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オリンピックが象徴する日本の停滞

Tokyo 2020 represents Japan's stagnation

2021.07.27

Updated by Mayumi Tanimoto on July 27, 2021, 07:00 am JST

東京オリンピックが始まりました。イギリスでは開会式がBBCで放送されました。

冒頭では、日本の伝統的な建築技術は釘や接着剤を使わない、といった文化面にフォーカスした詳しい解説で、日本に対する大変な尊敬が感じられましたが、放送中は無言となる場面が目立ちました。そのショボさに何も言えなかったのでしょう。

ショボい開会式は、まるで日本の衰退を絵に描いたようでした。

年寄りが牛耳る意思決定、コネ採用、バブル期で止まっている古いセンス、レベルの下がった芸術、実に底が浅い多様性の解釈。

年寄りが居座って若い人が活躍できないというのは、まるで今の日本社会そのものですね。

特に、そんな日本を象徴していたのが開会式の音楽の選択です。開会式で使用された曲がなんと「イマジン」「手をとりあって」さらに「ボレロ」です。

バブル崩壊後のザウスあたりで流れていそうな90年代レトロなセンスに脱力です。国内に素晴らしい音楽が大量にあるのにも関わらずです。

音楽であれば、短期間でも企画側で国内の曲を選べそうなものですが、映える曲が思い付かず、見せ方も考えられなかった。

これに関して、IT業界との共通点を感じました。

現在のIT業界では、基盤となる技術もサービスもそのほとんどが英語圏で開発されたもので、もちろん日本にも技術力がある会社があるわけですけれども、世界的のスタンダードになるような技術もサービスも全くありません。

日本は、ITの世界では完全にマイナーな国で、顔認証システムなどの要素技術では高く評価される企業もあるものの、業界全体で見た場合は存在感はほとんどありません。

ウェブ系も同じで、国内のウェブ型サービスもSNSも、そのほとんどが海外のサービスのコピーと焼き直しです。

プロジェクトのフレームワーク、監査手法、サービス運用の手法、これらも皆、海外からの輸入で日本発のものはありません。

自覚している人は多いにもかかわらず、これがいかに危機的なことか議論する事はなく、惰性でビジネスを続けています。

こんな状況になってしまった根源的な原因の一つは日本の教育ですが、そこを改善しようという声もほとんどありません。もう一つは仕事のやり方です。しかし、どちらもここ30年変化がありません。皆、問題であると認識しているにもかかわらずです。

開会式で使われた曲が海外のものばかりであったように、IT業界も輸入したものに乗っかって何とかやっており、自分達で変化を起こそう、作り出そうという気迫も動機もありません。

一方、わが国には古来からの伝統文化があり、それは海外の人には全く真似ができないものです。しかし、今回の開会式ではそういった素晴らしいものがまったく活用されなかった。良いものがあっても、それを上手く見せたり使ったりする知恵がないわけです。

IT業界の場合は、日本古来の素晴らしい伝統文化に該当するものは、優秀な技術者や頭の良い人です。日本の勤勉な技術者や現場の人々は、海外では大変高く評価されています。ただし、仕事のやり方があまりにも非効率だっり、本質を外しているので彼らが活躍できていないのです。

つまり、開会式で伝統文化を上手く見せることができなかったように、彼らが活躍するための仕組みややり方ができていないわけです。

日本人は、自らの強みというものをよく理解しておらず、さらにそれらを活かす仕組み作り、やり方の工夫ができていません。また、やろうという気力すらない。惰性でやれば良いと思い込んでおり、怠惰で変化を実行する勇気もない。

これらが、ここ30年の停滞の原因のように思われます。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。