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小学生が本格的なプログラミングを学ぶ際の障壁を取り除くためのキーボード

2019.02.13

Updated by Ryo Shimizu on February 13, 2019, 11:25 am UTC

筆者の主催する「秋葉原プログラミング教室」には、小学校低学年から高校生、社会人まで、さまざまな人たちがプログラミングを学びに来ています。

しかし、世の中にはどうしてもBASICやScratchでしか小学生にプログラミングを教えられない、という人や教室が居ます。

筆者自身、子供の頃はBASICから入門しました。しかしそれは、BASIC以外に選択肢がなかったからです。
BASICは言語としての設計が古く、80年代に世界中で流行したあと、現在、実用的にはほとんど使われていない言語です。
80年代のマイコンブームを経験した今の40代、50代の世代は、まさしく今の小学生、中学生の親世代に重なるので、どうしても子供がプログラミングをするというとBASICから始めるというイメージがあるのかもしれません。

筆者が色濃く覚えているのは、筆者が小学生の頃、クラスの男子の大半が一度はBASICに挑戦しました。その結果、みんなプログラミングが嫌いになり、最終的には友達のいない変わり者(つまり、筆者自身のことですが)だけが生き残る、という結果につながっています。そう言われて、心当たりのあるMSX世代のお父さんも少なくないのではないでしょうか。

筆者に言わせれば、BASICは壮大な実験であり、そして失敗が確定した実験なのです。
BASICの言語仕様は、プログラミングの楽しさを感じさせる前に子供に苦痛を感じさせるため、やりたいことがうまく表現できず、匙を投げてしまうのです。
BASICを子供にやらせると、9割がたの子供はプログラミングを嫌いになることはすでに何度も確認されている現象です。これはScratchに関しても同様です。
筆者が子供の頃は、BASICを極めればどんな複雑なプログラムも書けると信じていました。しかしそれはあまりにも非現実的な願いだったと言えます。
いわば、BASICやScratchは必ず行き止まりにたどり着く迷路です。遠くにお城が見えているのに、決して近づくことのできない迷路です。

たとえばサッカー選手になりたいという子供がいたときに、手始めにスマホのサッカーゲームをやらせる親がいるでしょうか。サッカーゲームをいくら極めてもサッカーの技能は上がりません。一人でボールを蹴るほうがずっと役に立ちます。プログラミングも全く同じで、子供の頃から大人と同じ道具(プログラミング言語)で始めることが大事なのです。かつてBASICが流行っていたのは、大人もBASICを使っていたからです。今と昔では前提条件が違います。

我々が真にIT対応人材を育成したければ、BASICやScratchで立ち止まってはいけないのです。どうすればスムーズに、子供を子供扱いしないで、広大な叡智の世界へ旅立たせるか、それを真剣に考えることが最も重要です。

年末、とある教育評論家の方と話をしていて、絶望的な気分になりました。なぜ、小学校でのプログラミング教育において、BASICかScratchしか選択肢に登らないかと言えば、小学校ではアルファベットの小文字を教えていないため、アルファベットの大文字しか使わないBASICか、アルファベットを使わないScratchしか選択肢にないというのです。

いま、普通の日本人が使っているキーボードのキーの数は109個です。
シフトキーと組み合わせたり、かな入力したりすればもっとバリエーションは増えます。

プログラミングを実際に教えている現場にいると、子供に限らず、もうひとつ大きな問題があります。それは記号の読み方がわからない、ということです。
「`」という記号の読み方を知ってる人はプログラマーでも少数派でしょう。これは「バッククォート」という記号です。「'(シングルクォート)」や「"(ダブルクォート)」とも違う別の記号です。日本のキーボードでは、アットマークのキーをシフトキーと一緒に押すとこの記号が出て来ます。

人間は無言の時でも頭の中で文字を音読しています。だから英語の勉強は、先生の後に続いて発音することから始まるのです。

そうした問題を解決する最も安価な手段は、キーボードを変えてしまうことです。
そこで筆者らはこのようなシールを作りました(実願2019-000453)。

このシールは、三つの教育効果があります。ひとつは、シールを一枚ずつ音読しながら確認して貼っていくことで、「どこにどのキーがあるのか」ということを確認できます。
次に、アルファベットの大文字と小文字、そして読み方がひとつのシールに書かれています。こうなっていることで、初めて子供はプログラミングを「会話」に使うことができます。そしてもちろん、記号の読み方と、シフトキーの使い方を学ぶことができます。

そもそもシフトキーはタイプライターの時代に、押し下げるとキーボードがまるごと上に移動(シフト)するキーでした。だからシフトキーの表記は上向きの矢印なのです。しかしタイプライターが主流だった時代はもはや半世紀も前です。シフトキーの意味を子供が覚えるのに、タイプライターを思い出せというのは無茶な話です。ですから、この配列では、シフトキーはキーの左上に白地に黒文字で書かれた文字や記号を入力するもの、という意味に変化させています。

また、一部のプログラマー文化圏では括弧の始まりを「カッコ」、括弧の終わりを「コッカ」と呼びます。これは、括弧の対応が死活問題であるプログラムを音読する際、括弧の始まりと終わりを明確化するためです。

子供が英語に苦手意識を持つのは、普段から英語と触れる機会がありながら、中学までちゃんと読み方を習わないから、というのも一因かもしれません。
国際社会で活躍できる子供を育てるためにも、できるだけ無駄な障壁は排除したいと思います。

秋葉原プログラミング教室では、このキーボードシールを希望する方に無償でお分けしています(Mac用 地方発送もやってます)。
ご興味のある方はぜひ教室までお問い合わせください。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。

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