッケージの事業立ち上げなどを経て、2010年 ウイングアークに入社。MotionChart、MotionBoardの企画・開発に関わる。2014年 Dr.Sum EA並びにMotionBoard開発責任者に就任。2016年 ウイングアークのBI事業責任者に就任。現在に至る。

 

ウイングアーク1stでは、「Dr.Sum EA」「MotionBoard」といったBIツールを提供しています。例えば、MotionBoardのユーザー企業は、半分程度が製造業です。BIツールでは、様々なデータベースに対して、直接集計をかけることができます。BIツールは、これまでのデータを集めて、可視化する製品とも言えるでしょう。MotionBoardがリリースされた6年前から、可視化する機能を提供していました。

BIツールにおける、データを集めて可視化してアクションを起こすという工程は、IoTの活用シーンに近いものです。IoTというキーワードが世の中に広がってきた2年ほど前から、様々なニーズが社内に集まってきました。BIでは過去のデータの蓄積を分析することが多いですが、IoTではリアルタイムのデータを収集して分析するケースが多いですよね。データに対する時間軸の考え方には違いがありますが、データを可視化して分析するという部分はBIで培ったノウハウがそのまま活用できるわけです。

IoTのデータを可視化して活用、本質の部分をBIの力で簡単に

IoTのシステムの構成を考えてみましょう。まず吸い上げるデータの元になるモノがあります。そしてネットワークなどを通じて転送し、クラウドやオンプレミスのデータベースに蓄積します。そのデータを可視化して実際の業務や経営に活用するというステップがあります。IoTでは、プレーヤーが様々な領域にいるわけですが、その中で、転送や蓄積のサービスを提供しているプレーヤーは数多く存在しています。一方、活用のステップでサービスを提供するプレーヤーは、転送や蓄積のステップに比べると少ないのが現状です。実際にはプレーヤーが多い少ないというよりも、大企業などの専用開発が多いという印象です。スクラッチで、自社でアプリケーションを作ってしまうのです。

活用の部分をスクラッチで実行すると、コストがかかります。するとトライアンドエラーがしにくくなります。トライアンドエラーができなければ、現実のビジネスへの最適化を進めることが難しくなります。IoTで何を達成するかというよりも、IoTを実践したということに価値を見出すことになってしまいがちです。

IoTは、本来は単なる手段であって、目的ではないはずです。しかし今の日本の状況を見ていると、IoTの目的と手段が入れ替わって、「IoTが目的となっている」ケースが散見されます。他の例で考えてみると、IoTが特殊なことがよくわかります。社内システムを開発するとき、汎用プログラミング言語の「Python」を手段として使うとします。その際に、「Pythonを実現する」といった表現をしたら変ですよね。しかし、同じく手段であるIoTでは、「IoTを実現する」といった表現がまかり通っています。多くの企業がIoTを前面に押し出してマーケティングを頑張っていますから、仕方ない部分はあると思いますが、企業の本来の目的を実現するためにIoTを手段として活用するという当然のことを再確認する必要があるでしょう。

製造業のユーザー企業と多く関わっていく中で、IoTを使った「活用」の部分をBIツールの力を使って簡単にしていくことが求められていると感じました。BIツールの使い勝手と可視化の力を使えば、IoTの活用の部分が大きく前進します。トライアンドエラーが手元のパソコンでできますから、目的に対する最適化のサイクルが作れるわけです。

プロトタイピングを簡単に作成、リアルタイムデータへの対応を進める

ウイングアーク1stは、直接的にIoTに関わっているわけではありません。しかし、ここまでにお話したような経緯で、IoTとBIの接点に対するユーザー企業からの要求に応えられるように、2015年から取り組みを始めました。BIツールでIoTのデータを簡単に可視化できるようにすれば、IoTを目的に対する手段へとできるのではないか。企業でIoTのプロトタイピングが手軽にできるのではないか。そうした考えです。

実際、BIツールのベンダーでIoTとの関連をうたっている企業はあまり多くないと思います。BIは基本的にはデータを溜めて可視化する文化の製品です。例えばDr.Sum EAは、DBなどに蓄積されたデータをいったん取り込んで、高速集計するBIツールです。一方でIoTは、よりリアルタイム性を求めてきます。IoTのソリューションでは、「工場が停止した状況のデータを、翌日に集計して把握します!」と言われても困ってしまいます。今すぐ答えが欲しいケースが多いのです。

