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起業家と技術者を尊ぶイギリス

UK appreciates entrepreneurs and engineers

2019.07.24

Updated by Mayumi Tanimoto on July 24, 2019, 07:48 am UTC

前回はチューリングが50ポンド紙幣になった話を取り上げましたが、ちなみに2011年に発行された現行の50ポンド紙幣も表は女王陛下、裏はマシュー・ボールトンとジェームズ・ワットです。

この人物選びに、イギリスらしさが感じられて面白いと思います。

ワットは偉人伝などでおなじみの方も多いと思いますが、ボールトンは起業家で、蒸気機関の父であるワットと共に蒸気機関を全国各地に取り付け、造幣局に最新の印刷機を導入したという、いまでいうテクノロジー系のヒップスターです。

政府に対して積極的なロビー活動を行い蒸気機関を普及させ、業界の有名人を取りまとめて異業種交流会も主催していました。

ブラック労働が当たり前だった19世紀に、職工の就労環境と安全と保証するために、従業員には労災保険の基礎になった保険を用意するなど、労使関係でも画期的なアイディアがあった人物です。

ワットやボールトンのような技術者や起業家が高額紙幣の顔に選ばれる、というのは、イギリスの本質的なところを表していて面白い気がします。

日本的感覚であれば、学者や文学者、歴史的人物を選ぶので、シェークスピアやジェーン・オースティンになりそうな気がしますが、そうはならず、画期的な技術を発明した人と、それを広めた人が選ばれるわけです。

技術や奇想天外なもの、経済発展をよしとするのがイギリスの本質的な哲学なのだなというのがわかります。

ハイパーテクストや奇想天外なSF、ロックやパンクがイギリス生まれというのが納得ですね。

こういう精神が根本にあるので、国立病院の患者データをAIの発展にどんどん使ってみたり、FinTechでも巨額の創業者利益を国が保証するような仕組みがあったりします。

日本だと考えられない大胆さと新規性があります。欧州大陸の国々の大半もこういう思い切ったことはやりません。

日本は技術立国とはいっていても、技術者の報酬はかなり低く、社会的にもまだまだ立場は弱いので、根本的な部分では彼らを尊重する精神がないのでしょう。

ちなみに現行の50ポンド紙幣というのは、日本円では7000円程度で、日常生活ではほとんど見かけることがありません。店舗でも受け取ってもらえないことが多く、預金のために銀行に持ち込むと資金の出処を聞かれることもあります。

その理由は高額紙幣は偽札が多く、さらに、高額紙幣による取引を好むのは麻薬取引関係者や、脱税を好む業者などが多いからです。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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