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欧州ではGDPRは企業の採用にも影響を及ぼす

In Europe, GDPR influence recruitment activities

2018.05.26

Updated by Mayumi Tanimoto on May 26, 2018, 08:38 am JST

前回は、GDPRの「subject access request」(SAR)についてご紹介しましたが、従業員がこのSARと呼ばれる申請を行った場合、雇用者は要求があってから30日以内にメールやFAX、手紙などその従業員に関する個人情報を集めて提示しなければなりません。

非常に面白いのが、会社に雇用されているわけではなく求人情報に応募しただけの人も、面談や審査記録にアクセスができるということです。

例えば、その人がその仕事に採用されなかった場合、一体どういった理由でさえされなかったのか、ということも開示しなければならない可能性があるわけです。

情報開示により、合否決定が、例えばその人の能力ではなく、人種や性別であったことが明らかである場合は差別法に反することになりますから、会社側は訴訟に巻き込まれる可能性が高くなりますし、莫大な賠償金を払わなければならない可能性もあります。

証拠がきちんと残っている紛争であれば、勝てる可能性が高いですから、英国だけでなく欧州では従業員や応募者側が企業を訴えることは珍しいことではありません。

英国の場合は、職場によっては以前からこういったリスクを想定していますので、GDPR施行以前に、採用決定の透明性を重視しています。

例えば大学の場合は、ガバナンスがきちんとしているところの場合、応募者の情報はシステム上で関係者全てが閲覧できるようになっており、どういった場でどのようなこと議論されたか、採用は何を元に決定されたかということが開示されています。

また同じポストに応募した人は、どんな特徴があって、どんなスキルがあったか、実績は何か、性別や年齢、国籍といったことも共有されます。

GDPRによって、要求があった場合はこのような情報が応募者にも公開される様になるわけですので、 実績がない応募者をコネでねじ込んだり、特定国籍の人ばかりに偏るというのも難しくなるわけです。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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