WirelessWire News The Technology and Ecosystem of the IoT.

アンドロイド AI イメージ

ブレードランナー2049 AIと人造生命のテーマを今こそえぐる快作

2017.10.28

Updated by Ryo Shimizu on 10月 28, 2017, 14:02 pm JST

たったいま、今週公開された「ブレードランナー2049」を見て来ました。

少し前に「ケトル」のブレードランナー特集にコメントした手前もあり、実際に本作がどんな仕上がりになるか確かめておかなければならない、という気持ちがあったからです。

正直、見るまではあまり期待していなかったのですが、まさかの傑作で驚きました。

本来、こういう独特の雰囲気の作品の続編を作ると言うのは、ものすごく難しいことだと思うわけです。

しかも、別の監督ですからね。

「果たしてうまくいくのか?」という不安を抱きつつあまり期待せずに見に行きました。そもそも、ブレードランナー自体が非常に予言的、かつどことなくゆったりした、どちらかといえばスペクタクルというよりも退屈な映画なわけですから、これがどう転ぶかわからないわけですよ。

果たしてドキドキしながら朝一の映画館に行くと、やはりというかなんというか、客層の広さに驚かされました。僕の隣は白髪のおじいちゃんのひとり客。我がご同輩というか、大先輩なわけですね。あまり映画館では見かけない光景です。

そして映画が始まります。

うん、ゆっくりしてる、そして謎の緊張感、いきなりの展開、「ああ、ブレードランナーだ」という感じです。

街がそんなに発展しすぎてないのもいいです。

全体を見て感じた印象を述べますと、フィルムノワールの傑作であり、なによりこれはAIに関係する仕事をする人なら必ず見ておいた方がいい作品であると思いました。以下、ちょいネタバレを含みます。

一番感心したのは、主人公が付き合っている女の子がAIだということです。

そして主人公自身もレプリカントであることを自覚しています(このことは冒頭5分で明らかになるのであまりネタバレとは言えないかもしれませんが)。

人造人間であるレプリカントがAIと付き合ってるわけです。
すごい。

最近、週末となれば一人で部屋に引きこもってゲームをしたり、女子高生の家庭教師をやるバーチャルリアリティをやったりしている自分と重ねると、「ああ、こんないいものがあったら僕はもう一生幸せだな」と思うわけです。しかも適度にテンプレート的で、そこがすごくリアルなんですよ。ああ欲しい、これ売ってください。100万円くらいで書います。60回払いで!

レプリカントの映画なのに、AIの方がいい、という謎の結論になるわけです。

そして本作のテーマは、ズバリ「人工的に造られた生命」なのです。AIは現実味を帯びてきましたが、人造人間はまだです。人造人間やヒトのクローンを作ることが法律で禁止されてから随分経ちます。だから、人造人間を奴隷として使うということは今現在も行われていません。しかし人の作った法律ですから、今後どうなるかもわからないわけです。

同じようなテーマは先日ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの「わたしを離さないで」でも扱われていますが、こちらは全員が諦めています。

基本的にレプリカントは人造人間であるといっても、人間と同じ生体ロボットなので反乱を起こします。まあ僕からすると「反乱を起こすから問題」というよりも、クローンなどの方法で作った人間を洗脳などの方法によって従属させるほうが楽なんじゃないかと思うんですけどね。

そして、この映画に出てくる人間はどれも人間味がありません。

人間たちはレプリカントをモノのように扱います。そしてレプリカントもまた、レプリカントをモノのように扱います。

実のところ高度なAIを作るよりも人間のクローンを作る方が簡単なのではないかと思います。倫理的な問題は措いておくとしても、羊のクローンが作れるなら人間のクローンも原理的には作れるはずです。代理母が必要になるなどの倫理上の問題が大きすぎてできないだけです。

人間性を否定、というか、そもそもそんなものが初めから認められていないレプリカントであっても、そして作中ではAIであっても、誰か愛する相手を欲し、愛情を注ぐことがある可能性が本作では示されます。

本作のヒロインがAIであるというのも珍しくはないですが、これまで映画に出てきたどのAIよりも本作のヒロイン「ジョイ」は人間らしく、そして同時にまた、AIらしいのです。このバランスで脚本を書けたのは見事としか言いようがありません。

僕は開発者、研究者としてジョイのようなAIをどのようにしたら実装できるかついつい考えてしまいます。

ジョイは、主人の表情や動きを見ながら、彼が望むこと、喜ぶことを学習し、推定し、自動的に相手を愛するようにプログラムされるでしょう。

これを実現するにはシナリオベースの手法と深層学習の手法を組み合わせる必要があるでしょう。

しかし、最終的にはやはり自律学習していろいろな提案をすることがジョイはできていますから、今すぐ作れるAIよりはもう少し高度なものになるでしょう。そうでないと30年後の物語とは言えないですからね。

ともあれ、映画ファンとしてもAIの開発者としても大いに刺激を受ける傑作でした。

 

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

清水 亮(しみず・りょう)

ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長CEO。1976年新潟県長岡市うまれ。6歳の頃からプログラミングを始め、16歳で3DCGライブラリを開発、以後、リアルタイム3DCG技術者としてのキャリアを歩むが、21歳より米MicrosoftにてDirectXの仕事に携わった後、99年、ドワンゴで携帯電話事業を立上げる。'03年より独立し、現職。'05年独立行政法人IPAより天才プログラマーとして認定される。

RELATED TAG