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イギリス政府のAI成長戦略

UK Government report reveals AI strategy

2017.10.26

Updated by Mayumi Tanimoto on October 26, 2017, 10:28 am UTC

イギリス政府が最新のAI戦略に関する報告書を発表しました。

Growing the artificial intelligence industry in the UK
この報告書は、University of Southamptonの Dame Wendy Hall教授と、BenevelentTechのCEOであるJérôme Pesenti氏(元IBMの Watson PlatformのVP)がイギリス政府の依頼で共同で執筆したものです。

以前からAIに関する提言は発表されていたのですが、今回の報告書ではその内容がより具体的になっています。

イギリスはAIに関するやロボットに危険な作業や仕事の自動化を行わせることで、2035年までに国家経済における年の総付加価値(GVA)が2.5%から3.9%に増加するとしています。総付加価値(GVA)とは GDPから財やサービスの税と補助金を引いたものです。

またAI研究力の強化のために推奨される施策は以下18個で、「AI人材育成」「研究の推進と適用」「需要と供給の創出」に注力しています。

AI人材育成
・産業界が資金を提供するAI修士号
・雇用者のニーズを満たすAIのスキルを取得するためのキャリア転換コースに関する市場調査
・イギリスの主要大学において200以上の博士号を提供し世界中から多様な背景を持った候補者を惹き付ける
・単位取得可能なAIの科学技術系修士号(MScs)を社会人の継続教育として提供する
・AIの仕事を行う人の多様化
・国際AI給付型奨学金の提供
研究の推進と適用
・アラン・チューリング研究所は国立のAIとデータ科学の研究所になるべきである
・大学は知的所有権(IP)の移転を標準化すべきである
・AI研究のコンピューティング力は調整され交渉されるべきである

需要と供給の創出
・AI委員会はこのセクターの成長を推進し調整を行うべきである
・AIによる決定とプロセスの説明方法に関する助言
・AIの輸出と国内投資への援助
・産業の発達を推進するためのAI適用への助言
・公共セクターのAI使用への援助プログラム
・公共組織が所有するデータを使用した取り組みへの資金提供

提言はどれも興味深いのですが、今回特に注目すべきだと感じたのは「AIによる決定とプロセスの説明方法に関する助言」です。

提案では、政府の情報コミッショナーオフィスとアラン・チューリング研究所は、透明性と説明責任の向上のために、AIにより実現した決定、手順、サービスを説明するフレームワークを開発すべきだ、としています。これは、他の国の現施策と比較して、かなり踏み込んだものだといえるのではないでしょうか。

AIによるサービスを開発するのも適用するのも民間企業になるわけですが、問題は、ほとんどの場合、そのアルゴリズムやデータの比重などは公開されず。AIによる決定の理由をユーザー側は知ることができません。

イギリス政府は、AIを使用した業務に関して、ファイナンシャルオンブズマンのような仕組みを作ろうとしているのでしょう。

金融業界の杜撰なサービスや悪意のある商品で、消費者が被害を受けることが多いので、イギリスでは意義申し立てをすることができるファイナンシャルオンブズマンが身近ですが(それだけサービスが酷いということです)AIの世界に関してもそういう状況になると予見しているのではないでしょうか。つまりそれだけAIが人の人生や資産を左右する力が強くなる、ということです。

これは以前も取り上げたTwitterやFacebookによるアカウントの一方的な凍結で、ユーザー側には十分な説明が提供されなかった件を考えてみると納得がいく方向性です。

凍結は社内のAIを使用したエンジンが行ったものだといわれても、その背後にあるアルゴリズムやキーワードをユーザーは知ることができないのですから、抗議も何も不可能です。調査を依頼する術もありません。

日本政府においてはAIに関してここまで踏み込んだ施策提言は行われていないわけですが、特に「AIによる決定とプロセスの説明方法に関する助言」に関しては、イギリスのような政府介入型になるのかどうか興味深いところです。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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