画像はイメージです original image: © yiucheung - Fotolia.com
中国の「普通」の生活をのぞける中国版インスタ
Chinese Instagram full of ordinal people's life
2018.03.31
Updated by Mayumi Tanimoto on March 31, 2018, 22:53 pm JST
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Chinese Instagram full of ordinal people's life
2018.03.31
Updated by Mayumi Tanimoto on March 31, 2018, 22:53 pm JST
私が最近気になっていることに、ソーシャルメディアには「一般の人の普通の生活」はあまりアップされていない、ということがあります。
Facebookは、自分がいかにリア充かということをマウンティングするための道具であって、BBQやお出かけ、会合の写真をアップする中年が山盛りです。これは、Facebookという道具がそもそも学校の学生年鑑を元にしているものなので、自然と同窓会サイト化してしまいます。
若い人が大好きなInstagramの場合は、キラキラ系の写真をアップすることが重要になっています。アップされる写真のほとんどは 編集されたり思いっきり偽装されたものばかりで、ぐちゃぐちゃの部屋や、メイク前の顔や、認知症の親類や、兄弟喧嘩の写真などがアップされるわけではありません。
Twitterの場合は、そういったサイトに比べるとネタ的なジョークや画像の投稿が多いわけですが、Twitterに集まる人々というのは、一般の人の数倍政治的な事柄に興味のある変わった人や、趣味や嗜好がかなり偏った人で、何よりもネットが大好きなテキストサイト世代です。
つまり要するに、こういったサービスは「ごく普通の人達」の「本当の生活」というものを知るには役に立たないということです。
ネットや画像加工に疎いマイルドヤンキーの実の生活というのは反映されませんし、うらぶれたロードサイドの店や産業廃棄物処理場の写真というのがアップされることもほとんどありません。日本では重要な購買層である高齢者は、書き込みをしませんし写真もアップしません。
これは熟年層や中年層が集うイベントに行くとよくわかることで、例えば私は先日ロンドンでDeep Purpleのコンサートに行ったのですが、高額なグッズが販売されているのにもかかわらず、コンサートの様子やグッズの写真をTwitterやFacebookにアップする人はほとんどいませんでした。Deep Purpleのファンというのは、比較的年齢層が高く購買力のある人達なわけですが、彼らの生活をネットで知ることは難しいということです。
私の実家がある地域は京浜工業地帯の工場が立ち並ぶエリアですが、ショッピングモールの一階には必ずといって良いほどバブル期に流行った「わかりやすい」ブランドショップが立ち並び、10代とか20代前半で結婚して出産する人もけっこういるらしく子沢山で、軽ワゴンはシャコタン仕様で、車内はピンク色やヒョウ柄のファーです。地元の若い人のファッションは「湘南爆走族」や「カメレオン」系で、80年代のヤンキー漫画の世界のままです。
Facebookやインスタには登場しない世界ですが、世の中の「大勢」というのはキラキラ系アカウントでも、タワマンでBBQする投資銀行員でもありません。世の中の経済を支えているのはこういう「普通」の人達です。
「普通」の人達の生活をデジタルな世界で知るにはどうするべきなのでしょうか?
私が最近参考になるなと感じているのは、中国で展開している写真と動画サービスの「快手」です。キラキラ系のインスタと違い、中国庶民の「インスタ映えしない」写真が大量に投稿されおり、中国の庶民やヤンキーの生活の実態が実によく分かるのです。
沿岸部の豊かな生活とは違い、農村の未舗装の道路、埃っぽい街の風景、決してセンスの良くないウェディングドレス等、インスタ映えしないコンテンツが山盛りです。しかしそこには、「普通の人々」の「普通の生活」が溢れています。つまり、中国の「実態」を知りたい投資家やビジネスマン、政治アナリストが大喜びする「生の生活」が存在するわけです。
快手には約4億人のユーザーがいますが、QuestMobileによれば、その73%は最も豊かな都市部以外に在住なのです。
著名ユーザーやセレブの投稿には頼らず、ユーザーの生コンテンツがアルゴリズムのみで推奨される仕組みで、特定ユーザーに報酬を払って他のユーザーを引っ張ってくるわけでもありません。アクセスランキングにも頼りません。インタフェースは恐ろしくシンプルで、スマホの使い方に疎い人でも気軽にコンテンツをアップ可能です。
ソーシャル系サービスの多くは、運用側が「意識の高い都会人」(もしくは都会人を偽装した元田舎人)ということが多いので、複雑な機能を次々に追加したり、折り畳み自転車がおいてあるオーガニックカフェの写真を「人為的」にトップに持ってきたり、キラキラした有名人に対価を払って何か書かせたりしますが、そうやって得たコンテンツにどんな価値があるのかは、再考する必要があるように思います。
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登録はこちらNTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。