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「ハイブリッドICT環境最適化」が重点施策に NTT Comの2017年度サービス戦略

2017.04.12

Updated by Asako Itagaki on 4月 12, 2017, 10:16 am JST

NTTコミュニケーションズ(以下NTT Com)が、中長期事業戦略「ビジョン2020」に向けた2017年度のサービス戦略を発表した。事業ビジョン「Transform. Transcend」に向け、今年度はハイブリッド化する顧客ICT環境への最適化を重点に取り組む。

ハイブリッド化が進むICT環境

「エンタープライズITのオンプレミスからクラウドへの移行が進む中、『自社システムをクラウドに移行するのが正解か?』という疑問を感じるお客様が増えている感触がある」説明会の冒頭、同社代表取締役社長 庄司哲也氏は問題提起した。イニシャルコストは安くてもランニングコストがかかり、結局コストダウンが図れていないという理由でクラウドからオンプレミスに戻すことを検討するケース、クラウドでは要件を満たせずDBだけはオンプレミス環境に残さざるを得ないケースなど、オンプレミスとクラウドのハイブリッドを考えていく必要性が顕在化している。

また、クラウドサービスの選択肢の多様化やさまざまなSaaSの登場により、複数のクラウド事業者・SaaS事業者のサービスを組み合わせて運用するケースが増えている。結果としてシステム全体としての複雑性が増しており、セキュリティとマネージドサービスの重要性が高まっている。

“SDx+M”で新サービス

ネットワークも従来のVPN前提から、クラウドへのインターネット接続や、特に海外向けに安価なインターネットVPNを利用したいというニーズが高まっており、セキュリティの確保が課題となっている。

CTOやIT管理者は複数のクラウド、SaaS、ネットワークの組み合わせに対して、セキュリティとコストをマネジメントする必要がある。NTT Comは「こうした課題に対し、最適なセキュリティサービス、マネージドサービスをトータルでお届けして、お客様、IT管理者の悩みの解決をお手伝いしたい」(庄司氏)と、2017年のサービス戦略として「ハイブリッドICT環境への最適化による顧客のデジタルトランスフォーメーションへの貢献」をうたう。重点取り組みとしては「高信頼・高品質なインフラストラクチャ―の追究」「SDx+Mの強化」を挙げた。

前者は、海底ケーブルネットワーク、データセンターを含めグローバルネットワークを一元的に設計提供できる同社の強みを生かす。総延長28万kmの大陸間ケーブルの保守運用のために、主に日本近海で運用するケーブル敷設船「きずな」を3月末に竣工。ケーブル敷設だけでなく災害時の復旧作業まで広範囲に対応できる多目的船として「すばる」と共にグローバルなケーブルネットワークの保守運用を行っていく。

セキュアVPNサービス「Arcstar Universal One」は196か国・地域で提供。18か国で展開するデータセンター「NextCenter」は設備を拡充する。5月にドイツ(ミュンヘン)、6月に米国テキサス(ダラス)、12月には同じく米国バージニア(アッシュバーン)にデータセンター開設を予定しており、サーバールーム総面積は約40万平方kmに達する。企業向けだけでなくOTT向けのクラウドサービス拠点としても利用が増えている。

SDx+Mソリューションとしては、これまでもSDN、SD-LANを提供していたが、その上に「Software Defind Exchange」を提供し、NTT Comのデータセンターと複数のクラウド事業者の環境への接続を一元化する。3層構造のネットワークに対してSDxを取り入れることで柔軟な構成と一元管理を実現する。

信頼性を高めるための新たなサービスとして、増加するDDoS攻撃に対し、マルチベンダーが提供するDDoSサービスと協調してネットワークを守る「マルチDDoSサービス対策オーケストレーター」の提供を計画中だ。

IoTによりますます攻撃の踏み台になるコンピューターデバイス増える中、DDoS対策は日本社会全体にとっての課題となる。実現までにはビジネスモデルやアライアンスの検討などが必要だが、技術的には既に実現可能であるとする。「それぞれのサービスは孤立して(顧客ICT環境の一部を守って)いるが、連携すれば合体ロボのように強力になるはず。内野は内野だけ、外野は外野だけではなく、皆で連携して球場全体を守るというフォーメーション」(庄司氏)と表現した。

もう一つ新たなサービスとして紹介されたのが、複数のCDN(Contents Delivery Network)を最適化して運用することで安定した映像配信を実現する「Software-Defined Multi-CDN Service」である。動画配信サービス事業者が確実な動画配信を実施するために、最近は複数のCDNを利用するケースが多いが、最適化のための手動切り替えオペレーションが負担となっている。このサービスでは複数のCDNの混雑状況を監視し、最適なCDNを選択して自動で配信を振り分ける。グループ企業のひかりTV運用やテレビ局の中継網運用実績のノウハウを生かし、高品質なサービスを提供する。

クラウド連携によるハイブリッドICT対応強化

複数のクラウド事業者との連携により、「ハイブリッドICT」への対応を強化する。現在、AWS、Salesforce、box、Office365、Microsoft Azureとの接続を発表しているが、今後Oracleなど他のクラウドとも接続していく。

3月に発表したMicrosoft Azureとの連携では、NTT ComのEnterprise CloudのオプションとしてMicrosoft Azureを提供する。Azure Site RecoveryとAzure Backupを利用してバックアップ環境をAzureに簡単に構築できるようにする。今後はAzure上のIoTパーツやAIパーツなども提供できるようにしていく。

NTTデータ、インテル、Pivotalとの連携では、いわゆる「モード2のICT」推進に必要なアジャイル開発やDevOpsなどに対応できる人材やソリューションベンダーがいないという悩みに応える。アプリケーションやプラットフォームにノウハウや教育まで含めて、クラウドネイティブソリューションを実現する。

アプリケーションレイヤーでは、社内で開発・運用している「API Gateway」をサードパーティや顧客向けに7月から提供できるよう開発を進める。エンドユーザー向けサービスがNTT ComやパートナーのSaaSとAPIを介して連携する。

IoT×AIによるビジネス変革

2015年に設立されたIoT推進室では、現在8種類のパッケージ/ソリューションを展開している。

この日のプレゼンテーションでは、時系列ディープラーニングを用いた未来予測ソリューションと、コールセンターオペレーターのウェルネスマネジメントの事例が紹介された。

未来予測ソリューションは複数社とPoCを実施中で、2017年中の本格展開を目指す。2016年9月に発表した三井化学との協業による化学プラントの製造過程における製品品質予測(プレスリリース)では、センサーで取得した各種データにもとづき20分後の品質を予測することで、製品の品質向上と安全性の向上を実現したことが紹介された。

コールセンターの事例は、NTT Com社内で現在運用しているもの。オペレーターの装着したウェアラブルデバイスにより取得したバイタルデータにより、オペレーターの緊張状態を測定する。また、会話音声をNTTグループのAI技術「corevo」で分析することで、トラブルにつながりやすい会話を検出する。これらのデータをスーパーバイザーがモニターすることで、トラブルに遭遇して緊張状態が高まっているオペレーターに対して、適切なサポートや要員の交代を促す。これにより、コールセンターサービスの品質を維持し、オペレーターにもストレスが軽減して働きやすい環境を実現する。2017年5月から、新宿のショールームで体験できるとのことだ。

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。