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なぜ欧州大陸のスタートアップがイギリスに来たがるか?

Why start ups in Europe want to come to UK

2018.12.26

Updated by Mayumi Tanimoto on December 26, 2018, 07:19 am UTC

前回の記事ではBrexitにもかかわらず、イギリスのスタートアップに投資が集中している件をご紹介しましたが、その理由はイギリスにはスタートアップを支えるエコシステムがあり、大変ビジネスフレンドリーな文化や仕組みが存在するからです。

なかなかピンとこない方も多いと思うので、イギリスと他の欧州諸国の比較をちょっと紹介したいと思います。

私はイギリスに住み始める前に、4年ほどイタリアの国連専門機関の情報通信官として勤務していましたが、実際に欧州大陸側諸国とイギリス双方に住むと、その違いがよくわかります。

例えば役所における手続きですが、イギリスの場合はそもそも全ての作業が英語で可能です。これは外国人にとっては大変助かります。

また殆どの作業がデジタル化されており、会社設立から運転免許取得、確定申告、役所の補助金の申請など、ほぼ100%がオンラインで完了します。対面で作業しなければならないのは、例えば福祉手当の審査の面接、移民ビザの申請を特別料金を払って対面で希望する場合等です。

運転免許などそもそも対面の受付窓口が全国に数箇所しかなく郵送受付が基本です。確定申告は相談会も市役所や税務署での対面の申請窓口がありません。

ただそれで困るかというわけではなく、オンラインで処理できますし、困ったら電話やチャットで問い合わせればちゃんと回答されますので問題ありません。

ところがイタリアの場合、そもそも役所の事務はイタリア語が相当わからないと処理が不可能に近いですし、英語でできる手続きは殆どありません。法令はすべてイタリア語で読む必要があります。知り合いがいなければ窓口でたらい回しですし、オンライン化も不十分です。役所は書類をなくすことも多いです。とにかく不透明で非効率なのです。

これはイタリアだけではなく、フランスやスペイン、ギリシャも似ている所があります。

東欧諸国の官僚主義や英語不対応は、バルト三国のごく一部を除いてもっと悲惨です。

その上、イギリスには存在しない複雑な規制があったりします。

起業する場合、お金の管理も重要なわけですが、例えば銀行口座の開設はイギリスは恐ろしく簡単で、オンラインで住む銀行が多数あります。最近流行りのFinTech系チャレンジャーバンクも法人口座対応で、開設も管理も容易です。ほとんどがデジタル処理なので、間違いや遅延などもありません。

ところがイタリアの場合は、口座開設には銀行内に知り合いがいないとスムーズに進まなかったりしますし、申込みもイタリア語が理解できないと難しく、対面が基本の銀行が少なくありません。オンラインでの口座管理もかなり不便です。チャレンジャーバンクもイギリスほど盛んではありません。

銀行の事務もいい加減で、口座からお金が消えたりします。ATMはよく故障します。また銀行の担当者がいい加減で、アポをとっても無視してバカンスに行ってしまったりします。国際送金さえ間違いだらけだったりします。間違ってもまず謝罪はありません。

フランスやドイツ、スペインやギリシャもイタリアほどではありませんが、イギリスに比べると相当不便ですし、個人事業主や起業した人が、銀行の担当者とのやり取りに相当苦労します。書類やオンラインバンキングは現地語が基本ですし、英語対応していると言っていても、翻訳されているのがごくごく一部だったりすることがよくあります。オランダやベルギー、オーストリアは若干マシですが、それでもかなり不便です。

起業希望者やエンジニアは、こんな状況にうんざりしてしてどんどんイギリスにやってくるので、人口が増えてしまうわけです。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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