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細谷拓真事務所代表、Yokotter代表 細谷拓真氏

「いまも地域に面白い人がたくさんいるのだ。彼らに語らせ、そしてそれを聴いてあげよう。」─秋田から日本を元気にする要諦 その2~あきた寺子屋から

2018.01.09

Updated by Takeo Inoue on 1月 9, 2018, 14:33 pm JST

先ごろ、秋田産業サポータークラブの主催により「あきた寺子屋」が開催された(会場:スマートニュース本社、協賛:秋田銀行、後援:秋田県、一般社団法人創生する未来など)。今年で6回目を迎えるこのイベントのメインテーマは「いぐね? これからは秋田でおもしぇぐ働く、暮らす」。“秋田には、仕事がなく、給料も安く、ヒトもいない”といったネガティブなパブリックイメージがあるのは否めない。しかし一方では、秋田を熱く変えよういうムーブメントも起きている。「あきた寺子屋」では、そんなムーブメントの中心にいる若手起業家によるユニークな取組みが紹介された。ここでは、その3つの報告から得られる、地方創生成功への要諦を紹介する。

前回からつづく)

続いて登壇したのは、横手市で開業医として地域医療に携わる傍ら、県内の起業や移住、就労などの中心的なサポート役として活躍している細谷拓真氏だ。

▼細谷拓真事務所代表、Yokotter代表 細谷拓真氏
あきた寺子屋 細谷拓真氏

同氏は自らを「医者で異者」と語り、個人事務所をつくったり、Twitterで地域情報を発信するなど、アグレッシブな地域活動を展開している。

同氏は、東北大学医学部を卒業後、盛岡で研修医を務め、仙台市で医師として勤務していた。東日本大震災後、母親を病気で亡くし、実家の医院の副医院として帰郷した。40歳を目途に地元に戻ろうと考えていた同氏だったが、あるとき横手駅前を見ると、車が一台もなく、閑散とした惨状で、強い危機感を覚えた。

「このままでは自分が40歳になる前に、横手は滅んでしまうのではないの? かと本気で心配になった。子供が生まれたこともあるが、“この大地は未来の子供たちからの預かりもの”。子供を育てたいと言われる街にしなければならない」と責任を感じた。

人口減少と高齢化は日本全体の問題であるが、同時に地方都市の問題でもある。横手市の人口は現在9万2000人で、緩やかに減少しており、20年後には7万人になるという予想だ。さらに若い人の減少率も大きい。20代の若年女性は30年後に56%も減少し、わずか3803人になるという試算もあるくらいだ。

同氏は秋田に戻って、2009年にTwitterで街おこしを始めた。それがYokotterだ。翌年にはNPO法人も設立し、B級グルメの「よこまき」を企画してヒットさせたり、毎月一回のペースで「よこいち」など、いろいろなイベントを開催。さらに地域に根差したコミュニティのインターネットテレビ局も活用し、オフラインとオンラインで地域活性の場もできた。

▼Yokotterで企画したB級グルメ「よこまき」。カットした焼きそば麺やキャベツ、ひき肉、福神漬けなどを混ぜたタネを、お好み焼きのように薄く焼き上げ、割りばしに巻いてソースやマヨネーズをかけた料理。
あきた寺子屋 細谷拓真氏

「しかし、まだ何かが足りないと感じた。いまも地域に面白い人がたくさんいるのに、そういった人にスポットが当たっていない。そこで常設の場で、いつもで誰でも未来の話ができるコラーニングスペース&カフェとして“MIRAI YOKOTE”を開業し、さらにいつもと違う誰かと話をすることをコンセプトとしたMIRAI WAYも創業した」(細谷氏)、

これにより、たとえば酒屋とプロデューサーと農家が一緒に事業を行ったりと、多様な人々が自律的に新たな価値を作り始めた。

「男鹿には4番バッターだけをたくさん集めてもダメ。いま地域にいる人に光を当て、そこに心血を注いでいくことが重要だ。高校生を対象にした塾も開いた」(細谷氏)。

その一方で、今年の夏には「ミライをつくる人を増やしたい」という思いを広げるために、東京の下町、荒川区にもMIRAI YOKOTEの姉妹店、コラーニングスペース&シェアハウス「MIRAI TOKYO」をオープンさせた。ここには、大学生などの新しい仲間が集っている。

▼東京都荒川区にあるコラーニングスペース&シェアハウス「MIRAI TOKYO」。をオープン。田端駅から徒歩10分ほど。東京都荒川区東尾久4丁目38-2
あきた寺子屋 細谷拓真氏

現在、同氏が地元に戻った2011年と比べ、景気もだいぶ良くなっている。有効求人倍率は43年2か月ぶりの高水準で1.46倍になった。どこの地方自治体も倍率は1倍以上はある。

「これから世の中はどんどん変わってくる。横手の企業も時給を上げないと人が集まらなず困っている状況だ。やっと労働者優位の時代になり、働き手にとってチャンスが訪れている。誰もが横手に住みたいと思えるような魅力的な街にしていきたい」(細谷氏)。

同氏は、シェアハウスやサテライトオフィスのようなものをどんどんつくりたいそうだ。週休3日制で、東京で本暮らし、地方で仮暮らしをして、時には田舎の趣味の渓流釣りを楽しめるような生活。季節アルバイトや副業をしながら、手取り10万円でもやっていけるような生活。そういうった生活をしていくなかで、やがて地方を本暮らしをしたい人が出てくるかもしれない。

▼細谷氏がイメージする地方を活性化させるサイトのイメージ。ここでポイントになるのは、本暮らしと仮暮らしをつなげる“聴き人”の存在だ。
あきた寺子屋 細谷拓真氏

最後に同氏は「仕事と暮らしがパッケージになるサイトをつくるためには、地元で仕事を見つけてくるヨソモノやワカモノの“聴き人”が必要だ。地元の課題を見つけ、それをいち早く解決することができれば、地域が大学のような役割を果たせるようになるかもしれない。(課題先進国として)外国に解決策を教えられるだろう。私は病を治すだけでなく、地域コミュニティも治していきたいと思っている」と自身の方向性を示した。

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井上 猛雄 (いのうえ・たけお)

東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、株式会社アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにIT、ネットワーク、エンタープライズ、ロボット分野を中心に、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書は「災害とロボット」(オーム社)、「キカイはどこまで人の代わりができるか?」(SBクリエイティブ)などがある。