とは言え、BIツールがIoTの活用に適している部分も多くあります。それはデータソースに対してつながる力です。MotionBoardでは30種類以上のデータベースに接続できます。RDBはもちろん、Google AnalyticsなどのWebサービスにもつながります。データを引っ張ってきて可視化するのはBIツールとしてはお家芸なのです。それならば、BIツールをIoTに適したものにしてしまおうというのが、ウイングアーク1stの判断でした。

ウイングアーク1st 執行役員 島澤 甲氏

BIツールをリアルタイムに対応させるために、ウイングアーク1stでは3つのパターンを用意しました。1つが「データベース型」で、データベースから直接データを抜いてくる方法です。データベースに変更がかかったら、変更や差分を検知して、すぐにデータをBIツールで可視化してしまいます。2つ目が「API型」で、RESTやMQTTといったIoTで一般的に使われるAPIにBIツールが対応することで、リアルタイムに可視化が可能です。3つ目が最もユニークな「スマホ型」です。スマートフォンはIoTのデバイスとしてとても優秀です。安くて通信機能がありセンサーも画面も付いています。IoTエージェントのアプリを入れてやれば、システムインテグレーションなしですぐにIoTの活用ができます。位置情報や状況の可視化が簡単にできるわけです。

MotionBoardのIoT対応では、これらの3つのパターンをユーザー企業に提供します。IoTのイメージをつけやすくして、具体的なアクションのお手伝いをすることが私たちの2016年の立ち位置であり、存在価値だと考えています。MotionBoardはクラウド環境でも使えますし、契約するだけですぐに利用を開始できます。そこにIoTのデータをポンポン投げてやれば、可視化による思いもかけなかった事実が見えてくることもあります。

IoTを活用する領域ではトライアンドエラーが重要だと感じています。ROI(投資対効果)をユーザーに享受してもらうためには、トライアンドエラーによって最適化していくことが必要です。もちろん、最初から計画を立てて、アプリケーション開発して、きっちり作り上げられる企業ならばそれで構いません。しかし、そうではない企業も多いですし、未知の領域で効果を求めるには、手探りでも身軽に動けることが必要です。ウイングアーク1stは、そうした企業に対してIoTが手段でなく目的となるように、BIツールで培った可視化の力や簡単な操作で、IoTのトライアンドエラーをしやすい環境を提供しています。

ソフトベンダーでありながら自らIoTを実践

ウイングアーク1stはソフトベンダーで、ビジネスとしてハードウエアの提供はしていません。しかし、IoTはハードウエアに関わる話が多いんですよね。私たちが企業姿勢として大事にしていることは、「自分たちが実感できないことを提案するのは避けよう」ということです。IoTをやるならば、自分たちでもIoTを実際に体験しよう、それが私たちの考え方です。

ですから、ソフトベンダーでありながら、オフィスに半田ごてを持ち込んだりして、モノを作り込み、可視化の実践もしています。理論だけ、机上の空論だけで、ユーザーに提案することはしていないのです。

例えば、「Wi-Fiの可視化」があります。パソコンのWi-Fiの電波を受信して、その状況をMotionBoardのデータベースに書き込みます。それだけでもオフィスにどのような電波が飛んでいるかが可視化できます。さらに、パソコンのMACアドレスと紐付けることで、誰がいま在席しているかがわかります。BIツールなので、過去のデータを引き出したり分析したりするのもお手の物です。スマートフォンのWi-Fiのデータを拾い上げて、在席状況を確認することで、残業時間をリアルタイムに把握することもできます。月末になる前に、管理者に対して残業時間が長い人のアラートを上げることもできます。

自分たちがIoTを実践することで、BIツールとIoTを組み合わせたときに、どのようなことができるかを体感できますし、すぐに開発もできます。こうすることで、IoTの可能性が一層見えてくるでしょう。

ウイングアーク1stは、IoT案件の盛り上がりもあり10月の時点ですでに2016年通年の年間予算を達成しました。2016年のIoTの勢いはものすごいものがありますし、この勢いを「IoTを目的」として終わらせるのではなく、IoTを手段として使って企業に新しい価値を生み出すようにしていきたいと考えています。

後編に続く)

構成:岩元直久

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