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Brexitはイギリスのスタートアップに影響がない

Brexit does not shrink UK's start up market

2018.12.25

Updated by Mayumi Tanimoto on December 25, 2018, 13:04 pm JST

Brexit交渉が暗礁に乗り上げ「合意なき離脱」が現実になりそうです。食料不足や交通の混乱などに備えてイギリス政府は軍隊を配備するとまでいっていますが、しかし興味深いのは、これだけ騒がれているBrexitがイギリスのスタートアップ界隈にはそれほど大きな影響がない模様なことです。

今年の中頃までは、EUの移動と就労の自由が廃止されると人材登用に問題が出るとされていたのですが、テック業界の場合、EU国籍の人が非EU国籍者と同じ条件で就労許可取得が必要になったとしても、多くの場合は書類作業が煩雑になり、手数料が若干かかるのみです。

全く必要ない場合に比べると面倒ではありますが、就労が不可能になるわけではありません。就労許可取得の条件も報酬下限以上の給料を出すことが多いので、あまり問題になりません。

次に注目すべきは、本年もイギリスのスタートアップに対する投資は欧州で最大であったことで、63億ポンドの投資を集めました。これは欧州のどこの国よりも大きく、過去最大です。

また評価額が10億ドルを超えるユニコーン企業は、2008年以来イギリスでは60社産まれていますが、これはドイツやフランス、オランダ等その他の欧州大陸の総数を総合を大幅に上回ります。

Brexitという不安定要素があるにもかかわらずここまでの投資が集まる理由は、はやりロンドンやケンブリッジ、オクスフォード中心に、スタートアップのエコシステムが形成されているからです。

欧州だけではなく世界中からテック系の人材が集まり、志や興味が似ている人と出会えるイベントや学術機関、組織が多く、起業仲間やエンジニアを始めとする専門家をみつけるのが簡単ですこの辺は中国の深センと似ています。

起業するにも金融業界が成熟していてスピード感があるので資金調達が容易です。税制や企業の仕組みは恐らく欧州で一番透明度が高く、デジタル化が進んでいます。

起業家だけではなく、個人事業主などフリーランスで働く人にも様々な税控除があったり、確定申告もすべてネットでできるようになっており実に便利です。

さらに書類関係もビジネス自体もすべて英語で行えるのはイギリスだけです。他の国だとどうしても日常生活や書類作業には現地語が必須になります。

地元の文化も、起業や革新的なことをやる挑戦者を歓迎する雰囲気にあふれているのも大きいです。マスコミは好意的ですし、イベントも開催しやすく、とにかく雰囲気が開放的なのです。これは日本には存在しませんし、大陸欧州は起業には好意的ではない所も多いです。欧州においてはイギリスだけがなぜか異様にビジネスフレンドリーで開放的です。

こういう文化面の違いは実は起業においてかなり需要なのですが、一般的な報道を見ているだけだとなかなか理解しにくい部分です。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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