WirelessWire News The Technology and Ecosystem of the IoT.

by Category

NVIDIAが規約変更によりGeForceのデータセンター利用を制限。大学などの研究活動にも大ブレーキ

First Order rising

2017.12.19

Updated by Ryo Shimizu on December 19, 2017, 16:08 pm UTC

深層学習分野で、NVIDIAの名を知らない者は潜りと言われても仕方がないでしょう。かつて日本の新聞社で、NVIDIAを「謎の半導体メーカー」と呼んで赤っ恥をかいた人がいますが、NVIDIAなくして深層学習の研究はままならないことは間違いありません。

というのも、深層学習に不可欠な積和演算機能に優れた半導体とAPIを提供しているのが、事実上世界にNVIDIA一社しかないからです。

Intelやその他のメーカーも頑張って入るのですが、NVIDIAが持つ多数の知的財産権の前に、後塵を拝しています。

それはそれで、NVIDIAという会社が素晴らしい発明をしたのだから、儲かるのは良いことだとも考えられます。ところが最近、諸手を挙げては喜べない事態が置きています。

NVIDIAはもともと、ゲーム用GPUの開発で有名になった会社です。ゲーム用にはGeForceシリーズ、そしてハイエンドサーバー用にはTeslaシリーズという製品ラインナップを持っています。

ゲーム用のGeForceシリーズとハイエンドサーバー用のTeslaシリーズは、基本的には同じものですが、Teslaシリーズの方がより大規模な計算が可能になっていたり、信頼性が高いという特徴があります。

問題は価格です。性能そのものはほとんど変わらないのに、GeForceシリーズが10万円台であるのに対し、Teslaシリーズは10倍近い価格設定がされています。

常時GPUをぶん回すようなサービスをするのならば、10倍の価格であるTeslaを採用するというのはそれほど悪い考え方ではありません。

しかし、実際には深層学習はまだ研究段階のものが多く、現実的には安価なGeForceでいろいろな大学や企業の研究所が様々な実験を行いたい、というのが現状です。

これまで、商用サービスでGPUを使う場合にはTeslaを使うように、という要請がNVIDIAからなされていました。落とし所としては、確かに商用サービスにつかうなら信頼性の高いTelsaを使うというのは筋が通っています。

しかし数週間前、NVIDIAは予告なしにデバイスドライバの利用規約(EULA;End User License Agreement)を変更しました
その変更点の中でも最大のものは、「GeForceをデータセンターで運用することを禁じる」という条項の追加です。

これで、日本を含む世界中の企業はもちろん、大学など教育機関も全て、安価なGeForceではなく、高価なTeslaを購入しなければ、データセンターでの深層学習の実験をすることが不可能になります。

これはNVIDIAの独占的地位を利用した、明らかな権利の濫用と言えます。

考えてみて下さい。
商用サービスでもない、単なる学生実験や企業内の実験をするのに、なぜ10倍ものコストを払うことを余儀なくされなければならないのでしょう。実際には、ゲーム用として売られているチップとほとんど同じものをデータセンターに置くだけで、価格体系が変わるというのです。極めておかしな話だと思います。

残念ながら、悔しいことに、Intelを含め今NVIDIAに対抗できる勢力は世界のどこにもありません。唯一目に見える対NVIDIAの希望の光だった、PEZYの斎藤さん率いるDeepInsightsも今回の事件でどうなるかわかりません。

スターウォーズ エピソード8を見た直後の筆者には、まるでNVIDIAがファースト・オーダーのように見えます。

そういえばカイロ・レンも黒い服を好みますね。

この措置は、独占的地位を利用して一私企業の利益のみを優先したもので、傍目には極めて邪悪に見えます。そもそもNVIDIAは、深層学習コミュニティに支持されることで過去最高益を達成しました。

しかし、貢献してきた開発者コミュニティにこの仕打ちです。簡単に言えば、これまでのように深層学習の研究を続けたければ、これまでの10倍のお金を払え、ということになります。

もちろん、個人用のGeForceはこれまでと同じように使うことができますが、データセンターの中にマシンを設置する場合は全てTeslaしか認めないということになります。

学内で予算取りをしている先生がいたら、一夜にして目論見が崩れることになります。

また、この条項には「ブロックチェーンを除く」とされており、明らかに深層学習コミュニティ「だけ」を狙い撃ちにしていることも付け加えておきます。

ブロックチェーンに関しては、むしろ競合のAMDの方が効率が良いことが知られており、この領域ではGeForceを使って欲しいのでしょう。

しかし「データセンター」の定義そのものもなかなか曖昧です。たとえば社内にあるサーバールームはデータセンターに入るのか、それともデータセンターに導入せずにオフィスで騒音と熱風を我慢すれば1Uでも使って良いのか、そこら辺もよくわかりません。

筆者が経営するUEIでは、主に深層学習用PCを販売しているので、いまいま直接の影響はありませんが、こんな簡単に後出しジャンケンで横暴にルール変更をしてくるNVIDIAという会社を、今後も信じ続けられるかどうかは微妙だと考えています。

先日、NVIDIAが主催したGPU Technology Conferenceの壇上でこの点について指摘したものの、当然のように会場では黙殺されました。誰もが理不尽を感じていながら、声を上げることが出来ずに居るのではないかと思います。しかしこれは明らかな独占的地位の濫用にあたるのではないかと思います。

そして残念ながら、今、人類で最も進んだ深層学習技術基盤は、いまのところNVIDIAしか持っていないのです。しかし今回の措置は、明らかに人類の健全な進歩を阻害する行為ではないかと感じています。

果たして本当にこれでいいのでしょうか。

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

清水 亮(しみず・りょう)

ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長CEO。1976年新潟県長岡市うまれ。6歳の頃からプログラミングを始め、16歳で3DCGライブラリを開発、以後、リアルタイム3DCG技術者としてのキャリアを歩むが、21歳より米MicrosoftにてDirectXの仕事に携わった後、99年、ドワンゴで携帯電話事業を立上げる。'03年より独立し、現職。'05年独立行政法人IPAより天才プログラマーとして認定される。

RELATED TAG