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外資系企業の高報酬の裏

The dark side of the high salary

2017.10.29

Updated by Mayumi Tanimoto on October 29, 2017, 07:42 am JST

日本人SEが外資系ITに大量流出、これでいいのか?

という記事が話題になっていましたが、その中では外資系企業の報酬にも触れています。

30代前半で1200万円とか1400万円というのは本当です。40歳前後で年収1500万円超のITエンジニアも珍しくないと書かれていますが、 希少価値の高いスキルを持った方の場合は年収が2000万円近い人もいます。

外資系の会社がなぜこんな高い報酬を払うかというと、 報酬体系が日本とは違うからです。

必要な時に必要な人を雇用するという体系になっていますから、日本企業に比べると、何十年単位の長期の雇用計画というのはない場合が多いです。

ですから、必要なくなれば 部署ごとレイオフしたり、 場合によっては日本支部を全て撤廃するということもあります。つまり、こういう高い報酬体系は、そういった職を失うリスクを反映したものに過ぎません。特に、ここ最近の変化の激しいIT業界では戦略もどんどん変わりますから、こういう仕組みが必須です。

また、外資系企業の報酬体系というのは、グローバルな人材の市場価値に合わせて設計してあったりすることがありますので、日本ではない先進国の報酬体系に沿っています。もちろん、地域や為替による調整があります。

日本では、ビジネスレベルで英語を操る人というのは多くありませんので、英語+実務スキルで人材としての希少価値が高まります。したがって、報酬が若干高めになるわけです。

しかしそれでも、日本の外資系企業における日本人エンジニアの報酬というのは安めです。日本人が買い叩かれているというのもありますが、日本人が働きすぎてしまう、という理由もあります。

サービスを提供するのは、日本国内の企業やユーザーになりますから、「日本人が期待する品質」で仕事をすることになります。

これはどういうことかというと、他の先進国に比べて高い精度を保ったサービスを提供したり、長時間働く、ということもあるということです。 それを考えた場合、支払われる賃金のレベルからすると、働きすぎ、ということがいえます。 同じレベルの仕事をするのであれば、 北米や北部ヨーロッパに行って働いた方が高い報酬を得られるわけです。

冒頭に紹介した記事ではその次に、外資系企業ではアカウンタビリティー、つまり「説明責任」 があるので、日本の企業に比べると責任がある代わりに自己裁量の範囲が大きいということが書いてあります。

しかしそれは、裏を返せばそれだけ責任が重く、失敗した場合のペナルティもかなり大きいということです。

パフォーマンスの評価は日本企業よりはるかに厳しく、1か月ごとあるいは四半期ごとに細かい査定がありますから、数字の上でパフォーマンスが目標に達していなければ解雇ということもよくあります。飲み会によく出ているとか、情で何とかするというのが通用しない世界です。 自由は責任の裏返しである、ということもよく考えておく必要があります。

日本企業の場合は自己裁量が小さく、様々なことを自分だけで決めるのは難しいのですが、その代わり失敗したりパフォーマンスが芳しくなくても、いきなりクビにすることはあまりありません。わりと尻拭いしてくれる人もいますね。会社によっては父親や母親的な感じの人格者な上司もいたりしますし、努力する過程を評価してくれることもあります。まだまだ会社が擬似家族的なんですよね。(ただ、私は疑似家族的な感じは結構好きだったりします)

擬似家族的な組織には自由はないけれども、安定性があり、居心地がよいともいえます。自己裁量がないことのストレスや長時間労働は安定性との トレードオフにすぎないいのですが、どちらが良いかは個人の好みの問題ですね。ただ、変化の激しいIT業界では日本式のやり方はスピードが追いついていないのは事実でしょう。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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