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イギリス政府から逃げ出す官僚達

UK key people leaving Brexit

2019.06.29

Updated by Mayumi Tanimoto on June 29, 2019, 12:27 pm JST

イギリスでは次の首相の選出が盛り上がってきましたが、ここに来て目立ってきたのが、Brexit交渉で中心になってきた幹部クラスの人々の逃亡です。

ここ最近で最も注目されたのが、欧州連合離脱省で政策とデリバリーの責任者であるTom Shinner氏の退職です。交渉のさなかに官僚のポストを捨てて民間に転職というあまり例のない事態です。33歳という若手ながら、教育省での実績を買われて欧州連合離脱省に着任し、元欧州連合離脱大臣のDavid Davis氏はShinner氏が交通事故にでもあったらBrexitは不可能とまで言っていたほどです。

6月の頭には、ここ2年の間、英国の歳入税関庁(HMRC)の国境デリバリグループ(Border Delivery Group)の責任者であった Karen Wheeler氏も、引退という名目でポストを離脱しています。このグループは、北アイルランドとフランスとの通関や警察力、入国管理等をスムーズに解決することが目的なわけですが、「スムーズ」な解決に対してさじを投げた形なのかも知れません。

さらに、キーパーソンの離脱が目立つのはイギリス側だけではありません。アイルランドからは外務省の副事務次官でBrexitの交渉にあたってきたRory Montgomeryが引退の名目で離職、EU-UKユニットのヘッドだったRonan Gargan氏がハンガリー大使になるために離職しています。

The Institute for GovernmentのBrexit programme directorであるJoe Owen氏は、約1万6千人あまりのイギリス官僚は変化を望んでいるという遠回しな表現でこの状況を説明していますが、キーパーソンが逃げてしまうBrexit交渉は先行きが危ない、ということでしょう。

官僚のモチベーションもどうもかなり下がっているらしく、イギリス政府は昨年末に、Brexitに関係する官僚一人当たり25万円ほどのボーナスを支払ったようですが、どうもその程度のボーナスではモチベーションのアップと離職を防ぐことは難しいようです。

幹部クラスの人々がどんどん逃げ出す様を見ていると、もうすぐ倒産しそうなベンチャーにそっくりな感じがいたします。 泥舟から一刻も早く逃げ出すべきだという意図がひしひしと感じられますね。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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